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【リバプール】クロップが仕掛けた『Simple the way』

前半9分、MFオックスレイド・チェンバレンが放った地を這う強烈なミドルが対角に決まると、観衆は興奮の坩堝と化した。
リバプールは、アンフィールドに迎えたマンチェスター・シティから31年連続でゴールを奪った瞬間だ。観衆の沸き立つ理由はそれだけでも、スーパーなゴールが決まったからでもなく、相手が今シーズン無敗の雄だったことに起因する。



 無敗の雄、グアルディオラ・マンチェスター・シティをどのようにして、クロップ・リバプールは撃破したか。




前半40分、試合は振り出しに戻る。ペナルティボックスへと侵入したFWレロイ・サネが一瞬でかわして左足一閃。この日も右サイドからチャンスを作り続けていたMFケヴィン・デ・ブライネが真っ先に駆け寄ると、ゴールを讃えた。

後半15分、FWロベルト・フィルミーノがゆるいループで勝越弾を決めたが、マンチェスター・シティにとって心理的ダメージの大きい失点だった。そもそも前半30分に現・グアルディオラ戦術下の肝であるSBファビアン・デルフが負傷交代。代わったSBダニーロがリバプールFWモハメド・サラーを抑え続けていた。目下FWハリー・ケイン(トッテナム)に次ぐ得点ランクに位置するサラーを止めることは必須であり、耐え続けた中で逆サイドのセンターバックが躱されて失点したというのはあまりにも大きなダメージだ。
フィルミーノは、後方からのボールに反応すると、一歩二歩の歩みと同時に一速、二速とギアを上げ、CBジョン・ストーンズがボールに対応する瞬間に奪いきると、やや前目に出ていたGKエデルソンを嘲笑うシュートを決めた。

後半16分にはFWサディオ・マネが続く。エデルソンの重心足が左にかかっているのがわかっていたかのように、パワーショットを右隅へと決めシティを突き放すと、後半23分にはサラーが見る者すべてを虜にするビューティフルゴールで4点目を決めた。
エデルソンがDFの裏に出されたボールを慌ててフィード処理すると、ライナーでトンだボールはセンターサークル付近のサラーに当たる。そのボールを絶妙なドロー回転をかけた弧を描き、ゴールへと吸い込まれた。チーム、サポーター以上に誰よりも喜んだのは監督であるユルゲン・クロップ。序盤戦に同種のゴールをFWウェイン・ルーニー(エバートン)が決めているものの、リーグ年間最優秀ゴールレベルのゴールと捉えてもよいほどだ。

その後一気に攻め立てたマンチェスター・シティは、後半39分にMFベルナルド・シウバ、後半46分にMFイルカイ・ギュンドアンがゴールを奪って反撃。ラストプレイでMFデ・ブライネの右FKからの攻撃が惜しくも脇にそれたところでゲームセット。今季リーグ23試合目でついに黒星がついた。



リバプールのGKロリス・カリウス、シティのGKエデルソンともに、ミドルのスピードボールへの反応が厳しく、想定よりもゴールキーパーのところで防波堤が決壊しているように思えたが、ことは複雑ではない。

 すべてを決したのは戦術面だった。
 ただ、手をこまねいたのではなく眼前の敵とその脇のスペースを効果的に突く行動に終始した。大凡で言えば4バック時のセンターバック脇の縦ライン上のスペースをハーフスペース、両センターバックの間、ピッチ上を18分割した際に呼ばれるこのエリアをZONE14と呼ぶが、これらをさらにドッキングすると、両ペナルティエリアの角にできるクロスエリアがマンチェスター・シティはあいてしまうケースを、クロップは発見した。
 その前に仕掛けていたのがグアルディオラ・マンチェスター・シティだが、
・デルフの負傷
・アンフィールドの空気感
・ゲーゲンプレス
がすべてを変えた。
 しかし、だからといって負け続けるようなチームではない。次の一手がどうでるか、両チームの戦術に期待したい。