▽世界で最も人気のあるリーグであるイングランド・プレミアリーグ。遠く離れた日本でも注目度が高く、昨シーズンのUEFAチャンピオンズリーグ決勝では深夜にも関わらず両チームのファンがスポーツバーに集結し、大きな盛り上がりをみせていたのは記憶に新しいだろう。
▽プレミアリーグの魅力とは何か。その1つに世界中から代表クラスの選手が集結していることが挙げられるだろう。多額の放映権収入により、多くのクラブが多額の移籍金で他チームから選手を引き抜くことが可能となっている。そしてこの影響はプレミアリーグだけでなく、2部相当にあたるチャンピオンシップのクラブにも影響を与えている。それにより昇格組を含め、プレミアリーグに所属するクラブの実力は他国リーグと比べると非常に均衡している。
▽昨シーズン、ビッグ6に所属する選手以外にも多くの選手がブレイクを遂げた。その筆頭格は当時クリスタル・パレスに所属していたアーロン・ワン=ビサカとジェームズ・マディソン(レスター)だろう。なお、ワン=ビサカは今夏にマンチェスター・ユナイテッドに5000万ポンドの移籍金で引き抜かれている。
▽今回、「Evolving Data」は2019-20シーズンにブレイクするポテンシャルを秘めている選手を独自に厳選。今回はGKとDFを紹介していく。
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● ディーン・ヘンダーソン(Dean Henderson)
代表:イングランドU-21代表
Pos :GK
背番号:1
利き足:右
生年月日:1997/3/12(22歳)
身長/体重:188cm/86kg
所属:シェフィールド・ユナイテッド *マンチェスター・ユナイテッドからのレンタル移籍
昨季:46試合41失点(チャンピオンシップ)
▽今夏に開催されたU-21欧州選手権でイングランドの正GKを務めた若き守護神。フィード面ではまだまだ改善の余地はあるものの、シュートストップや安定感は他のイングランド代表GKらに引けを取らない。
カーライル・ユナイテッドの下部組織で育成されたヘンダーソンは、16歳となった2011年にマンチェスター・ユナイテッドの下部組織に入団。2015-16シーズンはストックポート・カウンティへ、2016-17シーズンはグリムズビー・タウンへ、2017-18シーズンはシュルーズベリー・タウンへとレンタル移籍し着実に経験を積んだ。シュルーズベリーでのプレーが評価され、18年夏に当時フットボールリーグ・チャンピオンシップ(イングランド2部)に所属していたシェフィールド・ユナイテッドへレンタル移籍で加入。リーグ戦全試合に出場し、リーグ最少の41失点に抑えてチームのプレミアリーグ昇格に大きく貢献した。19年夏にはマンチェスター・ユナイテッドとの契約を2022年夏まで延長し、2019-20シーズンも引き続きシェフィールド・ユナイテッドでプレーすることが決まっている。
● タイロン・ミングス(Tyrone Mings)
代表:イングランド代表
Pos :CB/LSB
背番号:40
利き足:左
生年月日:1993/3/13(26歳)
身長/体重:196cm/77kg
所属:アストン・ビラ
昨季:15試合2ゴール(チャンピオンシップ)
▽昇格組のアストン・ビラのディフェンスリーダー。196cmの体格を活かした空中戦に強いのはもちろん、元々LSBとしてプレーしていたため俊足も兼ね備えているスケールの大きいDFだ。また、時折みせる縦へのドリブル突破や、高い精度のフィードやサイドチェンジは攻撃の起点ともなる。
父は現在チェルシーでスカウトを務めており、ミングスは育成の名門であるサウサンプトンの下部組織でプレーした。2014-15シーズンで当時2部に所属していたイプスウィッチでブレイク。15年夏にボーンマスに引き抜かれるも定位置を掴むことが出来ず、19年冬に2部に所属していたアストン・ビラにレンタル移籍。当時ビラのCB陣はケガ人が相次いでおり、加入直後からスタメンに定着。するとミングス加入前の1試合平均の失点が約1.5点だったのに対し、加入後は約0.8点と守備の立て直しに大きく貢献した。ビラのアシストマネージャーである元イングランド代表DFジョン・テリーに指導され、CBとして急激に成長を遂げているミングス。現在イングランド代表にとって左利きのCBは非常に希少な存在であり、早ければ2019中にもイングランド代表に初選出されることが予想される。
