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日本代表、セネガル撃破への攻守戦術論|サイドバック裏のケアとハーフスペースへの配球

 日本時間25日0時ロシアW杯第2節日本代表vsセネガル代表が行われる。共に下馬評を覆してコロンビア・ポーランドに勝利して迎えた第2戦となる。勝利したチームはグループリーグ突破に大きく近づくか、もう一戦の次第においては突破決定となる可能性もある。前日会見において西野朗日本代表監督はコロンビア戦同様のスターティングメンバーを示唆した。すなわち、コロンビア戦同様の”プランA”を選択したこととなる。その選択はセネガルの選択の推論も終えた証左となるのだろうか。では、日本とセネガルは互いにどのような戦術論で戦い合うことになるかを見ていきたい。



 まずは両チームのスタメンから見ていこう。日本代表が選択したプランAを重視すれば、セネガルはポーランド戦とは異なり、4-4-2のプランAではなく、4-2-1-3のプランBとなる可能性がある。意図はFWサディオ・マネの体力が万全ではない点に加え、対戦相手の守備陣に伴った可変性を持ち合わせている点にある。
 セネガルは強力な『個』を有するものの、組織力に関しては戦略的な部分に欠ける。しかし、攻守における一歩二歩の微差は身体能力がカバーする。特に攻撃面が顕著だ。マネに加えFWケイタ・バルデ・ディアオ、FWエムベイェ・ニアン、FWイスマイラ・サールといったサイドアタッカー陣の身体能力を軸に戦術のスパイスを掛け合わせることで爆発力を増大させる。DFカリドゥ・クリバリやMFイドリッサ・ゲイェからの幅のあるロング・ミドルフィードをサイドに展開した段階から始まる。特に今回繰り出してくるだろう”セネガルのプランB”は厄介だ。所属するリバプールでは不動の左ウイングであるマネがトップ下を兼任してくるのだ。




セネガル攻撃陣を止めるための2つのスポットサークル


 セネガル攻撃陣の戦術を左サイドを中心にした形で図解すると上記のようになる。左ウイングがサイドバック裏を突いて片側のセンターバックをずらし、抜いたサイドバックと共に対応してきたところにトップ下のマネがニアに走る。もう片方のセンターバックは中央をケアする必要があるものの、マネかCFかどちらかの対処に迷わせることがこの攻撃論最大の特徴だ。ボランチと連動して防止できたとしても、右ウイングのサールの侵入を防がなければ、いずれにしてもファーががら空きだ。
 または、そのままウイングがクロスを上げた場合は、CFがボールを落とす部分をケアせねばならない。ニアンやケイタ・バルデに対しては酒井宏樹と吉田麻也、サールに対しては長友佑都、マネに対して長谷部誠がマーク対応に失敗しないことが重要となる。


 しかし、先にケアすることも重要だ。フィードコントロールを防ぐために、前線からプレスを掛け続けることはとても重要であり、仮にフィードを放たれたとしても、サイドの侵入ポイントやマネが侵入するポイントを先に閉じてしまえば、決定力を防ぐことが可能となる。
 いずれにしても、ミドルシュートの可能性は残るものの、その点においてのケアはある程度捨てるのも手となる。ミス率改善とミドル無視を主戦にあげるのであれば、日本代表の守護神を川島永嗣から中村航輔に変更するのも手となるかもしれない。




コンダクター柴崎岳/大島僚太が織りなす『5レーン』


 日本の攻撃は、コロンビア同様『ハーフスペース』を活かすことに尽きる。大会全体を通してだが、ブラジルやスペインといった超強豪国をさておけば、クロアチアやメキシコ、日本ほどしか、戦術上のアップデートが遂行されていない。3バック4バックを問わず、DFとボランチ、サイドバックの間にできるギャップラインであるハーフスペースを突くことは特に対欧州以外に対しては心強い施策となる。





 日本が効率的に行える攻撃戦術は3パターンだ。1つ目は香川真司と乾貴士の連携を軸に左サイドを突破するパターンだ。左ウイングレーンで乾がボールをもった際、左ハーフスペースのニアに香川、中央に大迫勇也、右ハーフスペースのファーに原口元気が入る。柴崎岳と酒井宏樹が各ハーフスペースのケアを行う。
 2つ目は、酒井宏樹と原口元気を軸にした右サイドクロスパターン。柏レイソルで築き、フランスで昇華した酒井宏樹のクロスをベースに、ニア:原口、中央:香川、ファーに大迫を配置する。
 3つ目は、中央突破の基本戦術であり、ハリルホジッチ前代表監督がこの国にもたらした相手CBを釣りだし、ウイングをそのポジションに飛び込ませる手法だ。

 パラグアイ戦の勝利と、W杯初戦勝利が自信を強固なものとした。たしかに様々あった代表だが、確実に4年間の積み上げがあったことを知らしめるためには、いつの頃からか用意し始めていた西野監督の下、アップデートされた戦術を披露することでセンセーショナルを引き起こすことが可能となる。