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手放しで喜べない『結果』と選手の強みを活かす『ハーフスペースとワイドアロー』

手放しで喜ぶ訳にはいかない結果

 サッカー日本代表は、日本時間12日夜に行われたロシアW杯前最後の強化試合であるパラグアイ戦で4-2と勝利を収めた。ここまでの無得点を払拭するアグレッシブさを見せ、西野ジャパンは初得点・初勝利のスーベニアを手にし、本大会
の地ロシアへと移動することとなる。


 前半からアグレッシブにプレスを掛け続ける日本代表は、メインプレッサーとしてCF岡崎慎司(レスター)がパラグアイディフェンスラインを嵌める。所属チーム同様の強みで相手を翻弄する岡崎に加え、両ワイドからフィジカルの武藤嘉紀(マインツ)とテクニカル個人技の乾貴士(レアル・ベティス)、さらに狭い位置でこそ活きるスペースクリエイターの香川真司(ドルトムント)が前線で輝けば、山口蛍(セレッソ大阪)は影のデュエルで暗躍し、柴崎岳(ヘタフェ)はコンダクターであり続けた。RSBで不安定さを露呈させた酒井高徳(ハンブルガーSV)がLSBとしてサイドを駆け上がる職人として躍動し、遠藤航(浦和レッズ)が右から全体のバランスを取り続けた。これまでの日本代表が成してきた「ある程度何でもできる感」を捨て、それぞれの個性をベースとした攻守の戦術に切り替えた。
 しかしそれは逆なのかもしれない。スイス戦に臨んだメンバーは全てをベストに出そうとするあまり、互いのアクション自体も被ったことで本来の力は出せずに終わった。だからこそ、部分特化で変容を見せたのが本日のチームだった。




ミドルシュートの本質を見誤った国内組GK

 パラグアイの枠内シュートは2本とガーナやスイスと比べても厚みのある攻撃はなかった。しかし、前後半それぞれの守護神を務めた東口順昭(ガンバ大阪)と中村航輔(柏レイソル)が遠方からの一撃に沈んだ。PK献上やGK・DFの連携ミスによる失点ではなかった。
 今回のパラグアイには、8年前日本代表がベスト8進出を阻まれた強さはなく、南米予選を終了後、協会内のドタバタ劇に巻き込まれた暫定政権かつチーム練習数日と、発足当初の西野ジャパンにも負けない掘っ立て小屋の状態だった。チームとしての強さはなかったが、セットプレーやセカンドアタックに繋げるため、遠方からでもゴールやディフェンダーめがけてシュートを打つ意識が根底から異なることを示していた。
 東口、中村ともに流れの中のコーチングやディフェンダーとの連携はできていたが、「打たれる可能性」を時折失念していたように思う。ただし、ハイボール処理やコーチングを考えれば、中村航輔には川島永嗣(メス)を超える可能性は感じられた。



 どのシーンを振り返っても、GKにとって、プレイヤーたちがブラインドになっていた可能性は高い。ただ、「誰かがブロックしてくれる」のではなく、「誰かにブロックされてもいいから狙ってくる」のがミドルシュートだ。




ハーフスペース有効活用術

 3点目のオウンゴール(起点・柴崎岳)と4点目の個人技ゴール(得点・香川真司、アシスト・大迫勇也)を除く乾貴士の2得点はハーフスペースを有効に活用した擬似的な縦の早さを実現させたものだった。

 結果として勝利は自信を回復させ、香川真司が結果を残したことにより楽観的な味方や、W杯に対する盛り上がりが着火し始めるのは間違いない。しかし、この戦術はまだ強豪国相手に試すことのできる代物ではない。状態の確認が取れていない酒井宏樹(マルセイユ)や大島僚太(川崎フロンターレ)、連動した攻撃がまだ皆無の主力メンバーに加え、毎試合失点に絡んでしまっている吉田麻也(サウサンプトン)やロストのきっかけになっている本田圭佑(パチューカ)ら主力と目されているメンバーにはまだまだ不安がある。
 あくまでパラグアイは圧倒的な格下状態だった。自信が最高のスパイスとなり、ロシアの地で仕上げに挑んでもらいたい。