『このチームに来れて本当に良かった。』
2018年10月4日アルビレックス新潟シンガポールの公式サイトでGK野澤洋輔が今季限りで退団することを発表した。清水・新潟・湘南、そして松本山雅FCで2014年まで在籍。その後一旦は引退を考えるも、縁がありアルビレックス新潟シンガポールへ。2018年シーズンまでプレーし、2015年シーズンからの3シーズンで獲得したタイトルは何と13冠。シンガポールサッカー協会を動かすほどの強さを誇った『アルビS』の守護神を務めた男の道程とは。
野澤洋輔のプレースタイルと選手紹介
持ち前のバネを生かしたファインセーブを連発し、抜群の存在感をもつGK。
また新潟の試合時にスタジアムで見られた「わざののざわ」という横断幕や、キックオフ直前にゴールのクロスバーに捕まって行う懸垂はおなじみの光景だった。
野澤洋輔のプロフィール
選手名 | 野澤洋輔|Yosuke NOZAWA |
---|---|
出身 | 静岡県静岡市葵区 |
生年月日 | 1979年11月9日 |
身長・体重 | 181cm・75kg |
現所属チーム/背番号/利き足 | アルビレックス新潟シンガポール/#21/右足 |
過去所属 | 1998-99 清水エスパルス 2000-08 アルビレックス新潟 2009-11 湘南ベルマーレ 2012-14 松本山雅FC 2015-18 アルビレックス新潟シンガポール |
引退を考えた壮絶なリハビリ生活
2010年、湘南でプレーしていた際、椎間板ヘルニアに襲われた。それまで守護神を務めていた野澤だったが、移籍してきた都築龍太に守護神の座を奪われ、自身は18試合の出場、さらにこの年J1へ昇格した湘南は最下位でJ2降格を味わう苦しいシーズンとなってしまう。
さらなる悪夢は2013年。野澤は2012年に松本山雅FCへ移籍。移籍初年度からポジションを掴んでいた矢先、2013年6月23日椎間板ヘルニアが再発。東京都内の国立スポーツ科学センターに泊まり込み、1日8時間に及ぶハードなリハビリに臨み続けたが、一時は左足がしびれて感覚がなく、力が入らない時期もあったという。
「本当にもう一度サッカーができるかどうか不安だった。半分諦めていた時期もあった」と振り返る野澤だったが、周囲のサポート、壮絶なリハビリに耐え、2014年シーズン最終節水戸戦にて約1年ぶりの復帰を果たし、3-0の完封勝利で終えた。
奥山達之からのクリスマスプレゼント
2014年最終節水戸戦で復帰した野澤だったが、このシーズンで契約満了となり松本山雅FCを去った。ケガの影響や年齢を懸念されたためか、スムーズに新天地が見つからず、「引退せざるを得ない」と考えていた野澤に、2014年クリスマスに一本の電話が入る。当時アルビレックス新潟シンガポールの監督をしていた奥山達之からだった。
「シンガポールに来ないか?」
奥山氏とは、新潟時代に同じ練習場を使用していたことから交流があった。アルビレックス新潟に戻れる!とオファーを受け入れた野澤は、異国の地シンガポールへ旅立つことを決心する。
強すぎた『アルビS』
2015年野澤がアルビレックス新潟シンガポールへ移籍するまで、チームはリーグ戦最高成績3位、獲得タイトル1冠(2011年リーグカップ)という状況だった。しかし2015年からそれは一変する。
1年半ぶりの実戦復帰と不安があった野澤だったが、アウェイゲームでも30分~1時間程度しかかからないことや、暖かい気候、GKコーチが不在のため自身で考えトレーニングすることが出来るなどがプラスに働き、野澤は調子を上げていった。
加入した2015年シーズンから野澤は守護神の座を掴み、リーグカップ、シンガポールカップを制覇に貢献した。リーグ戦は3位に終わったものの、失点は27試合を通じてわずか17点。2004年のシンガポールリーグ加入以降最小失点だった。2016年河田篤秀が加入し、攻撃にさらなる厚みを増したチームは、リーグ戦を24試合16勝2分6敗50得点24失点で優勝、さらにリーグカップ、シンガポールカップ、シンガポール・チャリティーシールドを制覇しシンガポール史上初の4冠を達成した。翌年の2017年もこのタイトルをすべて獲得。2年連続の4冠を達成した。このシーズン(2015~17)全てにおいて野澤は守護神としてアルビSのゴールマウスを守り続けた。
このアルビSの強さにシンガポールサッカー協会は、2017年シーズン終了後
【日本人選手】
U-21:全登録選手人数の50%
U-23:全登録選手人数の50%
オーバーエイジ:1人
【シンガポール人選手】
U-23:2人(任意)
という異例の規約を設けた。
それでも2018年シーズン、浅岡大貴・森永卓・星野秀平・熊谷駿らの加入によりリーグ戦無敗優勝、リーグカップ、シンガポール・チャリティーシールドを制覇し、野澤自身も守護神としてチームに貢献した。
「反町イズム」野澤洋輔と反町康治
