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【日本代表】あくまでセレクショニスタである【ウクライナ戦】

 3月27日に行われたサッカー日本代表vsウクライナ代表の一戦は、1-2でウクライナ代表の勝利で幕を閉じた。これで日本は、ロシアW杯代表登録メンバー35名発表までの全試合を終了した。
立ち上がりからウクライナ代表のFWコノプリャンカ(シャルケ/ドイツ)やMFジンチェンコ(マンチェスター・シティ/イングランド)らに押し込まれる展開が続いたが、日本も右ウイングのポジションから真ん中や後ろにスライドしてきたFW本田圭佑(パチューカ/メキシコ)や絶妙な飛び出しで突破を図るMF柴崎岳を中心に何度か好機をうかがった。
しかし、チーム全体となって圧をかける攻めに対して後手を踏み、日本は最後列のCBラキツキー(シャフタール・ドネツク/ウクライナ)に放たれたシュートをFWコノプリャンカを背負ってディフェンスしていたCB植田直通(鹿島アントラーズ)をかすって失点を喫する。前半終了間際に、MF柴崎岳(ヘタフェ/スペイン)が中央左から蹴ったFKに中央でCB槙野智章(浦和レッズ)が頭であわせて同点とした。
後半は両チームとも前半ほどのアグレッシブさが失われていたが、それでも押し込まれる日本に焦りの色が見え始める。すると後半24分、この日幾度となく突破された右サイドをまたしてもFWコノプリャンカによって切り裂かれてグラウンダーのクロスを入れられる。LSB長友佑都(ガラタサライ/トルコ)がすらしたがボールはRSBカラバエフ(ゾリャ・ルハーンシク/ウクライナ)の足元へ落ちると、そのまま振り抜かれて2失点目を喫した。
日本は、CF杉本健勇(セレッソ大阪)に代えてFW小林悠(川崎フロンターレ)、FW本田に代えてFW久保裕也(ヘント/ベルギー)、MF柴崎に代えてFW中島翔哉(ポルティモネンセ/ポルトガル)、MF長谷部誠(フランクフルト/ドイツ)に代えてMF三竿健斗(鹿島アントラーズ)、LWG原口元気(デュッセルドルフ)に代えてLWG宇佐美貴史(デュッセルドルフ)を投入するが流れは変わらない。5分のアディショナルタイムに入った後、相手GKのパスミスをきっかけとして直接FKを得ると、この試合でもFW中島翔哉が躍動。しかし放ったキックのこぼれ球に久保が反応しきれず試合終了のホイッスルが鳴った。
まずはこの試合の総括として評価すべきポイントと、改善ポイントを1つずつ述べてみたい。



【ハーフスペースプレイヤー中島翔哉の存在】
終盤からの投入にもかかわらず、LSB長友佑都、MFマリノフスキー(ヘンク/ベルギー)と共にペナルティーエリアへ通したボールが「2」を記録。出場時間を比較すれば単独で異次元のチャンスメイク力を誇っていた。動きで規定する他無いが、小林悠と中島翔哉だけが、ウクライナのハーフスペースを上手く突いていこうとアタッキングを試みていた。
平均ポジションでもそれは見て取れる。上記画像の通り後半から出場した小林、中島、久保の3名だけがウクライナディフェンス裏に平均値が算出されており、彼らが前線から押し込んだこと、また前半ウクライナがいかに日本陣内にポゼッションしていたかがわかる結果となっている。

【選択肢を狭める単一縦戦略】
しかし、それは諸刃でもあった。怪我のため出場を回避したCF大迫勇也が試合後「監督に言われたことしかやっていないメンバーがいた」と語った通り、「勝利」「W杯での結果」の前に「ハリルホジッチに気に入られるためというような顔色伺いのサッカー」に終始した選手は一人二人ではなかったように思う。
「縦に速く」といえば聞こえはいいが、早めのプレッシングや高いポジショニング含めて必ずしも正しいアクションはサッカーにおいて存在しない。マリ戦では大迫の釣り出す動きに宇佐美や久保が斜めに入り込んでこなかったという意思疎通に難があったものの、この試合では杉本が大迫の役回りをそのままの代役にはなれず、所在の曖昧さが目立ってしまった。にもかかわらず、志向するサッカーがマリ戦と同様であれば、機能しないのも当然だ。



ここまでくると、我々が「ハリルジャパン」を熟慮する上でいくつかの仮説を定義しなければならない。
1)ハリルホジッチが本遠征までを完全にテストと割り切って考えていた場合
2)テストのはずではなかったが、怪我人の多さからセカンドプランの考慮に務めた場合
3)選択肢を多くもたず、規定のオーガナイズ以外、選手の自主性に任せる場合
いずれの可能性さえあると見立てられるが、どうにも「3」の様相が色濃い。仮に1・2のケースであったならば、それがスタッフや選手にすら届いていないため、結果的に「3」となってもしまう。
ハリルホジッチは縦に速いサッカーを展開しようとしており、サイドからのクロスやロングボールに有効性を見出している。しかし、大迫も絶対ではなく、フィードや相手守備陣を踏まえても緩急をつけるべきと主張する選手側はやや対立の構図が見える。ただし、ハリルはこれを「悪し」とは見ておらず、「縦」の解決策を提供しているのだから、フェイクや緩急は自ら突ける必要を暗に示唆している。試合で、対人でプレッシャーがかかる際の選択肢として「試合の勝利」と「代表メンバー獲得」のニ軸を迫られた際で各々の考え方は悟られてしまうが、それだけにわかりやすくもある。
セレクショニスタとして、縦突破型選手構造のスタイルは提示しているため、この部分において役目は果たし、相手とのギャップを突く上でのメソッド提示までは行えているから、代表監督としての役回りはこれまでのところ問題なく遂行できているが、明確な結果がなく、選手たちの状況を汲み取れていない点はリーダー的ポジションとしての及第点には至らない。

3月の選手選考としては、現状このようなクラス分けになるのだろう。
ラージグループはレッドライン上部までのメンバーまででちょうど35名。各々何に勝ちたいのか、最後の最後は人生観でも左右されるのかもしれない。