● ビョルン・エンゲルス(Björn Engelst)
代表:ベルギー代表
Pos :CB
背番号:22
利き足:右
生年月日:1994/9/15(24歳)
身長/体重:193cm/83kg
所属:アストン・ビラ
昨季:33試合1ゴール(スタッド・ランス/リーグ・アン)
▽リーグ・アンのスタッド・ランスより加入したベルギー代表DF。CBでコンビを組むミングス同様に空中戦に強く、こちらも前線の選手に有効な縦パス通すことを得意としている。また、非常に得点力が高く、クラブ・ブルージュに在籍時は8試合に1ゴールのペースでゴールを量産していた。
ロケレンとクラブ・ブルージュの下部組織出身で、クラブ・ブルージュで活躍していた16年3月には出場こそなかったもののベルギー代表に初選出。同年に行われたEURO 2016の代表候補にも挙がっていたが負傷により欠場した。その後、オリンピアコスを経て18年夏にリーグ・アンのスタッド・ランスに加入。ランスでは不動のCBとしてリーグ戦33試合に出場し、チームの8位フィニッシュに大きく貢献した。レギュラークラスのCB陣が30代に突入しているベルギー代表にとってエンゲルスの台頭は好材料と言えるだろう。
● チャグラル・ソユンチュ(Çaglar Söyüncü)
代表:トルコ代表
Pos :CB
背番号:4
利き足:右
生年月日:1996/5/23(23歳)
身長/体重:185cm/82kg
所属:レスター
昨季:6試合(プレミアリーグ)
▽マンチェスター・ユナイテッドへ移籍したイングランド代表DFハリー・マグワイアの後釜として期待されるトルコ代表DF。対人やフィジカルを活かした守備が特徴で、23歳ながらトルコ代表で20試合以上に出場している経験も魅力的だ。しかし、前所属のフライブルクでは度々失点に直結するミスを犯しており、さらなる安定感の向上が求められる。
当時トルコ2部に所属していたアルトゥノルドゥでブレイクしたソユンチュは、16年夏に争奪戦の末ブンデスリーガに所属していたフライブルクに加入。2016-17シーズンから2シーズンに渡ってレギュラーとして活躍し、18年夏にレスターへと引き抜かれた。レスターでは加入初年度こそハリー・マグワイアやウェス・モーガン、ジョニー・エバンスといった実力者の牙城を崩せずプレミアリーグ6試合の出場に留まったが、マグワイアがユナイテッドへ去った2019-20シーズンよりレギュラーに定着。開幕3試合では相方を務めるエバンスと共に安定したパフォーマンスをみせている。
● ケビン・ダンソ(Kevin Danso)
代表:オーストリア代表
Pos :CB/DMF
背番号:38
利き足:右
生年月日:1998/9/19(20歳)
身長/体重:190cm/87kg
所属:サウサンプトン *アウクスブルクより買い取りOP付きのレンタル移籍で加入
昨季:18試合1ゴール(アウクスブルク/ブンデスリーガ)
▽MKドンズでトッテナムに所属するイングランド代表MFデレ・アリらと共に育成されたオーストリア代表DF。スピードやフィジカルといった身体能力が非常に高く、そのプレースタイルから同じガーナ人の両親を持つ元フランス代表DFマルセル・デサイー氏と比較される。
オーストリアでガーナ人の両親の間に生まれ、6歳の時に家族でイギリスに移住。9歳の時にMKドンズの下部組織に入団し、同期には当時11歳のデレ・アリがいる。14年にドイツのアウクスブルクの下部組織へ移籍するとポジションをボランチからCBにコンバート。2016-17シーズン第23節ライプツィヒ戦でクラブ史上最年少でトップチームデビューを飾り、同年9月にはA代表に初選出。その後はケガの影響などで不動のポジションを築くには至らなかったが、19年夏にプレミアリーグのサウサンプトンへ買い取りオプション付きのレンタル移籍で加入。第3節ブライトン戦では移籍後初出場を果たし、クラブの今季初勝利に大きく貢献した。
