【志村謄】セルビアで「満員のスタジアム」に思いを馳せる日本人DF

モンテネグロ発、EL出場を目標にする志村謄

 試合終了を告げた笛の音は、今季内に夢の達成が叶わないことを示唆していた。2018-2019シーズンのヨーロッパリーグ(EL)予選にて、デンマークのブレンビーと対戦したセルビアのスパルタク・スボティツァは二戦合計1-4で姿を消した。二戦ともスタメンに名を連ねた背番号「3」は悔しがった。今季序盤のリーグ戦を投げうってでも掴みたかった夢がすり抜けていった。

 埼玉県出身のDF志村謄は、埼玉平成高校卒業後、JAPANサッカーカレッジを経て単身モンテネグロへ旅立った。スタート地点はモンテネグロ2部リーグのFKベラネ。その後FKモルナル、FKボケリで個人昇格を重ね、FKスティエスカにてEL予選への出場や国内リーグカップ優勝を経験したことで注目を集め、2016-17シーズンのセルビア移籍へつなげた。

 渡欧当初は手探りだった。モンテネグロリーグから生活もそうだが、言語の異なる国で働くこと自体からだ。しかし、プレーぶりと献身性、ひたむきな努力で周囲の評価を勝ち得てきた。そして2017-2018シーズンの結果得たEL予選を、ロシアワールドカップの余韻が残る今夏、戦ってきた。

器用さ・勤勉さ・回転の速さは努力で勝ち取れる隙間

 「フレキシブル性」は、志村にとってモンテネグロを経る中でたどり着いた極地だ。MF長谷部誠(フランクフルト)、MF瀬戸貴幸(アストラジュルジュ→ヴァンフォーレ甲府)、MF森岡亮太(アンデルレヒト)ら欧州において決して前評判の高くなかった選手たちは一様に行き着いたものだ。言語を学び、プレーのケアを高めてきた。

 食らいつき、しがみつく。まるで人生を体現したようなプレーが持ち味だ。今後さらに上位カテゴリーに上がるためには、得点力やゴールへ直結されるアクション(ゴールコンバージョン:GCV)を体得する必要がある。守備的な選手であったとしても、「助っ人に求められること」は変わらない。
 志村のプレースタイルのままGCVが向上すれば、ブンデスリーガやリーグ・アンでの活躍も見込むことができる。チェルシーのフランス代表MFエンゴロ・カンテのようなスタイルになるだろう。

 チームファーストを心掛ける「フレキシブル性」を整えてきた。それでも学生時代から変わらず高みの目標を持ち続けた。欧州でプレーし続ける中でプロとしての矜持をもち、「満員のスタジアムでプレーしたい」と思いを馳せるようになった。
 掴み取ったEL出場のチャンスを掴み取ることはできなかった。今季スパルタク・スボティツァが欧州の舞台で戦うことはない。しかし、毎年可能性は広がっている。個人昇格の可能性もある。チームのスタジアムを満員にすることだってできるかもしれない。
 チームの意識はEL出場にあった。スタメンをリーグ戦と入れ替えてでも本気で臨んだ。その分遅れを取った今季のリーグ戦の巻き返しは日本時間8月20日午前0時キックオフとなるvsラドニチュキ・ニシュ戦。奇しくもMF野間涼太(青森山田高・明治大卒)が在籍しており、日本人ダービーの試合となる。



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