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『反則な一歩目』をもつ古橋亨梧の解体新書|岐阜から日本への挑戦状

興國産テクニシャンのもつ『反則な一歩目』

 8月1日、ヴィッセル神戸はFC岐阜からFW古橋亨梧を完全移籍で獲得したと発表した。今シーズン26試合11ゴール6アシストとリーグトップクラスの結果を残した。ルーキーイヤーの昨シーズンは全42試合6ゴール9アシストと、1年半のリーグ戦全てに出場している。
 「スピードとドリブルを活かしてチームの力になりたい」と神戸を通じたコメントも発表すると共に、岐阜を通じて「日本を代表するためにもJ1でのプレーを」希望したと複雑な思いから決断したことを吐露した。興國高、中央大、FC岐阜と培ってきた新進気鋭の若手アタッカーを主にヴィッセル神戸サポーターやJ2を普段見ない方にお伝えしたい。

 古橋亨梧のプレースタイル、と問われれば「石津大介」と答えたい。ゴールを目標と捉えてスタートポジションから迷いなく最適解の手段を選択して突っ込む。代名詞は『反則な一歩目』、落下点、ボールの転がる先を見据えたキャッチアップ・ピックアップへのボール保持を選択し、ドリブルをメインとした次の行動に移る。どこかその野性味はアビスパ福岡へと帰還したFW石津大介を思い出す人もいるかもしれない。





興國産テクニック×岐阜大木スタイルパスサッカー

 古橋亨梧は大阪府の興國高校出身の選手である。興國高はモダンタイプのポゼッションサッカーで有名だが、本質は『楽しい・嬉しい』の感情創出にある。ポゼッションを得意とするが、ポジショナルサッカーではない。そのため、個々の属人性を発芽することでも有名であり、プロや海外で活躍する選手が一気に増えた。磨いたテクニックを中央大でさらに成熟させ、2016年にFC岐阜へと入団した。岐阜はMF庄司悦大(現京都サンガFC)、MF風間宏矢、MF小野悠斗、MF永島悠史らと共に発展させるパスを主体としたポゼッションサッカーだった。慣れ親しんだ興國高時代と同種のスタイルのサッカーで古橋はルーキーイヤーから躍動した。得意のドリブルとスピードに長短のパスを組み合わせると、初年度から20得点以上に関与した。2年目の今季は既にJ2では手がつけられない選手になっていた。古橋亨梧、MF小野瀬康介、SB高木利弥、FWオナイウ阿道の4人は特にデータ上抜きん出ていた。今夏、高木利弥は柏レイソル、小野瀬康介はガンバ大阪、古橋亨梧はヴィッセル神戸へ移籍したが、データ的観点で見れば当然とも言える事象だ。強いて言えばシーズン終了まで待ってみていたらどうなっていたのだろうか。

 今季も既に20得点以上に関与した古橋だが、もちろん弱点もある。ポジティブトランザクション(守備→攻撃への転換)が最も早いのに対し、ネガティブトランザクション(攻撃→守備)への切り替えはやや遅い。
 J2とJ1やJリーグと世界の強国リーグで異なる点は、選手個々のプレイアブル範囲にある。パス数や得点、起点となる回数にはそれほどの変化がない。しかしJ1はJ2に比べて1.5倍の範囲をカバーしなければならない。J2はセットプレイや空中戦が多いため、J1に比べて全選手1.5倍以上の空中戦に対応する。そのため、サイドの選手がルーズボールをピックアップする回数も1.5倍存在する。中央の選手たちがペナルティーエリア内で待ち構えるため、フリーでボールを回収する機会が多くある。逆に言えば、自らのリズムを掴むポイントが多く存在するのだ。J1はより多くボールが回る。だからこそ、デュエルやインターセプト、タックル、ドリブルなど、多彩なテクニックで相手をいなすためのアクション数自体が多くなる。神戸でどこまで対応できるか、J2からのステップアップを目論む若手選手たちのアイコンとなるかもしれない。