*プレー集が存在しないため、イングランドからドイツへと渡った経緯などを語るインタビュー動画を掲載。
● ベン・ゴッドフリー(Ben Godfrey)
代表:イングランドU-21代表
Pos :CB/DMF
背番号:4
利き足:右
生年月日:1998/1/15(21歳)
身長/体重:183cm/74kg
所属:ノーリッジ
昨季:31試合4ゴール(チャンピオンシップ)
▽マンチェスター・ユナイテッドやリバプール、トッテナムといったビッククラブが熱視線を送るイングランドU-20代表DF。ラグビー選手の父親譲りのフィジカルの持ち主で、長くMFとしてプレーしていたため足下が柔軟でパスの精度も高い。
ヨーク・シティの下部組織で育成され、16年1月にノーリッジに加入。元々は中盤のプレイヤーであったが、シュルーズベリーへのレンタルから復帰した2018-19シーズンにCBにポジションをコンバート。すると瞬く間にレギュラーポジションを掴み、スイス代表DFティム・クローゼやスコットランド代表DFグラント・ハンリーをベンチに追いやった。今季ノーリッジは開幕前からクリストフ・ジマーマンとティム・クローゼの2人のCBが負傷離脱を余儀なくされており、負担が大きい中でも初のプレミアリーグの舞台で高いパフォーマンスを披露している。
● フレデリック・ジルベール(Frédéric Guilbert)
代表:元フランスU-21代表
Pos :RSB/CB
背番号:24
利き足:右
生年月日:1994/12/24(24歳)
身長/体重:178cm/70kg
所属:アストン・ビラ
昨季:34試合1ゴール2アシスト(カーン/リーグ・アン)
▽今夏よりアストン・ビラに合流した守備的SB。本職はRSBだが、ボルドー時代はCBのレギュラーとしてプレーするなど守備力の高さが特徴的。「Opta」によると5大リーグにおける16年8月以降のタックルを成功数ランキングでMFイドリッサ・ゲイェ(パリ・サンジェルマン)、MFウィルフレッド・エンディディ(レスター)に次ぐ3番目のスタッツを記録している。また、クロスにも定評があり、今季開幕前に行われたプレシーズンマッチではクロスから2アシストを記録した。
カーンの下部組織出身で2014-15シーズンにボルドーでプロデビューを飾る。2015-16シーズンはリーグ・アン30試合に出場するなど主力選手として活躍し、16年夏に下部組織時代を過ごしたカーンへ復帰。以後、中心選手として活躍し、19年1月にアストン・ビラへの完全移籍。残りの半年をレンタル移籍という形でカーンに残留するが、チームは惜しくも2部降格となった。アストン・ビラではイングランドでの経験豊富なエジプト代表DFアーメド・エルモハマディとポジション争いが待ち受けている。
● マックス・アーロンズ(Max Aarons)
代表:イングランドU-21代表
Pos :RSB
背番号:2
利き足:右
生年月日:2000/1/4(19歳)
身長/体重:178cm/69kg
所属:ノーリッジ
昨季:41試合2ゴール6アシスト(チャンピオンシップ)
▽GKアンガス・ガン(サウサンプトン)やMFジェームズ・マディソン(レスター)らをプレミアクラブに輩出したノーリッジが新たに育て上げた新星SB。質の高い攻撃参加が魅力的で、イングランド代表のギャレス・サウスゲイト監督も熱視線を送る。また、ニューカッスルに所属するロナルド・アーロンズとは従兄弟の関係にあたる。
ルートン・タウンの下部組織で育成され、16年夏にノーリッジの下部組織に入団。2018-19シーズン第6節に負傷したDFイヴォ・ピントの代わりに先発に抜擢されると高パフォーマンスを披露。以後、一度もピントにポジションを返さず残りのリーグ戦全試合に出場し、チームの2部優勝に大きく貢献した。シーズン終了後、同選手に対してはマンチェスター・ユナイテッドやトッテナムなどが関心を示すも、2024年夏までの新契約にサインし、引き続きノーリッジでプレーすることとなった。
