【クラブ紹介】日本代表DF昌子源の移籍先である『トゥールーズ』を徹底解剖!

 1998年6月14日、日本代表はフランスW杯の初戦でアルゼンチン代表相手に0-1の敗戦を喫した。それから20年弱、日本代表が史上初めてW杯の本戦を戦った「スタジアム・ミュニシパル」をホームスタジアムとして使用するトゥールーズが、DF昌子源を獲得することで鹿島アントラーズとクラブ間で合意に達した。移籍金は推定で約300万ユーロ(約3億9000万円)。

 ロシアW杯では吉田麻也と共に日本代表の守備の要として決勝トーナメント進出に大きく貢献した昌子。しかし、最後は悔しさの残る幕切れだった。決勝トーナメント1回戦ベルギー戦、2点を先制するも、後半アディショナルタイムにカウンターから勝ち越しゴールを奪われ2-3で敗戦を喫した。失点の直前、昌子はCKで攻め上がっていた敵陣から懸命に自陣に戻り、ゴール前のシャドリに向かってスライディングタックルを仕掛けていた。しかし、タックルはわずかに届かず。昌子は試合後、「何で追い付けんのやろ、という悔しさ、ふがいなさが残った」というコメントを残した。それから約半年、昌子はW杯後の移籍が注目される中クラブに残留しクラブ史上初となるACL制覇に大きく貢献。そして2018年末、遂にロシアW杯の「悔しさ」を晴らすため、そしてその「差」を縮めるための海外へに移籍の環境が整った。

 それでは昌子源の移籍先であるトゥールーズを紹介していこう。

目次

 

トゥールーズの歴史とクラブ紹介

 
《クラブの歴史》
 1970年に「USトゥールーズ」として創設。77年に現在の「トゥールーズFC」へと名称変更した。81-82シーズンに2部で優勝し1部へ初昇格。83-84シーズンは5位、85-86シーズンは4位、86-87シーズンは3位でフィニッシュと大きく躍進を遂げたが、後にフランス代表の正GKとなるファビアン・バルテズが92年夏に退団後にチームは低迷。92-93シーズンに1部で19位となり2部へと降格した。その後は1部と2部を往復するシーズンが続いた。2001年夏には財政問題で3部へと降格。新監督に元横浜F・マリノスの監督であるエリク・モンバエルツ氏を招聘するとチームはかつての勢いを取り戻す。わずか2シーズンで1部復帰を果たした。06-07シーズンは3位と躍進。クラブ史上初めてUEFAチャンピオンズリーグの出場権を獲得した。翌シーズンは降格争いを繰り広げるも残留。現在まで降格することなく1部に所属している。

《育成の名門》
元フランス代表GKファビアン・バルテズを輩出するなど昔から選手育成には定評があったが、財政問題に伴い3部へと降格した2001年からはさらに育成を強化。近年ではGKアルバン・ラフォン(フィオレンティーナ)、DFイッサ・ディオプ(ウェストハム)といったフランスの将来を背負うであろう若手選手を輩出している。

《ガロンヌ・ダービー》
ライバルクラブは同じくガロンヌ川沿いにある「ボルドー」。リーグ・アンでの通算成績は、ボルドーの27勝、トゥールーズの17勝、引き分けが15回。(2018年11月28日現在)

《ホームスタジアム》
トゥールーズ市内にあるスタジアム・ミュニシパルをホームスタジアムとして使用している。1998年に行われたフランスW杯の試合会場としても使用され、日本代表の初戦アルゼンチン戦が行われたスタジアム。

 

所属選手

 
GK
1 マウロ・ゴイコエチェア(ウルグアイ)
16 マルク・ビダル(フランス)
30 ハディスト・レイネ(フランス)

DF
2 ケビン・アミアン(フランスU-21代表)
3 マテュー・ゴンサウベス(フランスU-18代表)
5 ステベン・モレイラ(フランス)
6 クリストフェル・ジュリエン(フランス)
12 イシアガ・シラ(ギニア代表)
18 ステベン・フォルテス(カーボベルデ代表)
20 ステーブ・ヤゴ(ブルキナファソ代表)
29 フランソワ・ムバンジェ(スイス代表)
33 ジャン=クレア・トティボ(フランスU-20代表)

MF
4 ヤニック・カユザック(フランス)
15 ジョン・ボストック(トリニダード・トバゴ代表)
17 イブライム・サンガレ(コートジボワール代表)
22 マヌ・ガルシア(スペインU-19代表)
23 ヤン・ボディジェ(フランス)
25 ステファン・エムビア(元カメルーン代表)
28 ハキム・エル・モケデン(フランスU-20代表)

