ガーナの難民キャンプ出身の19歳がドイツを代表する強豪バイエルンで躍動している。2018年に当時18歳でカナダ年間最優秀選手に選出され、カナダ代表史上最年少デビューやCONCACAFゴールドカップ史上最年少ゴールなどこれまで様々な『最年少記録』を更新してきた期待の神童は、バイエルンの先輩ダビド・アラバのようにWGからLSBへと転向し大きな成功を収めている。
2019-20シーズン、第28節ドルトムント戦におけるアーリング・ホーランドとのマッチアップの際に記録した時速35.3kmを記録。このプレーは現役選手を初め、世界中の人に衝撃を与えた。彼のスプリント能力と運動量の多さは既に世界屈指であり、2019年12月時点では90分間におけるスプリント回数は48.5回、90分間における走行距離は約13.3kmを記録している。
本格的なLSB転向から1年あまりのデイビスだが、既に世界最高のLSBに推す声も少なくなく、そのポテンシャルは計り知れないものとなっている。それではデイビスのこれまでの人生とキャリアの道程を振り返っていこう。
- 【選手紹介】アルフォンソ・デイビスのプレースタイルと選手紹介
- 【選手紹介】アルフォンソ・デイビスのプロフィール
- 【ヒストリー】幼少期からプロ選手になるまで
- 【ヒストリー】15歳でMLSデビュー
- 【ヒストリー】カナダ代表史上最年少デビュー&ゴールドカップ得点王
- 【ヒストリー】18歳でカナダ年間最優秀選手を受賞し、バイエルンへステップアップ
- 【ヒストリー】2019-20シーズン、世界屈指のLSBへと成長
- 【ディスコグラフィー】紹介動画
- 【ディスコグラフィー】年度別出場成績
- 【ディスコグラフィー】パラメータ・能力値※制作中
- 【年度別来歴】プロキャリア※制作中
- 【年度別来歴】アマチュア時代の評価※制作中
- 【年度別来歴】代表歴※制作中
- 【選手評価】スタッツ※制作中
- 【選手評価】市場価値※制作中
- 【選手評価】能力値変遷※制作中
アルフォンソ・デイビスのプレースタイルと選手紹介
● ブンデスリーガ屈指のスピードスター。元々はWGの選手だが、バイエルンで守備陣の負傷離脱が相次いだためLSBでプレーする機会が増えている。CBとしてプレーする先輩アラバのコーチングもあり、あっという間にブンデスリーガ屈指のLSBに成長を遂げた。
● 様々な最年少記録保持者である。主な記録はカナダ代表最年少出場&初ゴール、CONCACAFゴールドカップ最年少ゴール、最年少でのカナダ年間最優秀選手賞を受賞など。
● バンクーバー・ホワイトキャップス時代は元日本代表FW工藤壮人と同僚だった。
● ガーナの難民キャンプ出身。「正直なところ、当時のことは覚えていないんだ。」とギャリー・リネカーとの対談で明かしている。現在は難民支援を行う活動にも取り組んでいる。
● 2019-20シーズン、ブンデスリーガ第28節ドルトムント戦において、ドルトムントFWアーリング・ホーランドの決定機を阻止した際に最高時速35.3kmを記録。このプレーにロメル・ルカクは「彼はチートだ。」と反応。レベルが高すぎる19歳同士のマッチアップに世界中が驚いた。
● 大舞台でも結果を残しており、2019-20シーズンUEFAチャンピオンズリーグ決勝1回戦1st legチェルシー戦では、相手守備陣を高速ドリブルで抜き去りレヴァンドフスキのゴールをアシスト。このプレーに英メディアは「ウサイン・ボルトのフットボールバージョンをみせた」と大絶賛。
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? Phonzie#UCL | @FCBayernEN pic.twitter.com/Pn8yx8ESz7
— UEFA Champions League (@ChampionsLeague) February 29, 2020
● 陽気な性格の持ち主としても知られ、自身のTikTokアカウントではクリスティアーノ・ロナウドやキリアン・ムバッペ、トーマス・ミュラーといった選手のゴールパフォーマンスのモノマネを披露している。