「ヘタなら走るしかない」
反町康治が口にしていたこの言葉は野澤洋輔の頭に染み付いていた。それもそのはず野澤が新潟・湘南・松本に在籍していた当時の監督が反町だったからだ。頭に体に染み付いていた言葉を、次は伝える側へ。アルビSは、若手選手中心のチーム。その中で最年長の野澤は、多くの選手へ教え、伝えてきた。
「選手としても一人のサッカー人としても成長できている感覚がある」と語る野澤は、次のステージへ足を進める。
新潟・湘南・松本山雅FC、そしてアルビレックス新潟シンガポールを引っ張ってきた2018年38歳を迎えた野澤洋輔。アルビレックス新潟シンガポールの公式サイト退団発表の際のメッセージでこう綴った。
『このチームに来れて本当に良かった。』
松本山雅から離れ、一旦は引退を決意した2014年のクリスマスに一本の電話がかかってきました。当時の奥山監督からの「シンガポールに来ないか?」という電話でした。場所は違えどアルビレックスに戻れる!という気持ちでいっぱいでした。
あれから4年、こんなにも充実した日々を過ごせるとは思っていませんでした。自分一人ではやってこれなかったでしょう。家族の存在は一番の支えでした。そんな環境を用意してくださった是永社長に感謝してます。
若い選手達と共に夢を追いかけ、サッカーに向き合った4年間はタイトルを獲ること以上のものを与えてくれました。サッカースクール、チアスクールのたくさんの子供たちが応援してくれてホームのジュロンイーストスタジアムは最高の雰囲気でした。アウェイにも応援に来てくれる家族も増えました。中には熱狂的なサポーターもいました。GKユニを来てきたのをスタンド中で見つけた時は嬉しかったな。また日本から応援してくれていた方々、シンガポールまで駆けつけてくれたみんな、本当にありがとうございました。
アルビレックス新潟シンガポールファミリー最高!
ありがとうアルビレックス新潟シンガポール。
ありがとうシンガポール。
【獲得タイトル】
・リーグ戦
2016・2017・2018年シーズン
・リーグカップ
2015・2016・2017・2018年シーズン
・シンガポールカップ
2015・2016・2017年シーズン(2018年は開催されず)
・シンガポール・チャリティーシールド
2016・2017・2018年シーズン
涙の「新潟復帰」
「この話をいただいた時は涙を流して喜びました」
2018年10月15日野澤洋輔が来季アルビレックス新潟へ完全移籍での復帰することが発表された。2000年に清水エスパルスから新潟に移籍し、2008年までプレーした野澤は、11年ぶりの新潟復帰となった。
「わざの野澤」と書かれた横断幕、そしておなじみのクロスバーに捕まって行う懸垂をファンは心待ちにしていることだろう。来季40歳という節目の年を迎える野澤のこれからの活躍に期待である。
以下は野澤洋輔のコメント。
「来季より11年ぶりにアルビレックス新潟に復帰することになりました。この話をいただいたときは涙を流して喜びました。またみんなに会えるのが待ち遠しいです。伝えたいことはたくさんありますが、アルビレックス新潟のために、アルビレックスファミリーのために、全力で闘います! 」
野澤洋輔の動画
【アルビSに13冠をもたらした男のセーブ集】#野澤洋輔#アルビレックス新潟シンガポール2015~2018#退団特集その1#Thankyou洋さん@013021 pic.twitter.com/ddvwBUqZEJ
— 浅岡大貴@Dの蹴球物語~ストーリー型ブログ~ (@asaoka_daiki) 2018年10月8日
年度別出場成績
【リーグ戦】24試合
【シンガポールカップ】4試合
【リーグ戦】22試合
【リーグカップ】5試合
【シンガポールカップ】5試合
【リーグ戦】21試合
【リーグカップ】3試合
【シンガポールカップ】3試合
【リーグ戦】27試合
【リーグカップ】4試合
【シンガポールカップ】6試合
【リーグ戦】1試合クリーンシート1試合
【リーグ戦】6試合4失点クリーンシート3試合
【リーグ戦】29試合32失点クリーンシート10試合
【天皇杯】2試合1失点クリーンシート1試合
【リーグ戦】18試合43失点クリーンシート3試合
【リーグカップ】1試合2失点
【天皇杯】2試合
【リーグ戦】51試合52失点クリーンシート21試合
【リーグ戦】2試合5失点
【リーグカップ】2試合5失点
【リーグ戦】10試合23失点クリーンシート2試合
【リーグカップ】2試合6失点
【リーグ戦】27試合51失点クリーンシート3試合
【リーグカップ】6試合5失点クリーンシート3試合
【天皇杯】1試合
【リーグ戦】19試合
【リーグカップ】6試合
【天皇杯】1試合
【リーグ戦】44試合
【天皇杯】2試合
【リーグ戦】43試合
【天皇杯】1試合
【リーグ戦】44試合
【リーグカップ】1試合
【天皇杯】2試合