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▼いよいよ2021年6月11日に開幕するEURO 2020。本来は2020年に開催予定だったEUROだが、新型コロナウイルスの世界的な大流行に伴い1年延期。22年にカタールW杯が控えている中、その1年前に開催されることとなった。
▼EUROに限らず国際大会というのは新たなスターが誕生する大会である。2016年に行われた前回大会でポルトガル代表の優勝に大きく貢献したレナト・サンチェスやラファエル・ゲレイロはそれぞれバイエルン、ドルトムントへと引き抜かれている。
▼そこで「Evolving Data」ではEURO開幕直前に今大会のブレイク候補を独自に厳選!まずはグループA~グループCに登場するチームの中で注目する8選手を紹介したいと思います。
《EURO 2020の大会概要とグループステージ順位表》
《EURO 2020の試合日程と試合結果・ハイライト》
● ウグルカン・チャクル(Ugurcan Cakir)
代表:トルコ代表
Pos:GK
生年月日:1996/4/5(25歳)
身長/体重:191cm/78kg
所属:トラブゾンスポル(トルコ)
2020-21シーズン:38試合36失点(スュペル・リグ)
▼今大会のダークホース候補の呼び声高いトルコ代表。これまでのトルコ代表はガラタサライ、フェネルバフチェ、ベシクタシュ、イスタンブール・バシャクシェヒルといった国内の強豪クラブの中心に構成されていたが、今大会は主力の大半が国外の強豪クラブでプレーしている選手である。エースのブラク・ユルマズ(リール)やハカン・チャルハノール(ACミラン)、ジェンギズ・ウンデル(レスター)といった選手は所属クラブで国際経験が豊富だ。そして、国際大会を勝ち上がるためには守備陣の安定が不可欠である。現在のトルコ代表は守備陣に非常にいい選手が揃っておりRSBのゼキ・チェリク(リール)を始め、チャグラル・ソユンチュ(レスター)、オザン・カバク(リバプール)、メリフ・デミラル(ユベントス)、カール・アイハン(サッスオーロ)のCB4枚は今大会でもトップクラスの選手層である。
▼そしてトルコ代表で最も注目している選手が正GKのウグルカン・チャクルだ。2020-21シーズンから所属するトラブゾンスポルで主将を務めるチャクルは、21年の3月から行われているカタールW杯予選から正GKに定着。以降EURO開幕前の時点で4試合に先発出場しており、いずれも無敗だ。4-2と勝利したオランダ戦ではPKストップを含む7セーブを記録した。代表キャップも8試合と代表経験は少ないものの、38試合で36失点、13試合でクリーンシートを達成したリーグ戦での活躍を踏まえればスタメン起用に異論の余地はないだろう。
▼EURO開幕以前、何なら昨夏より移籍市場の注目株であったチャクル。21年4月や5月の時点ではドルトムントが獲得レースをリードしていると噂されていたが、シュツットガルトからスイス代表GKグレゴール・コーベルを獲得したためドルトムント行きの可能性はかなり低くなった。ウーゴ・ロリスの後釜を探すトッテナムやアリソンの控えを探すリバプールなど多くの強豪が獲得に興味を示しており、EUROの活躍次第では他のトルコ代表の選手のように国外の強豪へとステップアップする可能性もあるだろう。
● マヌエル・ロカテッリ(Manuel Locatelli)
代表:イタリア代表
Pos:DMF/CMF
生年月日:1998/1/8(23歳)
身長/体重:184cm/75kg
所属:サッスオーロ(イタリア)
2020-21シーズン:33試合4ゴール3アシスト(セリエA)
▼まさかのロシアW杯予選敗退からおよそ3年、ロベルト・マンチーニ監督の下でイタリア代表は復活の兆しをみせている。18年5月に監督に就任以降、イタリア代表はEURO開幕前までに30試合を戦い21勝7分2敗と好成績を収めている。19年に行われたEURO予選は全勝で突破、21年3月から行われているカタールW杯予選でも3連勝スタートを切っており、連続無敗記録は27試合に更新中である。
▼まさに絶好調と言っても過言ではないイタリア代表だが、EURO開幕前に大きな不安要素を抱えている。それが中盤の選手の相次ぐ負傷離脱だ。リーグ終盤に膝を負傷したマルコ・ヴェラッティ(パリ・サンジェルマン)は代表メンバーに選出されてはいるが、EURO開幕前の時点では試合に出場出来る状態にはなっていない。また、26名の代表メンバーに選出されていたステファノ・センシ(インテル)とロレンツォ・ペッレグリーニ(ローマ)の2人が、EURO開幕直前に負傷のため代表から離脱。代わりにマッテオ・ペッシーナ(アタランタ)とガエターノ・カストロヴィッリ(フィオレンティーナ)が追加招集されたがいずれも代表経験はかなり浅い。
