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クルトゥラル・レオネッサの降格と井手口陽介の居場所

 93分に吹かれた笛は、クルトゥラル・レオネッサの降格を意味した。勝利したヌマンシアのイレブンやサポーターが歓喜の輪を織りなす中、レオネッサの選手たちは険しい表情や顔を覆う仕草で1年間戦ってきたチームの結末に抵抗していたようだった。
 日本代表MF井手口陽介はロシアW杯バックアップメンバー帯同中のため、試合の出場はなかった。1月にリーズ(イングランド2部チャンピオンシップ)を経たレンタル移籍加入を果たした井手口だが、出場機会をなかなか掴むことができず、チームに貢献できぬままハーフシーズンを終了した。





ヌマンシア戦のレオネッサ

 前半早々にエリア内でのトラップミスから失点したが、際どいオフサイドラインの妙がなければ何度もゴールネットを揺らされていた試合だ。「結果として2失点」だが、前線や中盤からプレスを掛けるような連動性のある守備は皆無であり、2失点目に至ってはDFがキーパーのブラインドとなったことにより、一歩も動けないまま失点した。
 1点返すことこそできたが、流れを飲み込めるような包括さはなく、単発に過ぎなかった。




井手口陽介がこの場で輝ける余地はあったのか

 動画でも前線と最終ラインの意思疎通の欠如は見て取れる。ハーフスペースやエリアの話が高度に感じられるほど、4バックのラインや間延びした状態が見えるのがレオネッサだ。
 DF長谷部誠(フランクフルト)やDF遠藤航(浦和レッズ)のような戦術眼を持ち合わせているわけでない井手口にとって、「猟犬と良い飼い主」の関係を保てるチームが理想的だ。もちろん、前所属のガンバ大阪ならば、MF遠藤保仁やMF今野泰幸がおり、長谷川健太監督の指示も井手口を動かすには十分だった。
 日本代表でもそれは同様だった。ボランチであれ、インサイドハーフであれ、長谷部や山口蛍(セレッソ大阪)、ハリルホジッチ前日本代表の存在も大きかった。オーストラリア戦の出来は戦術や資質を踏まえれば「当然」な結果だった。
 しかし、レオネッサは中盤を飛ばされた。スペイン2部リーグにおいて井手口流のオフザボールの動きは尊ばれず、ゴールに直結する動きが望まれた。オフェンスでもディフェンスでも、ポゼッション重視やスペースを生み出した上で複数人で攻め入っていくような悠然とした『間』は尊ばれなかった。
 柿谷曜一朗(現セレッソ大阪)や永井謙佑(現FC東京)、宇佐美貴史(現デュッセルドルフ※一度目の海外挑戦時)ら成功と言いにくい海外移籍になった選手に共通した悩みだ。練習時から積極的にシュート・ゴールに結びつけるような動きができないと、チームメイトからの信頼は得られない。同様の悩みを抱えてしまった。中島翔哉(ポルティモネンセ)、堂安律(フローニンヘン)、豊川雄太(オイペン)ら2018年の半年間で5得点以上を決めることのできた選手たちは皆、自らのポジションはさておき、練習中で目立つことに重きをおいた。その結果である。





リーズに戻るであろう今夏に取り組むべきこと

 兎にも角にもプレースタイルをわかってもらうために自らアクションしていかねばならない。本来ならばロシアW杯に出場することで存在価値を理解してもらうための手段は確立されていた。
 叶わなかった今となって、井手口陽介が掴むべき居場所はどこになるか。バックアップ帯同する今夏の動きに注目したい。