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理想を掲げた日本代表がスイス戦で露見した現実的着手すべき守備戦術

遠い遠い相手ペナルティエリア

 日本時間9日未明に行われた日本対スイスのロシアW杯前強化試合は、0-2とスイス勝利で幕を閉じた。仮想コロンビアと位置づけた西野ジャパン2戦目はガーナ戦に比べてシュートチャンスも多く、スイスGKロマン・ビュルキ(ドルトムント/ドイツ)の正面を突くなど、枠内シュートは5本とつぶさに変化を垣間見ることができた。しかし、前半42分にCB吉田麻也(サウサンプトン/イングランド)がPKを献上してDFリカルド・ロドリゲス(ACミラン/イタリア)に決められ、後半37にはサイドチェンジから両サイドを揺さぶられ、FWハリス・セフェロヴィッチ(ベンフィカ/ポルトガル)に失点を喫した。スイスの枠内シュートは2本、決定機へのアプローチ率で勝敗が決した。

 シュートチャンスはあった。しかし、相手DFを崩した形ではなく、ミドルシュートがキーパー正面に飛んだパターンと、枠外に飛んだパターンが全てだ。強豪ドルトムントの正GKを務めているとはいえ、プレスやセービングが不安されるビュルキ相手だが、中速スピードの正面へのシュートではゴールを割ることはできない。MF大島僚太(川崎フロンターレ)が左足で打ち込んだミドルシュートが唯一の可能性を見せた。しかし、いずれもゴールエリア外からのショットであり、ペネトレイトの形はなかった。FW大迫勇也(ブレーメン/ドイツ)が出場していた時間帯ならば、クロスの可能性を残したが、チームの約束事も固まりきっていなかった。
 左サイドLSB長友佑都(ガラタサライ/トルコ)のクロスにファーで大迫、ニアにMF本田圭佑(パチューカ/メキシコ)がポジショニングしたものの、原口やFW宇佐美貴史(デュッセルドルフ)がミドルポジションをとることができず一歩遅れてしまう。さらにバックの位置でセカンドボールのインターセプトを諮った大島は前に出られないため、ポッカリと中央に穴が空いてしまった。全体的に押され気味であったことから、サイドハーフの原口と宇佐美のスプリントポジションが既定から離れていたため、スプリントスタミナを消費して疲弊してしまっていた。


 気がかりは【GKのセーブ数】もまた然りである。ビュルキが5本と日本の枠内シュートをすべて止めたのに対し、GK川島永嗣(メス/フランス)は枠内被シュート2本中2本を決められてしまった。内1本はPKで致し方ないとはいえ、後半には自ら焦って左サイドにスローイングしたところを奪われてあわや失点というべきループシュートも放たれた。しまったという表情に加え、苦笑いを浮かべた姿は自らの失策に対する反省としてはあまり見栄えがよろしくなかった。

変わらない吉田麻也と川島永嗣の連携

 何度同様の光景を見たことか。2戦連続PKでの失点シーンはおろか、空中戦の対応時含め、吉田と川島は7年来のコンビ関係とは到底思えない連携の未徹底ぶりを露見させた。長友やCB槙野智章(浦和レッズ)が守備で奮闘する中、高めにポジショニングしていたRSB酒井高徳(ハンブルガーSV/ドイツ)と吉田のハーフスペースや、吉田と川島が飛び出すペナルティスポット付近へのハイボールを狙われていた格好だ。
 2014年までのザックジャパンには明らかな形があり、失策となった本番における「自分たちのサッカー」も形があった。ハリルジャパンも「デュエル・縦に速いサッカー」と戻るべきポイントが確実にあったが、西野ジャパンに未だ形は見えない。自らの理想を追い求めるばかりか、同種の失点パターンを世界に向けて発信してしまった日本代表にとって、理想のプラスの前に現実のマイナスを減らすことにも着手せねばならない。


  
 経験を重視した選出だった。その中で最もプレゼンスを光らせていたのは、代表キャップ数が最も少なく、スタメン最年少のMF大島僚太だった。