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中央打開型のゴリゴリ系、メキシコ戦で見せた小田裕太郎の本能

 『魂のアプローチ』はパリ世代年長組の合言葉となっている。4年後のカタールW杯は既にパリ世代が現実のものであり、フランス代表FWキリアン・ムバッペやセネガル代表DFムサ・ワゲは今ロシアW杯に10代で出場し、得点まで決めた。21歳で迎える次回へ期待する一人として彼を挙げずにはいられない。

持ち味は、ダイナミックな動きとスピーディーなドリブル

 「第22回国際ユースサッカー in 新潟」に臨んでいるU-17日本代表は14日、第1節でメキシコと対戦し、2-1で勝利した。先制点は前半5分、後に決勝点を決める染野唯月(尚志高)がタッチライン際からパスを出すと、反応したMF井上玲(市立船橋高)がクロスを上げる。最後はゴール前の動き直しでマークを外したMF小田裕太郎(神戸U-18)が頭で押し込んだ。
 セットポジションこそ右のサイドハーフだが、『和製ムバッペ』と称されるカットインの動きや、足裏を活かしたボール技術を持ち合わせる。元来のテクニシャンやファンタジスタのようなタイプではなく、繊細な足捌きを巧みに利用した上体のダイナミックさは化物性を秘めている。
 身長の高い選手がサイドを主戦場にするケースは過去に前例が少ない。現日本代表DF酒井宏樹(マルセイユ/フランス)こそプロ後にサイドバックを主戦場とするようになったケースはある。日本代表史上、FIFAの公式大会で180cm級選手がサイドでプレーしたのは、U-17W杯2017で両サイドハーフとしてプレーしたFW中村敬斗(ガンバ大阪)、MF上月壮一郎(京都サンガF.C.)くらいなものだ。

 小田裕太郎の強みは「足元の繊細さ」を活かした「ダイナミックな上体の動き」に伴う「スピーディーなドリブル」だ。ただ、オフ・ザ・ボールの動きも上手い。『魂のアプローチ』で予めポイントを予測し、チャレンジし続けていることが要因のようだ。森山ジャパン、秋葉ジャパンで戦い続けるに当たり、口酸っぱく投げかけられる言葉が「未来をちゃんと見据えなさい」ということだ。
 U-20W杯2019、東京五輪、U-20W杯2021、カタールW杯と毎年チャンスが訪れる。だから小田はチャレンジをやめない。メキシコ戦でも抜群のスピードを活かした突破にチャレンジを続けた。DFの間を強引に抜け出そうとする小田をメキシコのDFはファウルで止めていた。
 心に残るは2017年6月のインターナショナルドリームカップ最終節ギニア戦だ。優勝への必須条件は【5点差勝利】。無理難題をFW斎藤光毅(横浜FCユース)がやってのけた。同年4月に年代別代表初招集となった新星は、瞬く間に階段を駆け上がる。キャプテンマークを着けた同戦では、3得点2アシストの離れ業。3ヶ月後のU-17W杯のメンバー入りも果たす(負傷のため辞退)。現在は、飛び級でU-19日本代表チームに選出されている。奇跡の離れ業の最後の得点をアシストしたのが小田だった。
 「相手に捕まえられたりしても、そこでいき切る力をつけないといけない。ファウルでも止められないくらいの力をつけたい」と誓った神戸産の新たな才能がどこまで駆け上がってくるか、名を覚えておいてほしい。