日本代表は8月31日、ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選オーストラリア戦に勝利し、本大会出場を決めた。戦前、W杯予選におけるオーストラリア戦は未勝利、負ければバヒド・ハリルホジッチ代表監督の解任論が飛び出すなどネガティブな報道が続いたが、大事な一戦で抜擢されたFW浅野拓磨(シュツットガルト)、MF井手口陽介(ガンバ大阪)らが指揮官の戦術を体現し、見事勝利を収めた。
これまで難敵オーストラリア相手に辛酸を嘗めるケースが多かった日本だが、なぜ今回の重要な一戦において快勝を収めることができたのか。独自に集計した試合のスタッツから分析していく。
その屈強な体躯から、これまではフィジカルで押してくるケースが多かったオーストラリアだが、2013年のアンジェ・ポステコグルー監督就任後は徹底してパスをつなぐサッカーを展開していた。
今回の試合でも同様で、試合全体で67%ものポゼッション率を記録するなど、かつてとは異なる姿を見せた。特に前半41分、浅野にゴールを決められて以降は70%もの支配率を誇っていたことからも、ボールを保持することで自分たちが主導権を握る時間を長くし、反撃の機会を窺っていたことが分かる。
逆に日本は、現在のオーストラリアの戦術を綿密なスカウティングによって読み切っていたのだろう。だからこそ、スタメンからゲームメイクに長けたプレーヤーを外し、ボール奪取能力に秀でたMF山口蛍(セレッソ大阪)や井手口を配置。奪った後のショートカウンターで生きるスピードを備えた浅野とFW乾貴士(エイバル)を両ウイングに据えて、得点の機会を得る布陣を構成していた。
2点目のシーンでは、乾と交代でピッチに入ったFW原口元気(ヘルタ・ベルリン)が相手からボールを奪い、井手口につないだことでチャンスが生まれた。
前述したポゼッション率が示す通り、オーストラリアが試合を支配するものの、日本は32回も相手ボールをインターセプトし、攻撃へと転じた。オーストラリアの12回と比べると、その狙いは一目瞭然で、ディフェンスラインだけでなくMF長谷部誠(フランクフルト)、山口、井手口が中盤の高い位置で奪い切ることで攻撃へとつなげていた。
ボールを奪われた後のオーストラリアは、日本をフィジカルで止めてしまう。しかし、ファウルとなるケース(12回)が多く、日本にFKを安易に与えるシーンが散見された。
パスでつなぐオーストラリアに対し、日本の狙いは相手3バックの両脇や裏と明確だった。 試合内でのキーパスは井手口がダントツの数値を叩き出し、クロスやロングボールも多用していたことが分かる。奪ってからいかに素早く相手陣内へと入り込み、得点チャンスを窺っていたかが分かる。
オーストラリア戦は相手にポゼッションさせるサッカーで勝利を得た日本。スカウティングが上手くハマったパターンだが、W杯までには自分たちの攻撃と守備の型を複数用意しておきたい。長谷部や香川真司(ドルトムント)といった主力が不在となるサウジアラビア戦は、普段と異なる戦術で臨む可能性が高い。「第3章のスタート」と銘打ったハリルホジッチが、どのような戦術で選手たちを送り出すのかにも注目したい。