ロシアW杯日本代表の戦術論(1)~西野朗新監督がサッカーのスタイルは何か~

決定した3人目の離脱

 MFイニエスタがヴィッセル神戸に加入する会見に沸き、MF三田啓貴が背負う背番号8はどうなるのかとTwitterが盛り上がる中、ひっそりと日本代表にも動きがあった。MF青山敏弘(サンフレッチェ広島)が怪我のため代表を辞退した。MF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)、MF三竿健斗(鹿島アントラーズ)とともに、可変戦術を可能とさせるボランチの一人で、スピードを活かしたカウンターサッカー戦術をFW浅野拓磨(ハノーファー/ドイツ)とともに体現する選手だ。サプライズで招集を受けるも、第15節セレッソ大阪で違和感を覚えていた膝に、ドクターはストップをかけた。MF今野泰幸(ガンバ大阪)、FW小林悠(川崎フロンターレ)に続き、予備登録メンバーから3人目の離脱が決まった。


失った3つの戦術とハリルホジッチの憂い

 3月の海外遠征メンバー発表時にハリルホジッチ前代表監督が語った「日本代表は怪我が多すぎる」との発言は本大会まで響く現実のものとなってしまった。特に、小林悠と青山敏弘に関しては不可避な選出後の露見であり、今野泰幸も経過段階だったため、2ヶ月も出場できないと判明したのは、ガーナ戦メンバー発表会見時点だった。憂いは尽きず、間の悪さも伴って、MF堂安律(フローニンヘン/オランダ)、MF森岡亮太(アンデルレヒト/ベルギー)、FW中島翔哉(ポルティモネンセ/)やプレーオフ進出とはならなかったFW久保裕也(ヘント/ベルギー)の招集を期待する声が上がるのは仕方のないことだろう。
 しかし、新戦力への発露を考慮する前に現有戦力の戦術を確認すべきである。そのうえで、『3つの戦術』を失ったことを確認しておきたい。もちろん、そのいずれもが『勝利』を掴むための可能性として必要なものだった。

2015広島型カウンターサッカー

 MF青山敏弘とFW浅野拓磨(ハノーファー/ドイツ)を基盤としたスタイルだ。3バックを主とするも、青山がDFラインに落ちてくることで両ストッパーがサイドバックとなり、可変的な動き出しを可能とする。前線の選手たちもポストプレイや裏抜けをテクニカルに行うことで、相手DFラインを疲弊させられる。
 特殊型のスタイルを現実のものにするには、青山が抜けてはかなり酷だ。展開力であればMF大島僚太(川崎フロンターレ)は負けず、ボランチとバックをポリバレントできる存在は複数いるが、両方を併せ持つ存在は唯一無二。このスタイルは厳しいものとなった。

2017前半ガンバ型サイドプレスサッカー

 中央でなく、サイドに攻撃的な選手を配置する相手に対し、ファイター型の選手をサイドに据えて侵入を未然に防ぐという長谷川健太監督(現FC東京監督)が生み出したスタイルだ。このスタイルの体現者はMF井手口陽介(クルトゥラル・レオネッサ/スペイン2部)とMF今野泰幸であり、MF山口蛍(セレッソ大阪)やDF遠藤航(浦和レッズ)も可能だ。ただし、コンディション難を抱える井手口に加え、負傷離脱の今野、戦術未経験の二人では体現に時間がかかってしまう。

風間・鬼木型ポゼッションサッカー

 動き出しに長けるFW小林悠を主とし、ピッチ上を俯瞰で見ることができるMF大島僚太を同時に起用することで効果を増大化させる策だが、これも厳しい。囮役に加え、ファンタジックなプレイヤーと黒子の動きができる攻撃的プレイヤーがほしいところだが、これだけのメンバーがいる中で「大島中心」を許容するとは到底思えない。

 予備登録メンバーから見る結果論だが、西野朗新監督が志向したサッカーは、Jリーグの日本人監督が国内で試し、手応えを得た戦術に着想を得たものなのではないだろうか。ガーナ戦に選出されなかったメンバーは、それら戦術から逆算すれば優先順位が低かったに過ぎない。コンディションが上がらなければ、MF香川真司(ドルトムント/ドイツ)らが外れる可能性も否定こそできないものの、現実的な路線として、「俺たちのサッカー」に固執するよりは各代表に即応したカウンターサッカーで勝負することが最も勝利・勝ち点の可能性を引き上げるのではないだろうか。



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