本来とは異なる趣旨
プロならば誰しもが目指す…?
OMF本田圭佑(ACミラン)につづいて、RSB内田篤人(シャルケ04)、LSB長友佑都(インテル)、CB吉田麻也(サウサンプトン)、ST岡崎慎司(レスター)らが続々と海外へ飛び立った2010年前後。
スパンが短くなり、今度はロンドン世代のCF大迫勇也(ケルン)やST武藤嘉紀(マインツ)らが2015年前後に飛び立った。
次世代の旗手は誰か。東京世代を牽引する上で一つ上のリオ世代や、リオ世代にほど近いロンドン世代のCMF柴崎岳にもその可能性はあると思っていた。
ただ、長く海外でプレーできている選手と短期で帰ってきてしまう選手には、「コミュニケーションの壁」がどうしても付きまとう。もしくは、「食事や環境の壁」もそう。
CB槙野智章(現・浦和レッズ)、ST柿谷曜一朗(現・セレッソ大阪)らはまさにコミュニケーションにぶち当たってしまったし、WG永井謙佑(現・FC東京)、ST大前元紀(現・大宮アルディージャ)らは出場機会が得られないために早々と引き上げた。CF伊藤翔(現・横浜F・マリノス)やCF指宿洋史(現・アルビレックス新潟)もJリーグを経ることなく海外へ渡ったが実績は稼げず。プロなら誰しも、『レベルの高い舞台』を目指す…というわけではない。どれだけ素晴らしい活躍をしていたとしても、環境が変わっても継続できるかはわからない。
二流は結果も残せない。
一流はいい環境では結果を残すことができる。
超一流はどんな状況でも結果を残すことができる。
そんな言葉もあるし、高みを目指したくなる気持ちもわかるのだけれど…
大別する2つのパターンに加わる形
【コミュニケーション型】は、
CB宮本恒靖(現・ガンバ大阪U23監督)CMF中田英寿、LSB長友佑都、GK川島永嗣(メス)、DMF長谷部誠(フランクフルト)、ST榊翔太(SVホルン)ら、チームに溶け込んだりチームメイトとフレンドシップを取ることが上手かったりする選手たちだ。もしくは、圧倒的な語学力で監督やスタッフに認められるというパターンもある。
海外移籍未経験者であれば、CB丹羽大輝(ガンバ大阪)・CF鈴木優磨(鹿島アントラーズ)・高橋秀人(ヴィッセル神戸)あたりはその可能性も大きいだろうし、東京世代まで落とし込めばST久保建英(FC東京U18)はもちろん、ST中村駿太(柏レイソルU18)やCMF平川怜(FC東京U18)あたりも大丈夫だと思う。
もちろん、CMF伊藤壇(ポンタレステ/東ティモール)のような信じられない経験値をもつような選手は格が違う。
次に【圧倒的な個】だが、
セルティック時代の中村俊輔はわかりやすい話だけれど、彼は彼で『FK』というわかりやすさがあった。
スピード :WG宮市亮(ザンクトパウリ)、ST浅野拓磨(シュツットガルト)
ハイタワー :ハーフナーマイク(ADOデンハーグ)
起点・コネクト:CMF香川真司(ドルトムント)
前線での献身性:ST岡崎慎司
テクニック :OMF松井大輔(現・ジュビロ磐田)・田中亜土夢(ヘルシンキ)・SMF乾貴士(エイバル)OMF清武弘嗣(現・セレッソ大阪)・ST大迫勇也
そのようなスキルででも、圧倒的といえるようなレベルを見せることができれば選手価値は向上し、異言語でもわかってもらえる。上述しなかったパターンとしては、RSB酒井宏樹(マルセイユ)は面白い。ハノーファー加入当時はRSBからの強烈なアーリークロスが代名詞だったが、欧州では一旦それを封印し、リーグや相手に合わせるように自らをカスタマイズした。同様に、現在はハンブルガーで主将を務めるDMF酒井高徳も基本はSBだが、チーム内ではDMFのポジションとして奮闘しカスタマイズしている。このカスタマイズするのも一つの能力だし、本来のポジションや役回り、監督の信頼をある程度得られてから隠し持ってた武器を発動させるというのもパターンの一つだろう。
海外移籍未経験の国内選手ならば、CB植田直通(鹿島アントラーズ)、OMF鎌田大地(サガン鳥栖)やOMF三好康児(川崎フロンターレ)、LSB小川諒也(FC東京)、ST小川航基(ジュビロ磐田)あたりはその可能性があるだろうか。
また、【国内では得られない経験を】という新ジャンルも昨今では現れるようになった。
MLSや欧州の下部リーグ、アジアの各国、南米など、留学するようなタイプから単身乗り込む形まで本当に様々なケースが出てくるようにもなったが、その中でも成功する選手に共通するのは『適応能力』とも言える。
失敗してしまうパターン
ST柳沢敦(現・鹿島アントラーズコーチ)・SMF水野晃樹(現・サガン鳥栖)や上述した柿谷・山口らがそうだった。もしくは、【圧倒的な個】を持っていた永井謙佑も、戦術対応ができなかった点(2016名古屋でも似たようなことはあったが)では比類される。国内ですらコミュニケーション面で厳しい部分のある選手や、食べ物に順応できない選手は海外移籍しないほうが身のためである。
CF久保竜彦(引退)・CMF遠藤保仁(ガンバ大阪)らがその系譜であり、飛行機が苦手だったり、水や油に馴染めなかったりというのがあるそうだ。なんとなくだが、大島僚太(川崎フロンターレ)や遠藤航(浦和レッズ)も食でやられそうな感じはある。…ここはあくまで推測の範囲だけれど。
柴崎岳のケースと改善点
高校時代から何かとメディア露出してきたほどのスタープレイヤーである柴崎岳として、日本代表の強化部までもが現状状態をきくために渡欧している現状も考えれば、未然に防ぐも出来たのではないかと思う。
代表クラスに値する選手の移籍は、欧州では当該選手のみならず以降の若手選手ひいては日本人選手の代表としてみなされるため、今後の欧州移籍に関するスムーズさが大きく異なってくる。ただでさえ最近は出戻りのケースも多くみられたため、2010年ころから続いた欧州移籍のケース自体に減少傾向がみられている。
コミュニケーション面に問題はないか、当該選手の移籍先における言語獲得はいかがなものか、食やアレルギー面での問題はどうか、代表やクラブで海外遠征の際に問題となるような食材等はなかったか。そのあたりのケアも必要となってくる。おそらくこのあたりの話は、トッププロ選手以外の海外移籍を手がけるユーロプラスインターナショナルにも小さくない影響を与えるだろう。
2017年の海外移籍
結果として彼らがプレイヤーとしての価値を向上させ、ヨーロッパで活躍すること自体が日本人プレイヤーの価値を高めることとなる。彼らに見初められて初めて欧州での地位が発生する。試合に出られなければ、価値の有無どころか発生すらもあり得ない。そのためには、国としてクラブとして指摘していくことが重要であり、家族や友人が本気で心配してあげることで移籍の障壁を取り除くことができるのであれば、どこまででも親身になってあげることは超重要なことなのだと思う。