▼この危機的状況で大きな期待が寄せられているのがマヌエル・ロカテッリ(サッスオーロ)だ。直近のW杯予選ではジョルジーニョ(チェルシー)が不在だったため4-3-3のアンカーポジションで起用されていたロカテッリだが、今大会では一列前のインサイドハーフでの起用が濃厚となっている。豊富な運動量でハードワークを厭わないニコロ・バレッラ(インテル)と共に守備時は中盤で汗かき役となり、ボール保持時は攻撃にリズムを与える役割を担うことになるだろう。また、所属するサッスオーロのロベルト・デ・ゼルビ監督が2020-21シーズン限りで退任したこともあり、サッスオーロのマネジメント陣は今夏のロカテッリのステップアップを示唆している。
● ユーリ・ティーレマンス(Youri Tielemans)
代表:ベルギー代表
Pos:CMF
生年月日:1997/5/5(24歳)
身長/体重:176cm/72kg
所属:レスター(イングランド)
2020-21シーズン:38試合6ゴール4アシスト(プレミアリーグ)
▼今大会の優勝候補に挙げられるFIFAランキング1位ベルギー代表。ケビン・デ・ブライネ(マンチェスター・シティ)やロメル・ルカク(インテル)といった選手はまさにキャリアの全盛期を迎えており、今大会のパフォーマンスに注目が集まる。一方でエデン・アザール(レアル・マドリード)や32歳を過ぎたCB陣(トビー・アルデルヴァイレルトやヤン・フェルトンゲン、トーマス・フェルマーレンら)はキャリアの下降線を辿っており、次の世代の選手があまり出てきていないのは少々気がかりではある。実際、今大会の代表メンバーで25歳以下の選手は26名中わずか4名だ。
▼殆どの代表選手がキャリアの全盛期を迎えている中で、今後さらに成長しワールドクラスの選手になることが期待されているのが24歳のユーリ・ティーレマンスだ。アンデルレヒトで史上最年少キャプテンを務めるなど10代の頃から注目されていたティーレマンス。特に直近のレスターでのパフォーマンスは際立っており、先日行われたFAカップ決勝ではチェルシー相手に決勝点となる見事なミドルシュートを決め、FAカップ初優勝となったレスターの歴史に名前を刻んだ。その高いパフォーマンスはベルギー代表でも披露しており、直近の全10試合に出場。代表でも絶対的な信頼を集めており、CL決勝で負傷したケビン・デ・ブライネが開幕戦を欠場することが濃厚となっている中でそのパフォーマンスに注目が集まる。また、以前よりメガクラブへのステップアップの噂が耐えない。レスターとの契約延長交渉中の報道もあったが、これまでのレスターの歴史を考えると設定している移籍金を満額支払うことが出来れば移籍の可能性もあるだろう。しかし、そもそもレスターはモナコから約4000万ポンドの移籍金で獲得しており、現状の契約は2023年夏までとなっているとはいえ安売りすることは考えにくい。
● ヨナス・ウィンド(Jonas Wind)
代表:デンマーク代表
Pos:CF
生年月日:1999/2/7(22歳)
身長/体重:190cm/82kg
所属:コペンハーゲン(デンマーク)
2020-21シーズン:18試合11ゴール4アシスト(デンマーク・スーペルリーガ)
▼グループAのトルコ代表と同じく今大会の台風の目になると期待されているデンマーク代表。18年のロシアW杯では後に準優勝するクロアチア代表にPK戦の末に敗れたが、直近の国際大会で確かな爪痕を残している。19年に行われたEURO予選では無敗で首位通過。20年に行われたネーションズリーグでは今大会でも同組のベルギーに2連敗を喫するも、強豪イングランド相手には1勝1分と勝ち越している。
▼デンマーク代表の強みは守備陣の安定だ。レギュラーCBのシモン・ケア(ACミラン)とアンドレアス・クリステンセン(チェルシー)のコンビは非常に硬く、仮にシュートを打たれたとしてもカスパー・シュマイケル(レスター)がゴール前に君臨しているためそう簡単には失点しない。実際、2021年に行われたEURO前までの試合では5試合中失点したのはドイツ戦の1点のみと安定した守備が持ち味だ。
▼そして前線にはクリスティアン・エリクセン(インテル)やユスフ・ポウルセン(ライプツィヒ)といった好タレントが多くプレーしているが、特に注目したいのがCFのヨナス・ウィンド(コペンハーゲン)だ。デンマーク中の若き才能が集結しているコペンハーゲンで22歳にして18試合で11ゴールを記録している。現在のデンマーク代表は絶対的なストライカーがおらず、カスパー・ドルベア(ニース)とアンドレアス・コルネリウス(パルマ)とウィンドでポジション争いをしている。ポウルセンもストライカーのポジションでプレー出来る選手だが、これまでの起用法を考えると2列目での起用が濃厚だろう。こういった経緯を考えると、大会期間中のパフォーマンス次第では一気にエースの座を掴むことも考えられる。
● サーシャ・カライジッチ(Sasa Kalajdzic)
代表:オーストリア代表
Pos:CF
生年月日:1997/7/7(23歳)
身長/体重:200cm/76kg
所属:シュツットガルト(ドイツ)
2020-21シーズン:33試合16ゴール6アシスト(ブンデスリーガ)
