【オビ・パウエル・オビンナ】『誰もつかめない領域』へのチャレンジ

師・林彰洋を追いかけるビッグセーバー

 3日13時、U-21日本代表の発表が行われた。アジア大会に挑む20人のメンバー選出にあたり、競争の激しいゴールキーパーのポジションを確保したのはオビ・パウエル・オビンナと小島亨介の二人。かつての年代別代表とは異なり、世代でリードするのはオビと小島だ。FC東京、セレッソ大阪、ガンバ大阪のU-23チームで出場を掴んでいる選手たちを除き、大学年代と同世代の選手たちはプロのゴールマウスを守る機会を与えられること自体が稀な話である。彼らは大学サッカーで揉まれて選出を受けた。スタメンはトレーニング次第だろうが、5月のトゥーロン国際でもゴールマウスを守り、ロシアW杯期間にはNHKにゲスト出演まで果たしたオビ・パウエル・オビンナはある決意を宿しているようだった。

 埼玉県さいたま市出身のオビは、東大宮コスモスSSSから大宮アルディージャジュニアを経てJFAアカデミー福島へと入学する。中1から中2へ進級する春に東日本大震災が発生し、福島第一原子力発電所事故からアカデミーの拠点が静岡の御殿場へと変わった。当初は急な出来事で様々な準備に時間もかかったというが、次第に環境が落ち着きを取り戻すと人生を変える邂逅が待ち受けていた。
 御殿場・時之栖キャンプ時の清水エスパルスの練習参加の機会を得たのだ。初めてのプロとの練習に待ち受けていたのは、流通経済大からプリマス、オリンピック・シャルルロワと海外での出場を勝ち取ったGK林彰洋だった。圧や練習への意識など『プロ』を感じたオビは多くのアドバイスや学びを林から受けた。大学も、林彰洋の所属した流通経済大へ進学すると、1年時から出場機会を得た。
 身長面からエピソードまで、似通った二人の行く末は類似。時を経て今春、流通経済大はFC東京との練習試合を行った。何より流通経済大の守護神として君臨するオビにとって思春期に薫陶を受けた林彰洋が対面のゴールマウスで対峙することとなった。結果は5失点と完敗。試合後にオビは、
 「林さんに成長したな、と感じてもらえるような今後にしたい。今シーズンも、もっともっと成長して少しでも近づきたい」
自身の足りない部分については、
「チームのために良いプレーをすること。今日も5失点した中で、チームの流れを変えられるようなプレーを自分がすることが大切だったが、できなかった。チームに良い影響を与えられるGKになることが目標」と語った。

 大学3年時に林は一度海外への挑戦権を得た。メス(フランス)の試験に落選したが翌年自らチャンスを勝ち取った。それでも海外でゴールを守り続けるという壁は厚く、日本へと帰国していた。その際に出会った少年がオビだった。清水の守護神として一時君臨するも、櫛引政敏との競争に破れて鳥栖へ。鳥栖でさらにレベルを上げて地元東京へと戻ってきた。
 オビもまた今季はトゥーロンやアジア大会など国際大会を多く控えた年となる。「林彰洋の同時期と比べれば、明らかに上」と流経大の中野雄二監督が漏らすほど秀でた才能は、自身の活躍如何でその後の進路が決まることはわかっている。代表との二足の草鞋を履く中で正守護神の座が危ぶまれた時期もあった。もがき苦しみながらも得た答えに確証はないが、試合に出続ける中で、対峙した林彰洋の姿とパフォーマンスを見る中で浮かび上がるものがあった。経験値を積み重ねる東京世代の守護神は、まだ誰も見たことのない高みへの階段を一歩ずつのぼっている。




 

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