セカンドインパクトシンドローム|命の危険のある2度目の脳震盪

セカンドインパクトシンドロームの実例

 短期間に二度の脳震盪を起こしてしまうことを『セカンドインパクトシンドローム』という。最近のスポーツ界においても、MF香川真司(当時マンチェスター・ユナイテッド)やFW原口元気(当時デュッセルドルフ)、プロ野球の青木宣親(当時MLB・ジャイアンツ)らがこの問題を抱えた。香川は一週間で復帰する軽度のもので後遺症も残らなかったが、原口や青木は一定期間試合出場を見送られた。しかし、この症候群は、最悪死に至ることもある。
 よりハードな競技であるラグビーの場合、脳震盪を起こした選手だけでなく、起こした疑いのある選手も即座に退場となっており、起こしていた場合には3週間試合出場ができない。特に、1年間に2回以上既往のあるアスリートは、さらなる外傷や回復遅延防止のため、プレー復帰の前には脳震盪治療経験のある医師の診察受診を必要としている。もちろん、協会やオフィシャル、チーム・スタッフ・関係各位は日常生活に支障が生じないよう注意することが必要となる。

 では、本件はどうか。中断期間前の第15節名古屋グランパスエイト戦でFWとの空中での競り合い回避を選択した中村は、それでも起きた接触によって頚椎から垂直落下してしまった。即座に名古屋市内の病院に運ばれ一時的に入院した10日後にはロシアW杯代表メンバーに選出された。ガーナ戦こそ出場は回避したが、スイス戦はベンチ入りし、パラグアイ戦に至ってはゴールマウスを守った。発生後わずか3週間の出来事だ。本大会での出場こそならなかったものの、2ヶ月の間に軽度のものではなく、ハードな事象を二度起こしている。三度目は、プロ人生の中で発生させても選手生命の危機すらあるものだ。早期回復は望むが最大解決を望むことが先決だ。
 そして我々は、W杯代表クラスの面々ですら2014年の香川、2017年の原口、2018年の中村と定期的に発生してしまっていることから学んでおくべきだ。脳震盪の怖さと勇気ある撤退。「もし、軽度なら…」と望む部分があったとしても、それ以上あるのは「今シーズンを休んでもいいのではないか」という憂いに似た願いだろう。



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