【島屋八徳】宮崎、大分、山口、徳島が生んだ史上屈指のサクセスストーリー

古巣・山口相手に決めた一戦がJ2ラストゲームに

 MF狩野健太が蹴り込んだコーナーキックをニアサイドで合わせて同点弾を決めた。ボー然とする選手や倒れ込むDFやGKを後目に、ガッツポーズをしながらベンチと喜びを分かち合う姿は対象的だった。結果は2-2のドローゲームも、結果としてJ2ラストゲーム。1ゴール1アシストで締めた徳島MF島屋八徳は、古巣かつ対戦相手の『維新みらいふスタジアム』でヒーローとなった。

「ボートレーサー」を志した時期もある異色の経歴

 島屋八徳はユース年代からの代表経験者でも高校サッカーや大学サッカーで華々しく全国の舞台を経験したわけでも、優れた潜在能力や恵まれた体躯を有していたわけでもない。
 今夏甲子園にも出場した福岡県の私立折尾愛真中学・高等学校の中等部に入学したが、ちょうど島屋の”1988年度生世代”が男女共学化1期生だった。2004年に高等部へ進学するも、男子の運動部は部員数はおろか練習環境も未だままならない状態だった。
 高校卒業後は大学に行かずにサッカーも辞めて「ボートレーサー」を志して浪人した。真夏の炎天下にサウナスーツを着て走るなど、減量しながら試験勉強をし、最終試験までたどり着くものの、約40倍の狭き門を突破できず大学進学へシフトチェンジ。宮崎産業経営大学へと進学が決定した。

 大学へと進学した同2008年、大学サッカーと兼任しながら県1部リーグを戦っていたMSU FC(現・テゲバジャーロ宮崎)のメンバーとしても参戦していた。島屋の在籍した08年に県初優勝、翌年には連覇を果たし、チームは九州リーグへと昇格することとなる。3年次からは大学サッカーに専念すると、大学最終年の2011年にデンソーチャレンジカップ九州選抜に選出され、天皇杯一回戦では熊本教員蹴友団戦でゴールを上げるなど、徐々に頭角を現し始めた。
 大学卒業後はJFLのHOYO AC ELAN大分(現・ヴェルスパ大分)に入団。プロのサッカー選手ではないため、サッカーに専念できる環境とは言えなかった。しかし、加入初年度に27試合7ゴール、翌年28試合13ゴールと活躍したことでさらなるステップアップを試みる。様々なセレクション等の結果、2014シーズンはJFLのレノファ山口へ移籍すると、レノファ大躍進の立役者の一人へとなっていく。

史上最強のチャレンジャー軍団

 監督・上野展裕に見出される形で加入するも、初年度はアマチュア契約。しかし22試合6ゴールと活躍し、チームもJ3昇格が決定すると状況は変貌する。はじめてのJリーグに臨むチームにあって、島屋はプロ契約に移行した。またHOYO時代の同僚である福満隆貴に声をかけ、移籍の推薦も行ったのも同年だ。Jリーグ未経験の選手も多い中でレノファ山口は他を圧倒した。
 開幕節ガイナーレ鳥取戦はスタメン11人中9人がプロ初出場。しかし、「細かくパスを繋いで相手を崩すサッカー」を徹底。特に、FW岸田和人、MF島屋八徳、MF福満隆貴、MF鳥養祐矢の4人を中心に連動する攻撃サッカーはリーグを席巻した。4人だけでなく、中盤の底にはゲームメイカータイプのMF小塚和季とMF庄司悦大、サイドバックには展開力と守備力に加えオーバーラップも心強いSB小池龍太とSB香川勇気、後方にはパワープレーに強いCB宮城雅史とDF代健司、フィールドプレイヤーのような足元を持つGK一森純と、一芸に秀でた選手が揃っていた。
 最終節も相手は鳥取。1-2でリードされるも、後半アディショナルタイム6分にキャプテンMF平林輝良寛のゴールで追いつき、プロリーグ参入1年目でのJ2昇格とJ3優勝を決めた。終わってみれば36試合で総得点96、得失点差+60と世界でも史上屈指の成績を残し、得点ランキングの上位はレノファの選手で埋め尽くされた。
 それでも初のJ2は毛色が違った。FW岸田和人が怪我の影響もあったが、J2では異色の戦術である「攻撃的パスサッカー」を継続する。序盤こそ3位まで順位を上げたが、自慢の攻撃は対応できるものの、守備に不安を抱え、終盤には攻撃パターンも読まれるなど結果的に12位に沈んだ。ただし、その中でも42試合すべてに出場し、10得点とシーズン二桁を達成した島屋に多くのオファーが舞い込むことになる。

「あのときのレノファ」

 翌年、島屋八徳は徳島ヴォルティスへの移籍して7ゴール、2018シーズンもシーズン途中で8ゴールを決めてJ1サガン鳥栖へ個人昇格を果たした。島屋だけでなく、SB小池龍太は柏レイソル、SB香川勇気はV・ファーレン長崎(→今夏同じくして東京Vへレンタル)、MF小塚和季はアルビレックス新潟やヴァンフォーレ甲府、MF庄司悦大はベガルタ仙台(現・京都サンガ)、MF福満隆貴はセレッソ大阪とJ1昇格を果たした選手が多く現れた。岸田や鳥養はレノファに残り、一森や宮城はオファーを受けてそれぞれ移籍を果たすなど、それぞれに別れたが、「あのときのレノファ」は未だに語られる。そして今季、FWオナイウ阿道、MF小野瀬康介、FW高木大輔などまた新たなレノファスタイルを継承しそうな選手たちが現れた。そんな暑さも増した夏に徳島ヴォルティスとレノファ山口の対戦カードが組み込まれた。
 レノファ山口のスタメンには岸田、鳥養に加え、今季を彩る若者たちと島屋の加入当初新規加入したDF廣木雄磨がスタメンに名を連ねていた。開始1分、島屋のパスからMF岩尾憲が決めて早々に古巣への恩返しを見せると、8分にMF丸岡満、16分にFWオナイウが決めて逆転を喫する。リードを保たれたまま試合は終盤になり、後半アディショナルタイム4分のコーナーキックとなる。MF狩野健太が蹴ったボールはニアで待ち構えた島屋の元へ。DF廣木が反応するも一歩遅く、同点弾はゴールへと吸い込まれた。かつての同僚に決められた廣木はその場に倒れ込んでいた。
 福岡で生まれ、宮崎、大分、山口、徳島と進みながら前線と中盤を繋ぐ力を伸ばしてきた島屋の新天地は佐賀。5年ぶりの九州だ。小池や福満同様、仕事しながらサッカーをしていた時期から、毎年のようにステップアップを果たした島屋のストーリーはまだ続く。それも今度新しくボールを供給する相手は、世界的大スターFWフェルナンド・トーレスだ。



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