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【鈴木優磨】周到な仕込みで価値を向上。才能が見据える今と次のステップ

日本のクリロナ

 「クリスティアーノ・ロナウド、大好きなんですよ。クラブワールドカップで対決したいっす」

 2016年12月14日。クラブW杯準決勝でゴールを決めると、リーグ戦同様敬愛するクリスティアーノ・ロナウドのゴールパフォーマンスを真似て披露した鈴木優磨は日本だけでなく、世界中から注目をあびることになった。
 鹿島アントラーズは、準決勝でアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)に3-0で勝利した。終盤84分から出場した鈴木優磨は、1分後の85分FW金崎夢生からのクロスを左足で合わせ、ファーストタッチでゴールを決めた。
 「記者さんたちがずっと『やるんですよね?』って聞いてくるから、やらざるをえない状況になっていたので、やりました(笑)」と振り返った。

 2016年12月18日、クラブワールドカップ決勝戦の相手はレアル・マドリード(スペイン)。紛れもない世界最強チームとの対戦だ。しかし、前半は銀河系の名を恣にするレアルとは程遠い、どこか「余裕」を感じさせる雰囲気を漂わせていた。空気を一変させたのは、この試合での活躍を機として後にスペインへ渡ることとなるMF柴崎岳だった。翌日、スペイン各紙の見出し『(¡Dos goles del Real Madrid!)最強レアルから2ゴール』を賑わせた男が前半にやってのけた様は後半に本物のレアル・マドリードを覗かせることとなった。鈴木優磨は88分からの出場で、憧れのクリスティアーノ・ロナウドと同じピッチに立つことができたものの、後半で追いつかれ延長で引き離され、終わってみれば2-4という結果で幕を閉じた。
 「試合中は敵なんで、やっぱり悔しかった。(C・ロナウドは)今日の試合でそんなに調子が良かったわけじゃないと思うんですけど、1分、2分で仕事ができる。ああいうところはすごい、本当にストライカーだなと思いました」



鈴木優磨という男

 幼稚園のサッカーの時間に、研修(実習)で訪れたサッカーの先生に鈴木の母が言われた、「この子は才能がある。サッカーを続けた方がいい」との言葉をきっかけとして
「サッカー選手・鈴木優磨」の才能は芽吹き始めた。小学校へ上がると同時にアントラーズのスクールへ入り、3つ上の兄(鈴木翔大・ソニー仙台/JFL)と通った。「小学6年生の時、全国大会のベスト16の試合で5人抜きしてゴールを決めたこともある」と語るほど才能に溢れていた鈴木優磨は、順調にジュニア、ジュニアユース、ユースとステップアップしていった。ユースでもエースとして活躍。高校2年時には、トップチームのキャンプに参加した。
 「サッカーやっていて、こんなの初めて。『終わった』と思いました。何も通用しなかった。どうやっても差は埋まらない。プロになるのは無理だと思った」
 MF田中稔也(鹿島)と、「早く帰りたい」とぼやき合うくらいの挫折を味わった。キャンプ後、負けじと必死に練習を重ね2015年トップチームへ昇格を果たす。

J1デビュー戦、初ゴール

 J1デビュー戦は、2015年9月12日明治安田生命J1リーグ2ndStageのガンバ大阪戦だった。当時19歳。74分、MF土居聖真と代わりピッチに立つ。90分、MFカイオ(現・アル・アイン/UAE)からのクロスを見事にヘディングで合わせる。結果は1-2で破れたものの18分間しかなかった出場時間で、J1デビュー戦でゴールを決める勝負強さを見せた。1年目は、このあと7試合に出場し2ゴールを決めてみせた。
 2年目は、開幕戦から違いを見せつける。またしてもG大阪戦、またしてもMFカイオからのクロスをヘディングで合わせた。ゴール直後、サポーターに向かって「見たか」と叫んでいるような、気持ちを全面に出す鈴木優磨ががそこにいた。
 ヘディングシュートは「ユースのときに長谷川さんから教わった」と元日本代表FWの長谷川祥之(現・鹿島アントラーズスカウト)氏直伝。2016年はリーグ戦31試合に出場し、8得点2アシストを記録。高卒新人2年目での8ゴールは、日本代表にも選出され、W杯にも出場したFW柳沢敦(現・鹿島アントラーズコーチ)以来の、クラブトップタイ記録だった。
 3年目の2017年、持ち前の勝負強さを発揮するも、チーム事情から先発ではなくベンチスタートが多くなる・監督交代後はリーグ戦終盤まで出場こそ出来ていたものの、得点に絡むことが出来なかった。気鋭の若手の終息感がチームにこだましたか、最終節に勝利できず、鹿島は最後の最後で優勝を逃してしまった。2年目に東京ヴェルディから移籍し、この年からスタメンを奪取した同学年のMF三竿健斗が人目をはばからずに涙を流すなか、気丈な態度でスタジアムを後にした。リーグ戦は26試合に出場し、6ゴール1アシストと前年よりやや数字を落としていた。
 4年目の2018年、鹿島アントラーズは、第15節を終えて(鹿島はACLの日程もあり14試合)5勝3分6敗12得点16失点と負け越している。しかし、闘志を燃やす鈴木優磨は4ゴール3アシストと、チーム特典の半分以上に関与している。
 「これだけ結果が出ていないのは本当に申し訳ない。サポーターの皆さんは負けた後でも、力強くアントラーズコールをしてくれている。ブーイングがないのは心に来るんですよね。本当に感謝しかない。早くみんなで喜びたい」
 ここぞというところでの勝負強さ、全面に溢れ出る気持ち、負けん気の強さ。今季リーグ戦の目標は二桁得点。鈴木隆行や大迫勇也が背負ってきた背番号『9』。常勝鹿島復活のカギは、この男が握っている。
【鈴木優磨】
1996年4月26日生まれ 182cm/75kg