【谷口堅三】キャリアハイを目指す「引き出し」のストライカー

 打った瞬間の手応えと、ストライカーの本能が入り混じった瞬間だった。MF大竹隆人から受けたボールをバックステップで放つと、手応えを感じたかバックスタンドを意識した。しかし身体は反応する。ポストにあたってこぼれたボールに反応すると、左足で流し込み、ハットトリックを達成した。
 自身初となったハットトリックの相手は、昨年まで所属したグルージャ盛岡。前節YSCC横浜戦の2得点に続くマルチ得点で得点ランキング上位へと躍り出た。

 出身高校はロシアW杯日本代表にも選出されたFW大迫勇也(ブレーメン/ドイツ)の活躍でも有名な鹿児島城西高校だが、谷口は県トップリーグに属するアミーゴス鹿児島の中心選手として活躍していた。ユースチームや高体連所属のトップクラスの高校に所属している選手でもない選手としては異例となるU-16日本代表候補にも名を連ねたほどだ。そんな彼が高卒でプロ入りした先は当時J2のサガン鳥栖だった。
 2年間で40得点と、鳥栖のスーパーエースとして活躍したFW新居辰基がジェフ千葉へ移籍したこともあり、サイズもありながらストライカーとして勝負できるオールドスタンダードなタイプを欲していたことから両者の思惑は合致していた。2年目こそ主力の一翼を担うも、期待とは裏腹の活躍となった。


 様々な機は熟していた。地元のFC鹿児島へ戻ると、Jリーガーの地力を発揮し、3年間で53試合75得点と躍動する。ストライカーとしての矜持を取り戻した。
 翌2014年、FC鹿児島とヴォルカ鹿児島の統合により、鹿児島ユナイテッドFCが誕生。同チームの初期メンバーに名を連ねるも、負傷の出遅れと精彩の欠落、リーグ自体のステップアップも絡み、13試合で3得点。取り戻したかに思えた矜持は瞬く間に色褪せた。
 2015年、九州の地を離れて盛岡の地へ降り立った。5年ぶりにプロとして返り咲くと、3年間で18得点とストライカーとしての数字に物足りなさはありつつも、89試合に出場し、チームの最重要戦力になっていた。

 チームに馴染むまで時間がかかるのだろうか、プロ初年度の鳥栖、FC鹿児島の移籍初年度、鹿児島ユナイテッドの1年間、グルージャ盛岡の初年度と、各キャリアの初年度は入りが弱い。J3内のライバルチーム、藤枝MYFCに移籍を果たした今季も、9節までは無得点と結果は出せていなかった。
 今年も変わらずと思わせた10節の2得点と、11節盛岡戦のハットトリックは開眼させただろうか。プロとして復活を遂げた盛岡の地でプレーヤーのまた一つ階段を上がろうとしている。

 単独打開的なプレイヤーではない。ただ、ハイポストプレイヤーとしては身長もジャンプ力も突出しているわけでもない。ただ、後方からのボールをバックステップでトラップし、シュート態勢にもっていくスキルはJ3のレベルではない。反応速度もあるが、なによりポジショニングの為せる業なのだろう。
 自らのポジションを相手DFと駆け引きし、常に人事を尽くす谷口堅三のもとにボールが転がり始める。プロ初の二桁得点達成へ、「30歳」を迎える一年が今後を占うことだろう。



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