【選手名鑑】グラニト・ジャカの現在地|スイスの黄金世代を牽引するアーセナルの司令塔

 イングランド・プレミアリーグのアーセナルで活躍するスイス代表MFグラニト・ジャカ。2009年に行われたU-17W杯でネイマールらを擁するブラジル代表やゲッツェらを擁するドイツ代表など相手に7戦全勝し優勝したスイス代表の中心選手である同選手は、スイスの黄金世代を最前線で牽引し続けている。2011年に18歳でデビューしたスイス代表のキャップ数は既に70試合を超えており、26歳という年齢を考えても117試合という最多出場記録を更新する可能性は十分にあるだろう。2016年夏に加入したアーセナルでは、ゲームを組み立てる司令塔タイプの選手ながらパワフルさを持ち合わせているという同クラブでは唯一無二の立ち位置を確立している。それではジャカのプレースタイルやエピソード、これまでのキャリアなどを振り返っていこう。

目次



 

グラニト・ジャカのプレースタイルと選手紹介

 

 精度の高い左足を持つ司令塔。185cm・82kgと恵まれた体格の持ち主で空中戦に強く、ミドルレンジからの強烈なシュートで相手ゴールを脅かす。中盤でバランスを取り長短の正確なパスでゲームを組み立てながら、ピンポイントのクロスで味方選手のゴールをお膳立てする。また中盤でハードワークもこなすため守備面でもアーセナルに欠かせない選手だ。元アーセナル監督のアーセン・ヴェンゲルは元フランス代表MFエマニュエル・プティに似た選手と評価する。

 兄はバーゼルでプレーするアルバニア代表MFタウラント・ジャカ(バーゼル)。また、アルバニア代表FWアルマンド・サディク(ルガーノ)とコソボU-21代表DFアゴン・ジャカ(プリシュティナ)とは従兄弟の関係である。

 頻繁にカードを貰うことで知られる。アーセナル加入後は約3.7試合に1枚のペースでイエローカードを提示されている。

 2018年に行われたロシアW杯第2戦セルビア戦で1ゴールを記録するが、ゴール後にアルバニア国旗の「双頭の鷲」をイメージさせるパフォーマンスを行ったとしてFIFAから罰金の処分を受けた。

 2019-20シーズンよりローラン・コシエルニー退団に伴いアーセナルの主将に就任。しかし、チームの不調もありプレミアリーグ第10節クリスタル・パレス先にて、自身が途中交代を命じられた際にファンからブーイングが飛んだ。これに反応したジャカはファンを煽り、ユニフォームを脱ぎロッカールームへと下がった。この行為は当時監督を務めていたウナイ・エメリも苦言を呈し、主将もピエール・エメリク・オーバメヤンへと交代した。

 2017年7月に結婚。妻とはボルシアMGでプレーしていた頃に出逢ったそうだ。妻もジャカと同じくコソボ系アルバニア人の家系をルーツに持つ。

 

グラニト・ジャカのプロフィール

 

選手名 グラニト・ジャカ(Granit Xhaka)
ポジション DMF/CMF
出身 バーゼル/スイス
年齢/生年月日 27歳/1992年9月27日
身長・体重 185cm・82kg
現所属チーム/背番号/利き足 アーセナル(イングランド)/34/左足
代表/デビュー年 スイス代表/2011年6月4日
過去所属 ボルシアMG,バーゼル
クラブ・代表タイトル スイスリーグ優勝2回
個人タイトル スイス年間最優秀選手(2017)

 

幼少期からプロ選手になるまで

 

 グラニト・ジャカの両親は共にアルバニア人。父親はコソボのプリシュティナ大学に通っていた1986年、当時のセルビア政府への反発デモに参加し逮捕。母親とは逮捕される3ヶ月前に出逢ったそうだ。母親はおよそ3年半もの間、刑務所に収監されていた父親を待ち続け釈放後に結婚。子供の安全を考えて1990年にスイスへと移住したのだった。翌年に兄のタウラント・ジャカ、そのおよそ18ヶ月後の1992年9月27日にグラニト・ジャカが誕生した。

 2000年に兄とコンコルディア・バーゼルの下部組織に入団。2002年に兄と共にFCバーゼルの下部組織へと移籍した。兄弟揃って下部組織時代から主力選手として台頭していた。また、2009年に行われたU-17W杯では宇佐美貴史や杉本健勇らを擁する日本代表とも対戦。この大会でスイス代表はブラジルやドイツ、イタリア、ナイジェリアといった強豪国相手に全勝し優勝。ジャカはこの大会で全試合に先発出場し優勝の立役者の1人となった。


スイスで最も期待される若手選手に

 

 U-17W杯の活躍もあり10年夏に17歳の若さでトップチームへ昇格。兄も共に昇格している。7月末に行われたUEFAチャンピオンズリーグ予選デブレツェニ(ハンガリー)戦でトップチームデビューを飾ると同時に試合終了間際にプロ初ゴールを記録した。リーグ戦でも徐々に出場機会を増やし、シーズン後半には不動のレギュラーとしてポジションを確たるものとした。ちなみに兄も10年9月にトップチームデビューを飾っている。このシーズン、バーゼルは2位チューリッヒを勝ち点「1」差で上回り優勝。ジャカはトップチーム昇格初年度からリーグ優勝に大きく貢献したのであった。シーズン終了後にはスイス代表に初招集。6月に行われたEURO2012予選イングランド戦でフル出場を果たし、堂々たるA代表デビューを飾った。

