【選手名鑑】中川創の現在地|先輩中谷進之介の背中を追い続けたプレースタイル

 時が永遠ではないことを知ったのは、ロシアW杯期間中の6月20日早朝のことだった。メディアで報じられた『柏レイソルDF中谷進之介、名古屋グランパスへ完全移籍』の見出しを言葉のままに咀嚼することは中川にとって簡単ではなかった。ルーキーイヤーで自立心を宿すのに申し分ない事象となった。ロシアW杯後のリーグ戦初戦では守護神GK中村航輔がシーズン二度目の脳震盪のために離脱。ディフェンスリーダーDF中山雄太は負傷離脱。中谷と共に柏レイソルが世界に誇るディフェンスラインは皆ピッチから不在とするのはいつのことだったろう。変化を求められたチームで中川の覚悟は実を結ぶ。2018年9月15日第26節清水エスパルス戦のスターティングイレブンにスペインから復帰したCB鈴木大輔と共にリーグ戦初出場の時を迎える。

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中川創のプレースタイルと選手紹介

 空中戦・対人能力・ビルドアップ能力に優れ、ラインコントロールのタイミングにも優れる、統率力に秀でたプレイヤー。アンダーカテゴリーの代表歴も多く、名門柏レイソルのジュニアユースやユースでも常にレギュラーとしてチームに貢献し続けてきた。目標は下部組織の先輩にも当たるCB中谷進之介(現・名古屋)。4学年離れていることから、アカデミー時代に共闘することはできなかったが中谷が着用した背番号20と4を中川も纏った。プレースタイル含めて共通する部分があるのは、中川が強く中谷を意識し続けたからだろう。しかし、プロのルーキーイヤーがスタートした半年後に中谷は名古屋へ移籍してしまった。




『中谷進之介』を意識し続けて上回った実績

 小学生時代は地域のサッカークラブで実力をつけて柏レイソルアカデミーの門をたたく。毎年同クラブの同世代から複数のプロ選手を排出し続ける育成の名門クラブに加入すると、中川は一人の先輩を強烈に意識して成長を遂げる。4学年上のCB中谷進之介だ。中学1年生にとって大人はもちろん高校生も十分大人の部類に入るのだが、同じポジションで同じストーリーを持った上で個人・チームともに結果を残し続ける世代の象徴に憧れを抱くのはごく自然なことだった。中川が中3になった年、中谷はプロキャリアをスタートさせた。学年の差は埋まらない、それでもとの焦燥感と成長欲は彼を駆り立てた。関東ユースリーグ優勝、全日本U-15大会準優勝など、数々の実績を叩き出す歴代でも屈指の世代となった。
 ユースへ昇格すると、高校2年時には世界大会へ出場する。後に同期昇格となるLSB宮本駿晃、GK猿田遥己、MF田中陸や1学年上のRSB古賀太陽、1学年下のFW森海渡、GK小久保怜央ブライアンらとともに出場した『Alkass International Cup』ではレアル・マドリードの下部組織とも対戦した。右のCBとしてリーダーシップを放ち、危険領域に侵入してきたドリブラーとの1対1のマッチアップを制し続けた。サイドのフリー選手に低弾道でスピードのあるパスを送ったり、最終ラインと駆け引きをしている前線の選手にボールを送るなど、視野とパス技術は同年代の世界レベルにも渡り合うほどだった。

自立心の芽生えは尊敬する先輩の移籍によって

 2018シーズンになり、ようやくプロキャリアをスタートさせると尊敬する中谷進之介と初めて同じチームの選手としてキャンプや練習を行うこととなった。これまでもトレーニングパートナーや2種登録選手として何らかの接点はあったものの、前置きなしで同門となった。チームは序盤こそ順調に勝点を積み上げたものの、過密日程から各ポジションで選手が離脱するなどの問題を抱え、ついには監督交代にまで至ってしまう。さらには中山雄太の負傷、ロシアW杯直前にGK中村航輔が一度目の脳震盪を起こし、DF中谷進之介やFWクリスティアーノまで小さなスランプに陥るなど、問題が表面化し続けてしまった。その中にあって『中谷進之介の移籍』だ。「いつかはシンくんの横でプレーを」と願った目標を、柏レイソルで果たすことができなかった。
 「一言で言えばショック」とコメントを残した。アカデミー時代からお手本にして追いかけた背中との、同じチームでのプレーはたった半年で幕を下ろした。中谷から受けた『見てくれている人は必ずいる。創らしさを忘れることなく、毎日を大切に過ごして欲しい』とのコメントを胸に、中川は一皮むける決心をする。

偉大な先輩の系譜を紡ぐ東京世代の旗手


 「これからは自立をしなくてはいけません。プレーも選手としての振る舞いも改善していきたい。自分の中で明確になったのは『これはチャンスなんだ』ということ。訪れたチャンスをものにすることがどれだけ大切かはずっと聞いてきたことでもある。その最初のチャンスが今なんだと思います」そう語った中川は、トレーニングでの表情も変わった。大きなジェスチャーや声の出し方がとにかく変わった。一心不乱にすごした夏の取り組みは結実。加藤望新監督の下でベンチ入りの機会は増加している。
 「きっと、シンくんの『残像』というものがサポーターの中にあるはず。今後、自分にはそれを上回るインパクトを残していくことが求められますし、年齢やキャリアも関係なく、『やるべきことをやれる選手』になって、鈴木大輔さんやシンくんが築いてきてくれた『4番』の系譜を自分が担いたい」と語る。
 憧れはいずれ対面の敵となって対峙する。それまでにどれだけ成長できるかが鍵となる。その中で、迎えるリーグ戦プロ初戦の清水戦では自身がアカデミー時代にプロで『4番』をつけ、今月スペインから帰ってきた鈴木大輔と共にプレーする。中谷進之介の残像を追うだけではない。それでも今日、尊敬する中谷進之介もつけた憧れの『4番』と中川は初めて共闘することとなる。




パラメータ・能力値

offence defense speed power technique tactics stamina mental
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