シュート意識の根底から違いのある2チーム
現地時間5月31日17時より行われたトゥーロン国際大会第2節でU-21日本はU-19ポルトガル相手に3-2と一人少ない中で逆転勝ちを収めてみせた。途中出場ながら終盤に2得点を奪ったFW上田綺世(法政大)が気を吐いたが、ポルトガルにシュートを27本打たれるなど、若きポルトガルイレブンが攻撃の意識を高く保っていた。それぞれの戦いぶりをデータから振り返っていきたい。
ポゼッションは日本44.9%、ポルトガル55.1%と大きな差があったわけではないが、シュート本数は5-27と圧倒的な差がついた。枠内シュート数9本(33.3%)は高くないものの、エリア外からでも7本のシュートを放っており、ポルトガルの「ボールをもったらシュートで終わる」意識差がシュートに現れている。
意識差はクロスの成功数でも読み取れる。企図数は15-20と大差ないが、成功数は1-8と圧倒的だ。日本はDF冨安健洋(シント・トロイデン/ベルギー)やDF板倉滉(ベガルタ仙台)を中心に空中戦勝率73.7%を記録してポルトガルの26.3%を凌駕しているものの、これだけのクロスやシュートに結びついており、短時間で何度もボールを繋がれて攻め込まれたことがわかる。
球際の粘りが死守した最終防衛ライン
デュエル勝率、空中戦勝率の高さを欧州の強国と張り合えた点は収穫だ。既に各チームの主力として常時試合に出場するメンバーでもあるため、相応の相手との「ヨーイドン」では負けないようだ。試合に『負けない』ためには失点しないことが必須。『勝つため』ならば得点をしなければならない。
それだけに、GK山口瑠伊(エストレマドゥーラ/スペイン)の退場は失策だった。DFラインを突破されたため、身を挺してシュートストップへ向かう姿は見事だったが、それがエリア内では称賛されるものの、ラインを明らからに超えた位置になってしまった。エリア外での意図的なハンドを取られたものの、冷静さも欠いていたように思う。
次戦は出場停止となり、3人目のGKが必要となったため、FC東京からバックアッパーとして波多野豪が招集されることとなった。
最高数値と最低数値を叩き出したFW上田綺世
ベンチから戦況を見つめたFW上田綺世は、交代直後から仕掛けていった。それもそのはず、日本はシュートを3本しか打てておらず、前半終了直前にFW田川亨介(サガン鳥栖)が得点して以降は流れを維持できずにいた。無理にでも攻め入ってくるポルトガル攻撃陣に対し、日本はきれいな形の攻撃で攻め入ろうとしていた。
上田はDFラインを突破する動きを魅せ続けた。それに呼応し、MF三苫薫(筑波大)やMF遠藤渓太(横浜F・マリノス)がボールを供給し始める。結果として上田のデュエル勝率は試合内全選手中最低の20%。しかしそれはPK獲得や裏を狙い続けたことでもあり、得点・シュート成功率は2得点の100%と当然トップの数値を叩き出した。それだけでなく、一つのバリエーションに固執せず、あらゆる方法での攻撃形態を模索したことが、ポルトガル守備陣を混乱に陥れた。
映像では癖や流れを汲むことができる。しかしデータは、その時点に起こった結果を
抽出してファクトに落とし込む。因果関係を忠実に反映させながら今後もプレビュー・リザルトとしてご紹介できればと思う。
Data by:Evolving Data Analyze Team & Opta