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【飯倉大樹】”Runs Out”からわかる“11人目”のフィールドプレイヤー”

SAITAMA, JAPAN - JANUARY 01: (EDITORIAL USE ONLY) Hiroki Iikura of Yokohama F.Marinos in action during the 97th All Japan Football Championship final between Cerezo Osaka and Yokohama F.Marinos at the Saitama Stadium on January 1, 2018 in Saitama, Japan. (Photo by Etsuo Hara/Getty Images)

 J1のゴールキーパーにおいて「Runs out」という項目で異様とも言える圧倒的な数値を記録している選手がいた。横浜FMのGK飯倉大樹である。
 飯倉という名前を聞いて「Runs out」の意味が分かった。ペナルティエリアから飛び出した回数のことだろうと。

その回数はなんと2位の「約4倍」

 現在の飯倉の「Runs out」の数値は『46回』 2位のC大阪GKキム・ジンヒョンの12回の約4倍の数値を記録している。この数値からどれだけ飯倉が飛び出しているかが伺える。さらに2018年3月31日第5節の清水戦での走行距離は7.39km。90分あたりの走行距離がだいたい4〜5kmと言われ、1試合で3km台に収まることもあるGKとしては異常とも言える数値を連発している。
 J1では現在26節が終了。飯倉はその26試合すべてにフル出場し、45失点・クリーンシート(無失点試合)5試合を記録している。

飯倉自身も「今日もこんなところにいるんだな」

 「ポゼッションサッカー」を基本とし、ハイライン(前衛)システムを敷く横浜FM。しかしそこにはもちろんリスクがあり、前衛システムがゆえフィールドプレイヤー“10人”はポゼッションしつつ前へ、前へという意識からラインを上げる。当然最終ラインの裏は要注意のところだが、そのリスクなくしてポゼッション・ハイライン(前衛)システムは機能しない。その最終ラインに空いた広大な“スペース”を埋め、カバーする事が飯倉大樹の1つの役割である。
 飯倉自身にもリスクはある。2018年4月11日第7節アウェイ広島戦にて試合終了間際カウンターを受け、前に飛び出していた飯倉の頭上を越され失点というシーン。カウンターに弱く、ハイラインシステムの弱点を露呈してしまったシーンであった。
 逆に同年3月18日第4節シーズン初白星となる浦和戦で、裏に抜けたロングボールに反応し飯倉が落ち着いて処理するシーンも見られることから、いわば諸刃の剣と言えよう。
 
 その浦和戦にて飯倉のヒートマップがおかしいと話題になった。元日本代表のGK西川周作と比べても、飯倉の守備範囲の広さが伺える。センターラインを越えているマークは給水の際のマークだったというが、同時にそれほど前にいたということにもなる…

ある漫画のGKとプレースタイルがそっくり!?

 飯倉のプレースタイルはバイエルンのGKノイアー、マンチェスター・シティのGKエデルソンのようにカバーリング・足元の技術を高く要求される。しかし見事に適応できるのは、飯倉自身、幼い頃フィールドプレイヤー(ボランチ)経験者という事も1つの要因だろう。 こんな現代のGKが漫画の世界にも存在している。「Days」というサッカー漫画の東院学園高校GK石動亜土夢(いするぎ あとむ)だ。
 石動は、もともと有名なレジスタでありパスやシュート、ドリブルに優れていた。入部の際「ポジションはどこでもできる」と言い切り、思い切りや判断の早さからGKとしての適性を見抜かれGKに。絶対王者とされている東院学園の守護神を1年から任される逸材であり、作中ではGKでありながら何度も攻撃参加を見せ、主人公のチームを苦しめた。しかし明らかに飛び出しすぎるため、カウンターに弱く、必ずシュートで終わらせるという約束があるという。
 そんな石動の加入で東院学園は「不安定さと新たな可能性」を見出した。

 現代のGKとして守備範囲の広さ、キャッチングだけでなく足元の技術、判断の早さなどは避けては通れないだろう。しかしそれらを兼ね備えた現代GK飯倉。横浜FMのスタイルに適応し、「新たな可能性」を見出した彼の活躍に期待である。