 翌2011-12シーズンはケガで出遅れるも復帰後はほぼ全試合に出場。UEFAチャンピオンズリーグでグループステージ6試合に出場を果たすなど国際舞台でも着実に経験を積んだ。バーゼルはリーグ戦で圧倒的な強さを見せつけ3連覇を達成。A代表でも不動のレギュラーとして試合に出場し続けるジャカは、いつしか世界中が注目する若手有望株として強豪クラブから熱い視線を送られるようになっていた。
 

ドイツの古豪へ移籍

 

 シーズン中だった2012年5月18日、ドイツのボルシア・メンヘングラートバッハ(以下ボルシアMG)が移籍金約850万ユーロ(約11億円)で完全移籍で獲得したと発表した。加入直後から不動のレギュラーに定着したジャカは、70年代以降に低迷し毎年のように下位に沈んでいたボルシアMGをルシアン・ファブレ監督を始めGKテア・シュテーゲン、DFヴェント、FWラファエルらと共に欧州カップ出場を狙える順位まで押し上げた。中でも2014-15シーズンはブンデスリーガを3位でフィニッシュ。クラブをUEFAチャンピオンズリーグ出場に導いた。15年9月にリーグ開幕5連敗でファブレ監督が解任された以降はキャプテンに就任。新監督らと共にクラブを立て直しシーズンを4位で終えた。結果的にボルシアMGでは在籍した4シーズンで公式戦140試合に出場。イエローカード35枚、退場6回と今と変わらないプレーの粗さが目立ったものの、UEFAチャンピオンズリーグ出場権獲得などクラブに与えた影響は絶大なものであった。

 2015-16シーズン終了後に行われたEURO2016では、グループステージ初戦で兄がプレーするアルバニア代表と対戦。EURO史上初となる兄弟対決が実現した。結果は弟のグラニト・ジャカがプレーするスイス代表が1-0で勝利。この試合を見守ったお母さんはスイスとアルバニアの国旗を半分ずつ合成したTシャツを着て国際舞台で戦う息子を応援した。


《左が兄のタウラント、右が弟のグラニト》
 

イングランドの名門アーセナルへ

 

 2016年5月25日、イングランド屈指の強豪アーセナルが移籍金約3400万ポンド(約45億円)で完全移籍したと発表した。当時監督を務めていたヴェンゲル監督が獲得を熱望し獲得に至ったとのこと。加入初年度から不動のレギュラーに定着。退場による出場停止処分を除きほぼ全試合に出場している。監督がウナイ・エメリへと代わった2018-19シーズンも絶大な信頼を寄せられており、主将のDFコシエルニーやMFエジルらが欠場した試合ではキャプテンマークを巻くなどクラブの顔とも言える存在となっている。

 2019-20シーズンよりローラン・コシエルニー退団に伴いアーセナルの主将に就任。しかし、チームの不調もありプレミアリーグ第10節クリスタル・パレス先にて、自身が途中交代を命じられた際にファンからブーイングが飛んだ。これに反応したジャカはファンを煽り、ユニフォームを脱ぎロッカールームへと下がった。この行為は当時監督を務めていたウナイ・エメリも苦言を呈し、主将もピエール・エメリク・オーバメヤンへと交代した。

 その後、およそ1ヶ月の欠場を経てノリッジ戦より復帰。12月中旬にミケル・アルテタが新監督に就任してからは1試合を除き全試合に出場。冬の移籍市場では移籍の噂も流れたが、アルテタ監督は「チームに必要な選手」と再びチームの中心選手として重宝されている。
 

グラニト・ジャカの動画

 
《アーセナルでのゴール&アシスト集》

《パス集》



 

年度別出場成績

 

2019-20/アーセナル

プレミアリーグ 31試合1ゴール2アシスト
EL        4試合0ゴール3アシスト
FAカップ     6試合0ゴール0アシスト

2018-19/アーセナル

プレミアリーグ 29試合4ゴール1アシスト
EL        9試合0ゴール3アシスト
FAカップ     1試合0ゴール0アシスト
EFLカップ    1試合0ゴール0アシスト

2017-18/アーセナル

プレミアリーグ 38試合1ゴール7アシスト
EL        6試合1ゴール0アシスト
EFLカップ    3試合1ゴール0アシスト
コミュニティ・シールド 1試合0ゴール1アシスト

2016-17/アーセナル

プレミアリーグ 32試合2ゴール2アシスト
UCL       7試合1ゴール0アシスト
FAカップ    5試合0ゴール1アシスト
EFLカップ    2試合1ゴール0アシスト

2015-16/ボルシアMG

ブンデスリーガ 28試合3ゴール1アシスト
UCL       5試合0ゴール1アシスト
DFBポカール   3試合0ゴール0アシスト

2014-15/ボルシアMG

ブンデスリーガ 30試合2ゴール1アシスト
EL       9試合3ゴール2アシスト
DFBポカール   3試合0ゴール0アシスト

2013-14/ボルシアMG

ブンデスリーガ 28試合0ゴール1アシスト
DFBポカール   1試合0ゴール0アシスト

2012-13/ボルシアMG

ブンデスリーガ 22試合1ゴール0アシスト
UCL予選     2試合0ゴール0アシスト
EL       7試合0ゴール0アシスト
DFBポカール   2試合0ゴール0アシスト

2011-12/バーゼル

スイスリーグ  24試合1ゴール1アシスト
UCL       8試合0ゴール0アシスト
スイスカップ  6試合0ゴール2アシスト

2010-11/バーゼル

スイスリーグ  20試合1ゴール3アシスト
UCL       2試合0ゴール0アシスト
EL       2試合0ゴール0アシスト
スイスカップ  3試合0ゴール1アシスト



 

 

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