FW
7 マックス・グラデル(コートジボワール代表)*主将
8 コランタン・ジャン(フランス)
9 ヤヤ・サノゴ(フランス)
10 アーロン・レイヤ・イセカ(ベルギーU-21代表)
14 マテュー・デセビ(トーゴ代表)
21 ジミー・ドゥルマズ(スウェーデン代表)
24 フィルマン・ムベレ(DRコンゴ代表)
31 デリック・オセイ・ヨー(フランスU-20代表)

獲得に至った経緯

 
 2018年夏に主将を務めていたDFイッサ・ディオプ(21)がウェストハムへと完全移籍。移籍金は2200万ポンド(約31億8000万円)。昨季まで不動のCBとして起用されていたディオプの退団はクラブにとって痛手だったが、下部組織から昇格したジャン=クレール・トディボ(18)を先発に抜擢し夏は補強しなかった。しかし、今度はトディボに対してナポリ、バイエルン、シャルケ、ライプツィヒ、ドルトムント、ユベントスといったビッククラブが揃って関心。これによりロシアW杯で活躍した昌子源をリストアップし、獲得に至った。

 

トゥールーズからステップアップを果たした選手たち

アルバン・ラフォン(Alban Lafont)
Pos :GK
生年月日:1999/1/23(20歳)
身長/体重:193cm/82kg
所属:フィオレンティーナ(イタリア)
代表:フランスU-20代表
退団時の移籍金:850万ユーロ(約11億1000万円)

 GKとしてはリーグ・アン史上最年少である”16歳と310日”でデビューを果たした将来のフランス代表正守護神候補。長い手足を活かしたセービングが特徴で、空中戦はもちろん飛び出しやシュートに対する反応も早い。

 フランス人の父親とブルキナファソ人の母親の間に生まれ、2014年にトゥールーズの下部組織に入団。15-16シーズン、トゥールーズは開幕戦から第14節を終えた時点でわずか「1」勝、無失点に抑えた試合は「0」と苦しんでいた。この状況を脱却すべくドミニク・アラバジェ監督(当時)は、第15節ニース戦これまでベンチ入りすらしたことがないラフォン(当時16歳と310日)を先発に大抜擢。するとラフォンはこの試合を無失点に抑え、開幕戦以来の勝利大きく貢献。クラブにとってはおよそ7ヶ月ぶりの完封だった。戦列なデビューを飾ったラフォンは、正GKの座を守り続けシーズンを終えた。ちなみにラフォンが出場する前の14試合の平均失点が「2」点だったのに対し、ラフォンが正GKとなってからの平均失点は「1.125」点と明らかに失点が減った。その後も正GKとしてプレーし続け、18年夏にセリエAの強豪フィオレンティーナへとステップアップを果たした。新天地でも正GKとしてプレーしている。

イッサ・ディオプ(Issa Diop)
Pos :CB
生年月日:1997/1/9(22歳)
身長/体重:194cm/92kg
所属:ウェストハム(イングランド)
代表:フランスU-21代表
退団時の移籍金:2200万ポンド(約31億8000万円)

 パリ・サンジェルマンやマンチェスター・ユナイテッドが獲得に興味を寄せる逸材CB。194cm/92kgという圧倒的なフィジカルの持ち主ながらスピードも兼ね備えているという怪物で、空中戦だけでなくインターセプトも得意。

 2006年にトゥールーズの下部組織に加入。前述したラフォンと同じ15-16シーズンのニース戦でプロデビューを果たす。ラフォンと共に無失点&勝利に大きく貢献し、レギュラーに定着した。17-18シーズンの第9節からは20歳の若さでクラブの主将に就任。1部と2部の入れ替え戦の末、なんとか残留に導いた。18年夏にウェストハムへとステップアップ。プレミアリーグ第3節アーセナル戦からレギュラーを掴んでいる。

セルジ・オーリエ(Serge Aurier)
Pos :RSB
生年月日:1992/12/24(26歳)
身長/体重:176cm/76kg
所属:トッテナム(イングランド)
代表:コートジボワール代表
退団時の移籍金:1000万ユーロ(約13億円)

 ブラジルW杯で日本代表相手に2アシストを記録した攻撃的SB。爆発的なスピードが持ち味。ドリブル突破からの高速クロスというイメージが強いため守備を疎かにしがちと思われがちだが、トゥールーズ時代にはCBとしても起用されているため守備力も高く安定している。2017年に行われたアフリカネイションズカップ以降はコートジボワール代表の主将を務めている。

