▽世界で最も人気のあるリーグであるイングランド・プレミアリーグ。遠く離れた日本でも注目度が高く、昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝では深夜にも関わらず両チームのファンがスポーツバーに集結し、大きな盛り上がりをみせていたのは記憶に新しいだろう。
▽プレミアリーグの魅力とは何か。その1つに世界中から代表クラスの選手が集結していることが挙げられるだろう。多額の放映権収入により、多くのクラブが多額の移籍金で他チームから選手を引き抜くことが可能となっている。そしてこの影響はプレミアリーグだけでなく、2部相当にあたるチャンピオンシップのクラブにも影響を与えている。それにより昇格組を含め、プレミアリーグに所属するクラブの実力は他国リーグと比べると非常に均衡している。
▽昨シーズン、ビッグ6に所属する選手以外にも多くの選手がブレイクを遂げた。その筆頭格は当時クリスタル・パレスに所属していたアーロン・ワン=ビサカとジェームズ・マディソン(レスター)だろう。なお、ワン=ビサカは今夏にマンチェスター・ユナイテッドに5000万ポンドの移籍金で引き抜かれている。
▽今回、「Evolving Data」は2019-20シーズンにブレイクするポテンシャルを秘めている選手を独自に厳選。今回はMFとFWを紹介していく。
↓ GK&DF編はこちら!
● オリヴァー・ノーウッド(Oliver Norwood)
代表:北アイルランド代表
Pos :DMF/CMF
背番号:16
利き足:右
生年月日:1991/4/12(28歳)
身長/体重:180cm/75kg
所属:シェフィールド・ユナイテッド
昨季:43試合3ゴール8アシスト(チャンピオンシップ)
▽昇格組のシェフィールド・ユナイテッドの司令塔。プレースキックの精度はプレミアリーグでもトップクラスの精度を誇り、長短の正確なパスでゲームをコントロールする。2018-19シーズンは2部で3番目に多くパスを成功させた。
イングランドのバーンリー出身のノーウッドは、7歳のときにスカウトされマンチェスター・ユナイテッドの下部組織に入団。その後、リザーブチームではポール・ポグバらと共にレギュラーとしてプレーするも、トップチーム昇格とはならず。下部リーグのクラブへのレンタル移籍を経て12年夏に当時2部に所属していたハダースフィールドへ完全移籍。16年夏に当時2部に所属していたブライトンに加入し、レギュラーとしてチームの2位フィニッシュ&プレミアリーグ昇格に大きく貢献。しかし、オランダ代表MFダヴィ・プレパーらを補強したブライトンでは余剰戦力となり、17年夏に当時2部に所属していたフラムへレンタル移籍。こちらでもレギュラーとしてプレーしプレミアリーグ昇格に大きく貢献。しかし、夏の移籍市場でコートジボワール代表MFジャン・ミシェル・セリらを補強したフラムはノーウッドを買い取らず、所属元のブライトンから当時2部に所属していたシェフィールド・ユナイテッドへレンタル移籍。ブレーズでもレギュラーに定着したノーウッドは、クラブの2位フィニッシュ&プレミアリーグ昇格に大きく貢献。3年連続でプレミアリーグ昇格を勝ち取るという”悲劇”とも言える偉業を達成したノーウッドは、2019-20シーズン開幕戦ボーンマス戦にキャプテンとして先発フル出場。28歳で念願のプレミアリーグデビューを飾った。
● ドウグラス・ルイス(Douglas Luiz)
代表:ブラジルU-23代表
Pos :DMF/CMF
背番号:6
利き足:右
生年月日:1998/5/9(21歳)
身長/体重:178cm/70kg
所属:アストン・ビラ
昨季:23試合(ジローナ/ラ・リーガ)
▽今夏にグアルディオラが泣く泣く手放したブラジルの若き才能。マンチェスター・シティに所属するブラジル代表MFフェルナンジーニョと似たようなプレースタイルの持ち主で、アストン・ビラでは最終ラインと前線のつなぎ役としてアンカーのポジションを任されている。また、柔軟な足下を活かしたドリブルも得意としており、ジローナに所属していた2017-18シーズンは25回以上ドリブルを成功させた選手では最高の93.2%のドリブル成功率を記録した。
母国のヴァスコ・ダ・ガマの下部組織出身のルイスは、17年夏に約1000万ポンドの移籍金でマンチェスター・シティに加入。グアルディオラ監督はプレシーズンマッチに帯同させるなど戦力として考えていたが、労働許可証が下りず2017-18シーズンから2シーズンに渡って同じシティグループのジローナへレンタル移籍。ジローナでは公式戦46試合に出場するなど主力選手として活躍した。19年夏、昇格組のアストン・ビラが1500万ポンドの移籍金で獲得。シティ時代に取得できなかった労働許可証の発行にも成功した。プレミアリーグ初先発となった第2節ボーンマス戦ではPA外から強烈なミドルシュートを叩き込み、欧州移籍後初ゴールを記録した。また、ルイスと同じく今夏に加入したジンバブエ代表MFマーヴェラス・ナカンバとのポジション争いにも注目だ。
● ジョー・ウィロック(Joe Willock)
代表:イングランドU-20代表
Pos :CMF/OMF
背番号:28
利き足:右
生年月日:1999/8/20(20歳)
身長/体重:179cm/71kg
所属:アーセナル
昨季:2試合(プレミアリーグ)
