【Evolving Data<J1第18節>】

 7月8日・9日、J1第18節が開催された。2月に開幕した今季のJ1も後半戦。今節は、敵地全勝と勢いに乗る鹿島に立ち向かった東京、FWルーカス・ポドルスキ加入でムードの変わった神戸に挑んだ仙台、そして何と言っても監督解任を賭けたプレッシャーのかかる浦和に5連敗で不調にあえぐ新潟が臨むなど、話題の大きなカードが並んだ。
 今回はシーズン中盤に入り中心選手や戦術が明確化されてきたことから、【パス成功数・成功率】、ゴールへと結びつくパスを出す【キーパス数】、相手にチャンスを与えてしまった【ボールロスト数】、相手からボールを奪い取りチャンスを作り出した【インターセプト数】【タックル数】に【走行距離・スプリント】の6項目にスポットを当て、弊社開発中のEvolving Dataとデータ分析会社「InStat」のデータから紐解いてみたい。

 

<パス成功数・成功率/パスレシーブ数>

 パス成功数トップはMF扇原貴宏(横浜FM)の95本。第13節からモンバエルツ監督の信頼を得てスタメンに定着すると、チームの心臓として確立。リーグ屈指の捌き屋へ成長を続けている。この横浜FM-広島戦における双方の中盤、扇原とMF中町公祐、MF柴崎晃誠とMF青山敏弘がいずれも上位にランクし、互いにパスワークからのポゼッションを狙っていたことが窺える。
 その他、ベテランのMF阿部勇樹(浦和)が成功数87本(成功率95.6%)や若手のMF大島僚太(川崎)が77本(91.67%)、新進気鋭のMF手塚康平(柏)も86本(87.76%)と、中央に位置する選手が多くランクインしている。
レシーブ数を含めてみてもランクインする選手構成に大きな違いはないが、注目は、鹿島と川崎である。鹿島の右サイドを務めるMF遠藤康・MFレオシルバ・DF西大伍が名を連ねており、チームとして右サイドでポゼッションを高め、フィニッシュにつなげている動きが見える。川崎はボランチの大島とMFエドゥアルド・ネットに加え、サイドバックのDF車屋紳太郎とDFエウシーニョも名を連ねていることから、攻め手をワイドに考えていることが見て取れる。

 

<キーパス数>

 キーパスのトップは遠藤康(5本)。レシーブ数も多く、鹿島の攻撃における起点となっており、東京戦の先制点につながる起点ともなった。こちらにも同サイドの西(3本)がランクしており、ポゼッション以上に脅威があったと分かる。
 浦和(MF宇賀神友弥、MF柏木陽介、MF関根貴大)、東京(FWピーター・ウタカ、FW永井謙佑、MF高萩洋次郎)、川崎(FW小林悠、大島、車屋)がいずれも3名ずつランクインし、決定機に繋がる仕事を演出できる選手や攻撃における調子の良さが窺える。
 また、注目は3本中3本いずれも決定機を創出したMF三原雅俊(神戸)であり、結果として1ゴール1アシストだったことからも、戦術の中にピタリとハマった公算が高い。

 

<ボールロスト数>

(※現在画像の修正を行っております)

ボールロスト数のワーストはFW渡邉千真(神戸)の16回、しかし今回の注目はDF太田宏介(東京)の10回で全て相手陣内でのロストなことから、東京の左サイド裏は狙われていた可能性が高い。鹿島が右サイド側でポゼッションをとっていた点にも合点がいき、やはりチーム戦術として予め浸透していたと思われる。

 

<インターセプト数>

(現在、画像の修正を行っております)

 インターセプト数のトップはDF増嶋竜也(仙台)の14回。対峙した渡邉千真から奪取したケースが多く、ボランチのMF三田啓貴やMF富田晋伍に預け、攻撃につながる守備が出来ていた。しかし神戸もDF渡部博文とDF岩波拓也が上位にランクし、逆にカウンターを突かれるケースが多く見られた。
 注目は、相手陣内で6回も奪ったMFミッチェル・デューク(清水)。今季堅守を見せるガンバ大阪からセットプレイで2点を得た清水だが、激しい上下動とインターセプトでチームの勝利に与えた貢献は大きい。

 

<タックル数>

(現在画像の修正を行っております)

 タックル数のトップはMF六坂光成(清水)の6回。ミッチェル・デューク同様守備から攻撃へとつなげる役回りを遂行し、勝利に繋げた。
 こちらの注目は神戸(渡部5回、MFニウトン5回、三原3回)で、仙台相手に球際のデュエルで勝ち続けたことも得点や勝利を呼び込んだ一因と考えられる。

 

【走行距離・スプリント】

 走行距離のトップは、ランキングでもおなじみのMF高橋義希(鳥栖)の12.892km。夏場で約13km走り続けるのは『異次元』レベル。MF鎌田大地(現・フランクフルト)か移籍し、前線・中盤でのプレスが弱まるかと思われたが、FW趙東建が穴を埋めている。
 こちらのランキングにも、パス本数と同様に横浜FMと広島の中盤の選手たちが軒並みランクインしており、ボールも選手も動き続けてポゼッションを高めようとしていた点も窺える。その他、MF米本拓司(東京)、MF加藤大(新潟)、FW西村拓真(仙台)、MF山口蛍(C大阪)、MF小泉慶(新潟)ら汗かき役も順当にランクインしている。

 

<スプリント回数>

 スプリント回数のトップはFW小川慶治朗(神戸)の32回。一昨年トラッキングデータがスタートして以降、スプリント回数ではハイアベレージを叩き出している。DF松橋優(甲府)、永井、FW伊東純也(柏)、FW大槻周平(神戸)ら当ランキング主役級の選手たちもランクインしている。
 興味深いのはFWペドロ・ジュニオール、DF山本脩斗、MFレアンドロ、FW金崎夢生といった鹿島の左サイドと前線の選手たちが上位に位置していることで、右サイドでポゼッション・起点となったボールを左サイドでフィニッシュするための動きがここで正確に読み取れる結果となっている。

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