● エインズリー・メイトランド=ナイルズ(Ainsley Maitland-Niles)
代表:イングランドU-21代表
Pos :RSB/RMF/CMF
背番号:15
利き足:右
生年月日:1997/8/29(21歳)
身長/体重:177cm/71kg
所属:アーセナル
昨季:16試合1ゴール1アシスト
▽現在負傷中のエクトル・ベジェリンからRSBのポジションを奪いきりそうな若き万能プレイヤー。サイドや中盤など様々なポジションでプレー可能な万能性に加え、近年はスピードを活かした対人の守備に磨きがかかっている。また、元々攻撃的な選手であるため質の高い攻撃参加も期待でき、今季開幕戦のニューカッスル戦ではハーフライン付近で相手ボールをカットするとそのまま前線に持ち上がり、クロスからオーバメヤンのゴールをアシストした。
6歳でアーセナルの下部組織に加入したナイルズは、14年12月に行われたUEFAチャンピオンズリーグ、ガラタサライ戦で途中出場を飾り、ジャック・ウィルシャーに次ぐクラブ史上2番目に若い17歳と109日でトップチームデビューを飾った。2017-18シーズンよりトップチームでの出場機会を増やし、2018-19シーズンはキャリア最多の36試合に出場した。
● カイル・ウォーカー=ピータース(Kyle Walker-Peters)
代表:イングランドU-21代表
Pos :RSB/LSB
背番号:16
利き足:右
生年月日:1997/4/13(22歳)
身長/体重:173cm/62kg
所属:トッテナム
昨季:6試合3アシスト(プレミアリーグ)
▽キーラン・トリッピアーの抜けた穴埋めを期待される若きSB。やや小柄だが、その俊敏性とスピードを活かしたプレーで攻守に貢献する。時折、失点に直結するミスを犯すが、経験を積めば自然と改善されるだろう。ちなみにマンチェスター・シティに所属するイングランド代表DFカイル・ウォーカーとは血縁関係はなく、かつてミルウォールやチャールトンで活躍したフィル・ウォーカーを叔父に持つ。
13年にトッテナムに加入したウォーカー=ピータースは、2017-18シーズン開幕戦ニューカッスル戦でトップチームデビューを飾り勝利に貢献。しかし、その後はキーラン・トリッピアーやセルジ・オーリエ、ファン・フォイスといった実力者の牙城を崩せず、長くベンチ生活が続いた。転機となったのは19年夏、これまで不動のRSBとしてプレーしていたトリッピアーがアトレティコ・マドリードへ完全移籍。マウリシオ・ポチェッティーノ監督はプレシーズンから負傷中のオーリエやフォイスの代わりにウォーカー=ピータースを起用し、同監督の信頼を得ることに成功した。
● ロイド・ケリー(Lloyd Kelly)
代表:イングランドU-21代表
Pos :LSB/CB
背番号:26
利き足:左
生年月日:1998/10/6(20歳)
身長/体重:178cm/70kg
所属:ボーンマス
昨季:32試合1ゴール(ブリストル・シティ/チャンピオンシップ)
▽今夏にボーンマスに加入したイングランド期待のLSB。柔軟な足下と質の高い攻撃参加が特徴で、3バック時には左のCBとしてもプレー可能。ただ、クロスやパスの精度には改善の余地があり、2018-19シーズンは0アシストに終わった。
11年に地元のブリストル・シティの下部組織に入団。17年8月に行われたカラバオ・カップでトップチームデビューを飾ると月末にはU-21代表のセカンドチームであるイングランドU-20代表に初選出。その後、徐々に出場機会を増やし、2018-19シーズンはチェルシーからレンタル移籍で加入していたジェイ・ダシルバとのポジション争いを制しスタメンに定着。後半戦は併用されることが増えたが、共にシーズン終了後に行われたu-21欧州選手権の代表メンバーに選出された。今シーズンは開幕前のプレシーズン中に負傷し出遅れているが、チャーリー・ダニエルズやディエゴ・リコらとのポジション争いに注目が集まる。
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