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【Go One’s Football Way】ファン・ウェルメスケルケン際が異種のポジションで見た新たな光景

オランダから代表を見据えるファン・ウェルメスケルケン際

 5月6日、カンブール・レーワルデンを暗い雲が覆った。1部昇格へのプレーオフ第1ステージ第2戦のvsドルトレヒト。1戦目を4-1とアウェーで3点のリードで勝利し、2戦目も前半に先制する展開はカンブールの次戦進出を後押ししているようだった。流れが変わったのは後半だ。リーグ戦は2試合ともに3-0で勝利していたドルトレヒト相手に後半の45分間だけで4失点。延長でも決着がつかず、PK戦の末にカンブールは敗退を喫した。
 左サイドバックを務めたファン・ウェルメスケルケン際は対面のドルトレヒトFWダニー・ベッカーを封じたものの、敗れた事実に何を思ったのだろうか。

 オランダ・マーストリヒトで産まれたファン・ウェルメスケルケン際は両親の仕事の都合上日本に渡る。スーパーサイエンスハイスクールにも指定されている山梨県北杜市立甲陵中学・高等学校に中学受験で入学すると、サッカー面でも頭角を現し、ヴァンフォーレ甲府ジュニアユースに所属した。練習場所は遠く、往復3時間の距離でも厭わずに邁進。高3時はトップチーム昇格の話もあったが、センター試験も受験。しかし、高校卒業後にオランダへと渡り、ドルトレヒトのセカンドチームに所属した。
 一般的に名前が知れ渡り始めたのは2016年3月に行われたU-23日本代表のメンバー発表でポルトガル遠征に招集され、その後のトゥーロン国際にも参加した時期だった。前年にトップチームでデビューし、エールディヴィジ初出場を果たすと、翌年は降格の憂き目にあったチームのスタメンで奮闘。報道されることは少なかったが、2016-17年からの2年間でリーグ戦62試合に出場した。
 レンタルでカンブール・レーワルデンへ移籍することが発表されたのは2017-18シーズンが開幕する直前のことだった。しかし、すぐにチームに溶け込むと開幕スタメンに抜擢。後半アディショナルタイムにレッドカードを提示されて翌節の出場は逃すも、シーズンを通して主力であり続けた。例年と異なっていたのは、右サイドバックだけでなく、セントラルミッドフィールダーやディフェンシブミッドフィールダー、終盤戦には左サイドバックとしての出場にも応えるほどのマルチさを身につけた点だろうか。特に、多くの得点に絡む選手ではなかったが、左サイドバックで出場した試合において2アシストした点も見逃せない成長ポイントに感じられる。

 昨年所属したドルトレヒト相手にリーグ戦では3-0、3-0と勝利し、どちらもフル出場。プレーオフでも2戦連続フル出場したが、最後に元所属先に捲られた。1部での活躍はなくとも2部で着実に力をつける姿に、来季も、またその次も着実な進化を遂げられる存在ではないかと思わせてくれる。6月28日に24歳の誕生日を迎え、4年後のW杯を見据えれば決して若くはない。次に見据える目標は、何か。文武両道で着実に邁進するその背中に着目してもらいたい。