▼ブンデスリーガでプレーする選手が代表メンバー26名中21名を占めるオーストリア代表。その中で今季最もブレイクしたと言っても過言ではない選手がサーシャ・カライジッチ(シュツットガルト)だ。ケガの影響で1ゴールに終わった2019-20シーズンから打って変わり、ブンデスリーガ昇格初年度に16ゴールを奪ったのは大きなサプライズであった。21年1月末からは7試合連続でゴールを記録。20年10月からオーストリア代表に招集されており、21年3月から行われているW杯予選では3試合で3ゴールを記録している。身長200cmの大型ストライカーに要注目だ。
● ユリエン・ティンバー(Jurrien Timber)
代表:オランダ代表
Pos:CB/RSB
生年月日:2001/6/17(19歳)
身長/体重:179cm/79kg
所属:アヤックス(オランダ)
2020-21シーズン:20試合1アシスト(エールディビジ)
● ワウト・ウェクホルスト(Wout Weghorst)
代表:オランダ代表
Pos:CF
生年月日:1992/8/7(28歳)
身長/体重:197cm/84kg
所属:ヴォルフスブルク(ドイツ)
2020-21シーズン:34試合20ゴール9アシスト(ブンデスリーガ)
▼16年のEURO、18年のロシアW杯と2つの大きな大会の出場権獲得を連続で逃していたオランダ代表が久々に国際大会に戻ってくる。19年に行われたEURO予選はロナルド・クーマンが率いていたが、20年夏にバルセロナの監督に就任したことに伴い退任。後任に準優勝した南アフリカW杯の時にアシスタントを務めていた経験があるフランク・デ・ブールが就任した。
▼EURO予選で6試合5ゴール8アシストと大活躍したメンフィス・デパイ(リヨン)やジョルジニオ・ワイナルドゥム(パリ・サンジェルマン)、フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)といった中盤より前の主力選手が健在な一方、GKとDFにはやや不安が残る。本来正GKを務めることが濃厚だったヤスパー・シレッセン(バレンシア)だがEURO開幕直前に新型コロナウイルスに感染し代表を離脱。2020-21シーズンのエバートン戦で前十字靭帯を断裂したフィルジル・ファン・ダイク(リバプール)も間に合わず、代わりに守備の柱と期待されていたマタイス・デ・リフトも軽症ながら開幕直前に鼠径部を負傷した。
▼EUROに間に合わなかったファン・ダイクと負傷したデ・リフトに代わりに穴埋めが期待されるのが、今大会前にオランダ代表に初招集された19歳のユリエン・ティンバーだ。所属するアヤックスではスピードと対人戦の強さが評価されRSBとして出場する機会が多いが本職はCBの選手である。オランダ代表は大会直前になってシステムを3バックへと変更しており、ボールを持ち運ぶことが出来るティンバーが重宝されることになりそうだ。
▼また、もう1人注目したいのが19年11月以来の代表復帰を果たしたワウト・ウェクホルストだ。ヘラクレスに所属していた2015-16シーズンから6シーズン連続で2桁ゴールを記録しており、ヴォルフスブルクに加入して以降もブンデスリーガで17ゴール、16ゴール、20ゴールと得点を量産し続けている。しかし、オランダ代表のキャリアは恵まれておらず、18年3月の代表デビュー以降21年3月までわずか4試合の出場に留まっていた。代表入りは困難かと思われたが、EURO開幕前の5月に19年11月以来の代表復帰。大会直前の強化試合からウェクホルストの高さを活かすためにもシステムを4-3-3から3-5-2に変更。いずれの試合でも先発出場しており、ジョージア戦で代表初ゴールを記録した。オランダの攻撃陣はデパイとウェクホルストの2トップに要注目だ。
● アナトリー・トルビン(Anatoliy Trubin)
代表:ウクライナ代表
Pos:GK
生年月日:2001/8/1(19歳)
身長/体重:199cm/88kg
所属:シャフタール・ドネツク(ウクライナ)
2020-21シーズン:21試合15失点(ウクライナ・プレミアリーグ)
▼ウクライナ代表とシャフタール・ドネツクで長らく変わることなかったポジションで今、世代交代が起こっている。そのポジションがGKだ。ウクライナ代表で97試合、シャフタール・ドネツクで公式戦467試合に出場している36歳のアンドリー・ピアトフが2020-21シーズンからクラブで控えに回り、代わりに19歳のアナトリー・トルビンが多くの出場機会を得ている。2020-21シーズンは公式戦30試合に出場し、UEFAチャンピオンズリーグにも5試合出場した。また、代表でもW杯予選1試合とEURO開幕直前の1試合に出場している。ウクライナ代表はEURO開幕直前の強化試合で招集した3人のGKを1試合ずつ起用しており、本大会で誰がスタメンの座を掴むのかがわからない状態だ。背番号通りの序列であれば背番号「1」のヘオリー・ブスチャン(ディナモ・キエフ)を1番手として起用するだろうが、19歳を国際大会で先発起用する可能性も十分にあるだろう。ウクライナ代表のGK争いに注目したい。