【渡邊凌磨】「本田圭佑のメンタル」を超えるか、弱いメンタルを打破した高校以降7年間の足跡

 7月8日、J2を戦うアルビレックス新潟から完全移籍獲得が発表された。22試合で23得点と得点力不足に苦しむチームにおいて、攻撃的ポジションながらドイツで研鑽を積んだ得点源の獲得は非常に大きい。しかし、「4年間、トップチームでのデビューを果たせなかった」という点に対する疑問の声が各メディアから移籍の報と同時に聞こえてくることに対して違和感を感じた。勝負の世界において結論はファクトとデータが示す。まずはここまでの過程を確認してみたい。

 埼玉県出身の渡邊凌磨は、小学生でサッカーを始めると高校は、群馬県の強豪前橋育英高校へと進学した。年代別代表にも都度招集され、2013年U-17W杯にもMF鈴木徳真(現・筑波大)と共に招集を受ける。ボール保持率70%超と出場前チームトップの数値を叩き出した吉武博文率いる通称96ジャパンにおいて、左ウイングの位置から得点するストライカーのポジションを得た。大会内で3得点するなど世界に対してセンセーショナルな働きを見せると、帰国後の第93回全国高校サッカー選手権大会では準優勝し、優秀選手に名を連ねた。
 「文句なしにプロ入り」と思える実績だが、プロ入りを果たせすことができなかった。サッカーを始めた頃から「メンタルが弱い」と自認していた彼は、『メンタル強化』を次第に課題として認識し、強化していくこととなる。それでも「そういうのにも、負けずに頑張ればよかったと後悔している」と語った。『前橋育英の渡邊凌』『U-17で3得点したFW』『飛び級~』『選手権で活躍の~』と、ネームバリューがあるからこそ、個の実力の前段階で潜入感を持たれることを嫌っていたようだ。
 それ故に、早稲田大学に進学したものの、『早稲田大学ア式蹴球部』に属することはしなかった。日本高校選抜でデュッセルドルフ国際ユース大会へ出場し、圧倒的なスキルを見せつけ、その後の、「NIKE MOST WANTED」グローバルファイナルで勝者となりナイキアカデミー入学となったことで「〇〇の渡邊凌磨」ではなく「Ryoma Watanabe」と一人のサッカー選手として認められるチャンスを掴んだ。
 同年秋、インゴルシュタットU-23と契約し、2018年にはトップチームとの契約となるも、今季の結果は4部レギオナルリーガにおいて28試合出場6得点1アシストと違いを見せつけるには至らず。今季終了後には3部のミュンスターへの練習参加も報道されたが、結果として新潟との契約となった。

 リオ世代の最年少世代かつ東京世代の最年長で構成された吉武96ジャパンでは確かなエースだった。しかし、この世代で最も早く日本代表入りを果たしたのは、非U-17W杯組のMF井手口陽介(当時・ガンバ大阪)だった。日本をロシアW杯を決定づけるゴールを決めたことで名前は一気に知られた。次いだのはU-17W杯組のMF三竿健斗(鹿島アントラーズ)で、ルーキーイヤーをJ2東京Vで過ごし、即座に鹿島へステップアップ。2017年最大の成長株と言わしめ、3月の日本代表海外遠征では同点弾をアシストするなどの活躍だった。彼らがロシアW杯入りに肉薄している頃、年長とは言え、MF関根貴大が浦和レッズからインゴルシュタットへの電撃移籍を果たし、同世代MF鎌田大地はフランクフルト、U-17W杯の同期かつ東京世代のMF坂井大将がテュビズ(現在は新潟)、年下のMF堂安律がフローニンヘンへと続々海外移籍を果たした。しかし、屈指の活躍を見せた同世代のロシアW杯経験者は苦しんだ(別記事参照)。
 「何かを変えるきっかけ」を大学組はこれから経験する。先にプロの世界へ入り込んだ選手たちは「移籍」が一つのきっかけとなる。坂井大将がビザの関係もあって先に帰国、井手口陽介はリーズへと戻った。若手の世代ではいかに出場機会を得られるかが鍵となる。FW奥川雅也(マッテルスブルク/オーストリア)、FW鈴木優磨(鹿島)、FW西村拓真(仙台)、SB松原后(清水)、SB小川諒也(FC東京)、さらにはDF板倉滉(仙台)、DF中山雄太(柏)、MF三好康児(札幌)は世代屈指の出場機会を得ている。
 東京五輪を経る者と、カタールW杯を目指す者では登頂方法がまるで異なる。その中で「帰国かつJ2の新潟」を選択した意味では、東京五輪世代主将である坂井大将と渡邊凌磨には通じる何かがあったのかもしれない。ただ、共通して言えるテーマは「メンタルの回復に伴う自信の強化」だ。ドイツで培った時間が無駄ではなかった、このアクションでトライしてきたことが間違いではなかったことの証明を、サッカーファンを巻き込んで見せつけていく必要がある。そして我々は期待しても面白い。メンタルの弱さに打ち勝って海外で揉まれ続けてきた男がこれから見せていく物語の一片を。



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