 RCランスの下部組織出身で2012年冬にトゥールーズへ完全移籍。加入直後からレギュラーの座を射止め、13-14シーズンはDFとしては驚異の6ゴール7アシストを記録。シーズン終了後、ブラジルW杯のコートジボワール代表メンバーに選出され、グループステージ初戦の日本戦ではクロスから2点を演出し逆転勝利に大きく貢献。世界的に知名度を高めた。W杯終了後にフランスの強豪パリ・サンジェルマンへ完全移籍。しかし、チームの絶対的存在であったイブラヒモビッチの悪口などを動画アプリに投稿し謹慎処分を受ける。素行が問題視された結果、2017年夏にトッテナムへと放出された。新天地では素行は大人しくなったものの、2018年2月28日に行われたクリスタル・パレス戦で1試合で3度のファウルスローを記録するというプレミアリーグ新記録を樹立。度々メディアで話題となる選手だ。

ムサ・シソコ(Moussa Sissoko)
Pos :CMF/RMF
生年月日:1989/8/16(29歳)
身長/体重:187cm/83kg
所属:トッテナム(イングランド)
代表:フランス代表
退団時の移籍金:180万ポンド(約2億6000万円)

 フィジカルとスピードが持ち味で球際に滅法強い「デュエリスト」。元々はCMFの選手だったが、スピードを活かすためにサイドで起用されることが多い。運動量が非常に豊富で攻守に渡って存在感を発揮する。

 2003年にトゥールーズの下部組織に入団。2007年、18歳のときにトップチームに昇格するとすぐにレギュラーポジションを確保。2009年10月には20歳の若さでフランス代表デビューを飾った。2013年冬にプレミアリーグのニューカッスルへの完全移籍。この時、トゥールーズとの契約は残り半年となっていたため移籍金はバーゲン価格の180万ポンド(約2億6000万円)だった。ニューカッスルでも不動のレギュラーとしてプレーするが、15-16シーズンにチームは2部へと降格。EURO2016でのプレーが高評価されたこともあり、トッテナムが当時のクラブ史上最高額に並ぶ3000万ポンド(約39億円)で獲得した。

ウィサム・ベン・イェデル(Wissam Ben Yedder)
Pos :CF
生年月日:1990/8/12(28歳)
身長/体重:170cm/68kg
所属:セビージャ(スペイン)
代表:フランス代表
退団時の移籍金:950万ユーロ(約12億3500万円)

 フランス人史上初めてフットサルとサッカーの双方での代表選手となった選手。170cmと小柄だが、敏捷性とフットサルで磨かれたテクニカルな両足を武器にゴールを量産する。現在所属するセビージャでは、102試合の出場ながら50ゴールを記録している。(2018年11月28日現在)

 10代の頃は地元のクラブや下部リーグのアルフォールヴィルでプレーしていた傍ら、フットサル選手としてもプレーしていた。2010年にはフットサルフランス代表に選出され2試合に出場し1ゴールを記録している。2010年夏にトゥールーズの下部組織に入団した。12-13シーズンから出場機会を掴むと、開幕から10試合で7ゴールとゴールを量産。このシーズンから4シーズン連続でリーグ戦2桁ゴールを達成した。2016年夏、退団したガメイロやインモービレの後釜としてセビージャが移籍金950万ユーロ(約12億3500万円)で獲得した。限られた出場機会でも結果を残したベン・イェデルは、ロシアW杯直前の2018年3月にサッカーフランス代表に初選出された。W杯出場は叶わなかったが、続く18-19シーズンは新加入のFWアンドレ・シウバと共に好調なチームを牽引している。
 

昌子源の可能性

 上記の選手以外にもDFジェレミー・マテュー(現スポルディング)やMFエティンヌ・キャプー(現ワトフォード)、FWアンドレ=ピエール・ジニャク(現ティグレス)といった選手もトゥールーズからビッククラブへとステップアップを果たしている。結果を残せば彼ら同様にステップアップを果たすことが出来るだろう。

 さらに付け加えるとトゥールーズは、イッサ・ディオプ、ジャン=クレール・トディボといったビッククラブが注目するCBを短期間で輩出しており、これから「トゥールーズのCBは優秀だ」という「ブランド」が定着してくるだろう。昌子もトゥールーズで経験を積み上げることでステップアップの可能性が高まることが予想される。もう間もなく、”日本代表が史上初めてW杯の本戦を戦った地”でW杯の悔しさを知る男の新たな戦いが始まる。



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