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決戦直前! データで見る「豪州攻略法」 日本の生命線は“右サイド”にあり

<W杯最終予選で8試合8失点のオーストラリア CKからの失点数はゼロ>

日本代表は8月31日に、ロシア・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選でオーストラリア代表と対戦する。29日に行われたUAEとの試合でサウジアラビアが1-2と敗れたことで、日本はオーストラリア戦を引き分け以下の結果で終えても、最終戦の敵地サウジアラビア戦では引き分けでも突破が決まる状況が生まれた。

だが、ホームで無敗のサウジアラビアが中6日で最終戦を迎えるのに対し、日本は中4日と短いうえに長距離移動のハンデも抱える。勝利が絶対条件ではなくなったとはいえ、厳しい一戦となることは間違いない。6大会連続のW杯出場は、やはりホームで戦えるこのオーストラリア戦に勝って決めたいところ。90分間でゴールをこじ開けるための策を、データを用いながら考察してみたい。

まず【DATA-1】は、最終予選内におけるオーストラリアの失点ゾーンを図解したものだ。8試合で8失点、コーナーキック(CK)からの失点数はゼロと、攻撃以上に守備面でフィジカルの強さや高さが武器となっていることが窺える。

しかし、両サイドから突破された5失点中4点がサイドをえぐられた後、マイナスのクロスをグラウンダーで折り返されて失点している。また日本は前回対戦時、前半4分にFW原口元気が先制点を奪っているが、オーストラリアのMFアーロン・ムーイを密着マークしていたMF香川真司がパスコースを切り、インターセプトした原口がMF長谷部誠、FW本田圭佑と中央を縦につないで決めた得点だった。

<3-2-4-1の導入以降、左サイドから5失点>

[DATA-2]は、オーストラリアがシステムを4-3-1-2から3-2-4-1に変更した第8戦サウジアラビア(3-2)以降の失点ゾーンの図解となる。親善試合ブラジル戦(0-4)を挟み、コンフェデレーションズカップでカメルーン(1-1)、チリ(1-1)、ドイツ(2-3)と計5試合を行った。

攻撃面ではCKからの得点に依存せず、流れのなかからのゴールが増えたというポジティブな傾向が見られたが、守備面では功を奏した部分があるとは言い難い。もちろん、対戦相手がブラジルやドイツなど強豪国が多かったというのは、オーストラリアにとって一つのエクスキューズとなる。それでもブラジル戦以降の4試合で、左サイドから5失点を喫している点は、日本として注目したいポイントだ。

得点力向上に主眼を置き導入されたオーストラリアの新システム「3-2-4-1」だが、ウイングバックが高めのポジションをとるが故に、守備面ではどうしても穴が生まれてしまう。象徴的だったのが、コンフェデ杯のドイツ戦における3失点目のシーンである。

【DATA-3】で図解した通り、ドイツに狙われた左サイドにこの場面でも両チームの選手が密集。オーストラリアは人数を多く割き対応したものの、ボランチと左ストッパーが潰しに行ったことで、本来守るべきポジションにスペースが生まれてしまう。これに気づいたムーイが埋めにかかるも、ドイツのDFキミッヒからのパスにMFゴレツカが走り込んで、そのままゴールを決められてしまった。

3バックにして攻撃に人数をかける反面、試合を見る限りは守備戦術が整備しきっているとは言い難く、日本としてはカウンターからの横方向への揺さぶりなど、多くのアクションを行いながらオーストラリア守備陣を瓦解させたいところだ。





<“右で崩す”ハリルJ、キーマンは不動の右SB>

一方で【DATA-4】の通り、W杯最終予選での日本の得点パターンは右サイド、すなわち対戦相手の左サイドを突いた攻撃に偏重していることが窺える。W杯予選序盤はMF清武弘嗣、後半はFW久保裕也によるチャンスメイクが多く、フィニッシャーは抜け出した久保や、逆サイドの原口が務めるケースが多かった。4年前のザッケローニ体制下では「左でチャンスを作り、右で仕留める」パターンが確立されていたが、ハリルホジッチ体制では右サイドが攻撃の主戦場となっている。

そこで浮かび上がってくる攻撃のキーマンが、オーストラリア戦でも右サイドバックを務めることが予想されるDF酒井宏樹だ。酒井は清武、久保とならび、W杯最終予選でチームトップの3アシストを記録。オーストラリアはピッチを幅広く使い、日本のサイドバックを孤立させるような策を講じてくるだろうが、現状のオーストラリアのウイークポイントかつ日本のストロングポイントである“右サイドの主導権争い”が、試合の行方を大きく左右することは間違いない。
その熾烈な戦いを制した酒井宏がサイドをえぐって中央に折り返すクロスは、日本をW杯出場の歓喜へと導く美しい放物線となるはずだ。

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images