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横浜FM仲川輝人、俊足ストライカーが掴んだ「一瞬」の武器

プロ入り初となる1試合2得点。

 
 「リバウンドは最初に触れたやつの下に落ちてくる」は、的を射た表現だ。長崎MF黒木聖仁からFW仲川輝人がボールを刈り取ると、ルーキーMF山田康太が右サイドを駆け上がって運んでいく。仲川は長崎MF中原彰吾と並走してチャンスを窺うも、接触からよろけてしまった。しかし、山田の放ったシュートが弾かれ、仲川の下へ。転がり込んだ千載一遇のチャンスを決めたものの、表情にはまだ笑顔がなかった。これはまだ『同点弾』だった。

 7分後、相手ペナルティエリア右角でチャンスを得ると、ボールを保持したのはまたしても仲川輝人だった。対面したのはLWB翁長聖。本来とは異なるマッチアップだ。眼前のギャップを感じ取ったのはRSB松原健だ。自らがオーバーラップの動きで囮となることで注意を引くと、翁長の重心が左へずれる。一瞬のギャップを感じ取った仲川は左足へボールを持ち替え、絶妙なコントロールでネットを揺らした。



仲川輝人のこれまで

 50mを5秒台で走る脚力、「大学No.1ストライカー」と評され、2013年に専修大学3年次に関東大学1部リーグ得点王、2012年、2013年、2014年に全日本大学選抜、ユニバーシアード代表にも選出されるなど順風満帆なサッカー人生を送っていた。
 しかし2014年10月19日、試合中の負傷で右膝前十字靭帯および内側側副靱帯断裂、右膝半月板損傷という大怪我。仲川は「一日中落ち込み、沈んだ」と振り返る。どん底まで落ちたであろうものの、2日後には「完全復活してみせる」と吹っ切れた。その後熱心に誘ってくれた横浜FMに入団したが、怪我から復帰するまでに約11ヶ月間かかった。そんな長いリハビリ期間も自身の弱みも知ることもでき、「長かったけどいいリハビリ期間だった」と振り返る。
 2015年の天皇杯で公式戦初出場。そして2016年5月25日ナビスコカップ(現在はルヴァンカップ)第6節のアルビレックス新潟戦でプロ初ゴール。しかし、出場機会を得られず2016年9月FC町田ゼルビアへの育成型期限付き移籍が発表された。町田ゼルビアでは、移籍後初戦からフル出場し、2戦目でリーグ戦初ゴールを果たす。12試合出場3ゴール2アシスト。すべてフル出場。
 2017年1月に横浜FM復帰するもウーゴ・ヴィエイラや伊藤翔、富樫敬真らの壁を越えることが出来ず、同年7月アビスパ福岡へ期限付き移籍。福岡では、20試合(うち2試合はプレーオフ)に出場するも無得点という悔しい結果に終わった。
 そして2018年横浜FMに再復帰。「自分がマリノスで1年間しっかり戦えていないという気持ちが一番強い。マリノスでしっかり1年間戦えていないという気持ちがあったので、帰ってきた」仲川と同じく今季山口からレンタルバックした和田昌士、イッペイ・シノヅカらとの競争も注目。
 プロ4年目、真価が問われるシーズンが始まった。

【仲川輝人】
1992年7月27日 161cm/52kg
武器:スピード・決定力・フィジカルの強さ