鈴木優磨という男
幼稚園のサッカーの時間に、研修(実習)で訪れたサッカーの先生に鈴木の母が言われた、「この子は才能がある。サッカーを続けた方がいい」との言葉をきっかけとして
「サッカー選手・鈴木優磨」の才能は芽吹き始めた。小学校へ上がると同時にアントラーズのスクールへ入り、3つ上の兄(鈴木翔大・ソニー仙台/JFL)と通った。「小学6年生の時、全国大会のベスト16の試合で5人抜きしてゴールを決めたこともある」と語るほど才能に溢れていた鈴木優磨は、順調にジュニア、ジュニアユース、ユースとステップアップしていった。ユースでもエースとして活躍。高校2年時には、トップチームのキャンプに参加した。
「サッカーやっていて、こんなの初めて。『終わった』と思いました。何も通用しなかった。どうやっても差は埋まらない。プロになるのは無理だと思った」
MF田中稔也(鹿島)と、「早く帰りたい」とぼやき合うくらいの挫折を味わった。キャンプ後、負けじと必死に練習を重ね2015年トップチームへ昇格を果たす。
J1デビュー戦、初ゴール
J1デビュー戦は、2015年9月12日明治安田生命J1リーグ2ndStageのガンバ大阪戦だった。当時19歳。74分、MF土居聖真と代わりピッチに立つ。90分、MFカイオ(現・アル・アイン/UAE)からのクロスを見事にヘディングで合わせる。結果は1-2で破れたものの18分間しかなかった出場時間で、J1デビュー戦でゴールを決める勝負強さを見せた。1年目は、このあと7試合に出場し2ゴールを決めてみせた。
2年目は、開幕戦から違いを見せつける。またしてもG大阪戦、またしてもMFカイオからのクロスをヘディングで合わせた。ゴール直後、サポーターに向かって「見たか」と叫んでいるような、気持ちを全面に出す鈴木優磨ががそこにいた。
ヘディングシュートは「ユースのときに長谷川さんから教わった」と元日本代表FWの長谷川祥之(現・鹿島アントラーズスカウト)氏直伝。2016年はリーグ戦31試合に出場し、8得点2アシストを記録。高卒新人2年目での8ゴールは、日本代表にも選出され、W杯にも出場したFW柳沢敦(現・鹿島アントラーズコーチ)以来の、クラブトップタイ記録だった。
3年目の2017年、持ち前の勝負強さを発揮するも、チーム事情から先発ではなくベンチスタートが多くなる・監督交代後はリーグ戦終盤まで出場こそ出来ていたものの、得点に絡むことが出来なかった。気鋭の若手の終息感がチームにこだましたか、最終節に勝利できず、鹿島は最後の最後で優勝を逃してしまった。2年目に東京ヴェルディから移籍し、この年からスタメンを奪取した同学年のMF三竿健斗が人目をはばからずに涙を流すなか、気丈な態度でスタジアムを後にした。リーグ戦は26試合に出場し、6ゴール1アシストと前年よりやや数字を落としていた。
4年目の2018年、鹿島アントラーズは、第15節を終えて(鹿島はACLの日程もあり14試合)5勝3分6敗12得点16失点と負け越している。しかし、闘志を燃やす鈴木優磨は4ゴール3アシストと、チーム特典の半分以上に関与している。
「これだけ結果が出ていないのは本当に申し訳ない。サポーターの皆さんは負けた後でも、力強くアントラーズコールをしてくれている。ブーイングがないのは心に来るんですよね。本当に感謝しかない。早くみんなで喜びたい」
ここぞというところでの勝負強さ、全面に溢れ出る気持ち、負けん気の強さ。今季リーグ戦の目標は二桁得点。鈴木隆行や大迫勇也が背負ってきた背番号『9』。常勝鹿島復活のカギは、この男が握っている。
【鈴木優磨】
1996年4月26日生まれ 182cm/75kg