● ガールフレンドはカナダ女子代表のエースででパリ・サンジェルマンでプレーするジョーディン・ウイテマ(Jordyn Huitema)。デイビスより1学年下のウイテマは、既にA代表で30試合以上に出場。2019年に行われた女子ワールドカップでは背番号「9」を着用した。東京五輪に向けた北中米予選では大会得点王に輝いている。
この投稿をInstagramで見る“I like Minnie’s hands better, they have a bow….AND SPARKLES”. -Alphonso
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(Jordyn Huitemaのインスタグラムより引用)
アルフォンソ・デイビスのプロフィール
選手名 | アルフォンソ・デイビス(Alphonso Davies) |
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ポジション | LWG/LSB/RWG |
出身 | ガーナ/ブドゥブラム |
年齢/生年月日 | 19歳/2000年11月2日 |
身長・体重 | 181cm・72kg |
現所属チーム/背番号/利き足 | バイエルン(ドイツ)/19/左足 |
代表/デビュー年 | カナダ代表/2017年6月14日 |
過去所属 | バンクーバー・ホワイトキャップス(カナダ) |
クラブ・代表タイトル | ブンデスリーガ:1回、DFBポカール:1回(バイエルン) |
個人タイトル | CONCACAFゴールドカップ得点王(2017) CONCACAFゴールドカップ ベスト11(2017) CONCACAFゴールドカップ最優秀若手選手(2017) カナダ年間最優秀選手(2018)など |
幼少期からプロ選手になるまで
アルフォンソ・デイビスは2000年11月2日にガーナの難民キャンプである「ブドゥブラム」で生まれた。両親は共にリベリア人で、第二次リベリア内戦から逃れるために1999年にガーナの難民キャンプへと避難していた。デイビスが5歳の時、家族はUNHCRの第三国定住の制度を使いカナダへと渡り、オンタリオ州のウィンザーに住んだ。1年後、アルバータ州のエドモントンに引っ越した。ノースマウント小学校に通い始めたデイビスはこの学校でサッカーと出会う。その後、マザー・テレサ・カトリック学校に転校したデイビスは、同学校でサッカーにおいて他生徒を圧倒。学校にいた指導者のお陰で上達したデイビスは、その後地元のサッカークラブのアカデミーに所属した。
エドモントンで大活躍していたデイビスの名はバンクーバーまでに知れ渡り、14歳になった15年にバンクーバー・ホワイトキャップスからオファーが届いた。エドモントンとバンクーバーは1000km以上離れており、両親は14歳の息子を遠く離れたバンクーバーに送ることは消極的であったが、サッカーの環境等を考えホワイトキャップスのユースに入団させることに決めた。
15歳でMLSデビュー
2016年2月にMLSの2部相当にあたるUSLに所属するバンクーバー・ホワイトキャップス2と契約を結んだ。当時デイビスは15歳と3ヶ月であった。同年6月に行われた試合で初ゴールを記録し、USL史上最年少ゴール記録を更新した。
セカンドチームでの活躍もあり、7月にはトップチームに昇格。7月17日に行われたオーランド・シティ戦でトップチームデビューを果たし、MLS史上2番目に若いMLSデビューとなった(最年少は14歳と10ヶ月でデビューしたフレディー・アドゥー)。2016年9月にはCONCAFチャンピオンズリーグ第3節カンザス・シティ戦でトップチーム初ゴールを記録した。
カナダ代表史上最年少デビュー&ゴールドカップ得点王
続く2017年シーズンは開幕スタメンの座を掴む。その後はしばらく途中出場となる試合が多かったが、持ち前の爆発的なスピードを活かしたプレーで国内だけに留まらず、欧州のビッグクラブからも注目を集めるようになった。