▽退団したアーロン・ラムジーの後継者として期待されるウィロック兄弟の末っ子。3兄弟全員がアーセナル下部組織出身だが、現在も所属しているのは末っ子のジョー・ウィロックのみ。アーセナルの下部組織出身の選手らしく足下が柔軟で、細かいタッチのドリブルとラストパスでチャンスを演出する。トップチームではボランチのポジションで出場することが多いが、能力が最大限に発揮されるのはトップ下だろう。
アーセナルの下部組織で2017-18シーズンにトップチームデビュー。2018-19シーズンは公式戦6試合に出場し3ゴールを記録した。中でも評価を上げたのはプレミアリーグ最終節バーンリー戦。これまで長らく主力を務めていたアーロン・ラムジー退団の不安を感じさせないパフォーマンスを披露し、サポーターから絶賛を受けると共に「これまで何故トップチームで起用されなかったのか」という疑問の声も挙がった。2019-20シーズンはコパ・アメリカに出場していたウルグアイ代表MFルーカス・トレイラの合流が遅れたことも影響し、プレミアリーグ開幕から3試合連続でスタメン出場。第3節リバプール戦でも堂々としたプレーをみせた。
● ジョン・マッギン(John McGinn)
代表:スコットランド代表
Pos :CMF
背番号:7
利き足:左
生年月日:1994/10/18(24歳)
身長/体重:173cm/68kg
所属:アストン・ビラ
昨季:43試合7ゴール9アシスト(チャンピオンシップ)
▽グリーリッシュを差し置いて2018-19シーズンのクラブMVPに輝いた背番号「7」。タックル数、インターセプト数、ドリブル成功数でクラブ1位のスタッツを記録し、アシスト、キーパス、被ファウル数でクラブ2位のスタッツを叩き出した。90分間ピッチを走りつづける運動量や縦への推進力のあるドリブル、左足から放たれるパスやシュートも正確だ。やや小柄だがフィジカルも強く、新たなボックス・トゥ・ボックス型の好タレントが登場したと言っても過言ではないだろう。
今夏にはマンチェスター・ユナイテッドからの関心が伝えられたが、ビラ側が最低でも5500万ポンドを要求し交渉は破談となった。しかし、ファーガソン元監督がスールシャール監督に獲得を助言したとされ、今季の活躍次第では本格的に獲得に乗り出すだろう。ただ、マッギンは自身が確実に出場機会を得られるクラブ以外でプレーする意思はなく、プレミアリーグ開幕直前には2024年夏までの新契約にサインしクラブに忠誠を誓った。開幕戦ではトッテナム相手に1ゴールを記録。さらには全選手で最多の8度のタックルを成功させるなど、プレミアリーグの舞台でも早速実力を発揮した。
● ジャック・グリーリッシュ(Jack Grealish)
代表:元イングランドU-21代表
Pos :OMF/CMF
背番号:10
利き足:右
生年月日:1995/9/10(23歳)
身長/体重:175cm/68kg
所属:アストン・ビラ
昨季:34試合6ゴール7アシスト(チャンピオンシップ)
▽6歳からアストン・ビラ一筋でプレーする背番号「10」。かつてはサイドでプレーする機会が多かったが、現在は高いパス制度や卓越した試合観を活かしチームの司令塔としてプレーしている。昨夏、クラブの財政難の影響で退団が確実視されていたが、新たにエジプトの大富豪ナセフ・サウィリス氏らがオーナーとなり残留が決定。当時2部に所属する選手では異例の6000万ポンドの違約金を含む新契約を締結した。
2018-19シーズンは、第21節から12試合の負傷離脱を余儀なくされた。その間チームはわずか2勝しか挙げられず、13位と中位に沈んでいた。昇格に向けて危機的状況となっていたタイミングでグリーリッシュがメンバーに復帰。するとチームは水を得た魚のように復活を遂げ、クラブ新記録の10連勝を達成。土壇場で昇格プレーオフ進出を決め、プレーオフの末に昇格の切符を掴んだのであった。また、イングランド代表を率いるギャレス・サウスゲイト監督もグリーリッシュのことを高評価しており、負傷しない限り2019年中にも夢であるイングランド代表デビューを飾るだろう。
● メイソン・マウント(Mason Mount)
代表:イングランド代表
Pos: OMF/CMF
背番号:19
利き足:右
生年月日:1995/2/27(23歳)
身長/体重:178cm/64kg
所属:チェルシー
昨季:38試合9ゴール4アシスト(ダービー/チャンピオンシップ)
▽補強禁止処分の新生チェルシーのカギを握る逸材。トップ下やインサイドハーフでのプレーを好み、エリア外からの強烈なシュートを得意とすることから「ランパードの後継者」として期待される。
6歳でチェルシーのアカデミーに入団したマウントは順調にチェルシーで育成され、17年夏に行われたU-19欧州選手権ではイングランド代表の優勝に貢献すると共に、大会ベストイレブンと最優秀選手に選出された。2017-18シーズンはオランダのフィテッセへレンタル移籍し、公式戦39試合13ゴール10アシストを記録。クラブの年間最優秀選手にも輝いた。2018-19シーズンは当時フランク・ランパードが新監督に就任したフットボールリーグ・チャンピオンシップ(イングランド2部)のダービー・カウンティにレンタル移籍で加入。開幕戦から早速ゴールを記録するなど中心選手として活躍し、公式戦44試合で11ゴール6アシストを記録。クラブは惜しくも昇格プレーオフ決勝でアストン・ビラに敗れるも、マウントの活躍なくしては決勝の舞台に立てなかっただろう。シーズン終了後、ランパード新監督が就任したチェルシーに復帰し、新たに長期契約にサイン。エデン・アザールという大黒柱を失ったチェルシーが上位に食い込むにはメイソン・マウントの爆発が不可欠となるだろう。