脅威を感じさせたロマン・トーレス
前半にパナマがルカクを抑え込んだ要因はCBロマン・トーレスだった。ハーフタイム時点でのデュエル勝数は4戦3勝。いずれもルカク相手に得た勝利数だ。クラブの格や選手の名に怯えるプレイヤーも多い中、トーレスは毅然と対峙した。ルカクのポジションが定まらないため、メルテンスやアザールの位置取りは悪くなり、トマ・ムニエ、カラスコの両サイド選手に預けるケースが多く、中央の選手たちが詰まってしまった。しかし、トップがずれているため、サイドの選手たちはスペースがあったとしても、カットインやクロス対応にずれが生じる。”ずれの理由”に気が付かないまま、時間は過ぎていった。
結果として後半終了時に計測したロマン・トーレスのデュエル数は前半終了時と同じ『4戦3勝』のままだった。1点目のメルテンスのドライブループシュートは素晴らしい個人技だったが、2点目のデ・ブライネのアウトサイドパス、3点目のアザールの突破はそれぞれ、トーレスをルカクのマークから剥がすための時間だった。
”ずれの理由”に気づいたベルギーは、アルゼンチンやブラジル、ドイツらが陥った戦術の罠に嵌まることなく初戦の勝利を獲得した。パナマは「前半を継続できれば…」との考えもあったことだろう。しかし、W杯の舞台でプランAだけでは勝ち残れない。プランB、プランCと戦術を変化させられるチームが大会を制する。