2017年6月に正式にカナダの市民権を獲得したことに伴い、CONCAFゴールドカップ2017に向けた予備登録メンバーに選出。6月14日に行われたキュラソー戦に後半途中から出場し、カナダ代表史上最年少出場記録(16歳と7ヶ月)に更新した。また、7月に行われたCONCAFゴールドカップのメンバーに選出され、初戦のフランス領ギアナ戦の先発メンバーに名を連ねた。この試合で2ゴールを記録したデイビスはチームの4-2の勝利に貢献すると共に、A代表史上最年少ゴールとゴールドカップ史上最年少ゴール記録を更新した。第2節コスタリカ戦でもゴールを記録したデイビスは、チームのベスト4進出に大きく貢献。大会を通じて3ゴールを記録し、大会得点王とベストイレブンに選出された。
18歳でカナダ年間最優秀選手を受賞し、バイエルンへステップアップ
以前はRWGで出場することが多かったデイビスだが、2018シーズンからは最も得意とするLWGでの出場機会が大幅に増えた。以前と比べ先発に名を連ねる回数も増え、開幕戦ではMLS初ゴールを記録。7月にはドイツの強豪バイエルンが完全移籍で獲得したと発表した。契約は2019年1月から2023年6月30日まで。バイエルン加入が決定後もデイビスは高いモチベーションを維持し、MLSで31試合に出場し8ゴールを記録した。また、2018年のカナダの年間最優秀選手にも史上最年少で選出された。
2019年1月、正式にバイエルンに加入したデイビスは加入後2戦目となる第19節シュツットガルト戦でブンデスリーガデビュー。当時、フランク・リベリとアリエン・ロッベンが負傷離脱していたため、同じポジションのデイビスは途中出場から出場機会を多く得た。また、第26節マインツ戦ではダビド・アラバを休養させる目的でデイビスが後半59分からLSBとして途中出場。70分にはレヴァンドフスキのシュートのこぼれ球を詰める形でブンデスリーガ初ゴールを記録した。
2019-20シーズン、世界屈指のLSBへと成長
2019-20シーズンからはダビド・アラバがCBとして起用されるようになり、それに伴いデイビスが本格的なLSBとしてプレーするように。本来、一列前の選手のため相手選手に裏を取られるケースも少なくはないが、持ち前の爆発的なスピードを活かしたカバーリングで経験不足を補っている。また、得意の攻撃面ではそのスピードだけではなく、高い足元の技術を活かした高精度のパスやクロスなどで多くのチャンスを演出している。
いかにハイクオリティのパフォーマンスをみせているかをブンデスリーガ公式サイトがデータを用いて説明している(データは2019年12月のもの。デイビスの最高速度のみ2020年5月ドルトムント戦のものを使用)。
走行距離とスプリント数からわかるように同じポジションの選手を圧倒する運動量を誇っている。データサイト「WhoScored.com」を参照したところ、この記事で紹介されたデータ以外にもデイビスの凄さを証明するデータがあったので紹介しよう(こちらは2019年5月30日現在)。90分平均のドリブル成功数(3回)と90分平均にタックル数(2.3回)はいずれもチームトップであった。
また、かつてWGとしてプレーし、出場機会を確保するためにLSBへと転向した先輩のアラバとは良い関係を築いており、「ピッチ上でどう動くべきかを助言してくれるんだ。彼のアドバイスを聞いているよ。」と語っている。本格的なLSB転向から1年も経たないまま、世界を代表するLSBに上り詰めたアルフォンソ・デイビス。その年齢はまだ19歳とサッカー選手としてのキャリアはこれからだ。計り知れないポテンシャルの持ち主は、一体どれほどの選手に成長するのだろうか。
アルフォンソ・デイビスの動画
《ブンデスリーガ公式『アルフォンソ・デイビスのストーリー~難民からブンデスリーガのスターヘ』》
《バイエルン公式プレー集》
年度別出場成績
ブンデスリーガ 29試合3ゴール
UCL 8試合
DFBポカール 5試合
ブンデスリーガ 6試合1ゴール
MLS 31試合8ゴール
MLS 26試合
MLSプレーオフ 1試合
MLS 8試合
CONCACAF CL 7試合2ゴール