忘れてはならないこと。2018年3月4日にフィオレンティーナの主将を務めていたダビデ・アストーリが、遠征先ウディネーゼのホテルで心臓発作のため31歳で帰らぬ人となった。突如サッカー界を襲った悲しみには、世界中から哀悼の意が表された。所属していたフィオレンティーナは、クラブ練習場を「スポーツセンター・ダビデ・アストーリ」に変更。さらにイタリアサッカー協会はフェアプレー賞を「プレミオ・ダビデ・アストーリ」に改名することを発表した。偉大なるキャプテンよ、安らかに。
全20チームで争われるイタリア・セリエA。今季のセリエAのスクデット争いは例年以上に盛り上がった。シーズン途中までは名将サッリ監督率いるナポリが首位を独走。遂に王者ユベントスの連覇が途絶えるかと思われたが、シーズン終盤にかけ調子をあげ、最終的にはリーグ7連覇を達成した。今季終了後、ユベントスは長くチームを支えてきた選手が退団する。元イタリア代表GKジャンルイジ・ブッフォン、元ガーナ代表DFクワドゥ・アサモア、スイス代表DFシュテファン・リヒトシュタイナーの3名だ。2001年にパルマから加入したブッフォンは、ユベントスで通算650試合以上の公式戦に出場。アサモアは約150試合、リヒトシュタイナーは約260試合とユベントスの7連覇を大きく支えていたこの3人の退団は、来季以降チームにどのような影響をもたらすか注目だ。今季優勝争いと共に非常に盛り上がったのが、4位5位のCL出場権争い。37節時点で4位ラツィオ勝ち点72、5位インテル勝ち点69という状況で最終節に直接対決が待っていた。セリエAの順位決定方式としては、勝ち点が並んでいた場合、得失点よりも直接対決を多く制しているチームが優先されるルールがある。前半戦に行われたこのカードは0-0とドロー。したがって、インテルが勝利しない限りCL出場権獲得の4位フィニシュとはならなかった。試合は均衡した戦いが続き、前半終了時点で2-1とラツィオがリード。このまま勝ちか、引き分ければCL出場権獲得と目前に迫っていたが、78分にイカルディ、81分にベシーノとインテルが続けて2点を決め大逆転で7季ぶりのCL出場権獲得を果たした。
最終節までご覧の盛り上がりを見せていたセリエAだが、日本ではいまいち盛り上がりを見せていなかった。それもそのはず、昨夏にACミランに所属していた本田圭佑がメキシコのパチューカへ、冬の市場でインテルの長友佑都が出場機会を求めトルコのガラタサライへ移籍と、元日本代表MF中田英寿氏以来20年続いた日本人×セリエAの歴史が遂に途絶えてしまった。次にイタリアの地へ日本人選手が上陸するのは果たしていつになるだろうか?
それではEvolving Dataが独自に厳選した、今季のセリエAの各表彰&ベストイレブンをみていこう。
▽最優秀キャプテン
DF ダビデ・アストーリ(フィオレンティーナ)
▽最優秀選手
FW ルイス・アルベルト(ラツィオ)34試合11ゴール14アシスト
▽最優秀若手選手
FW パトリック・クロトーネ(ACミラン)28試合10ゴール2アシスト
▽カムバック賞
GK サルバトーレ・シリグ(トリノ)37試合45失点
▽得点王
FW チーロ・インモービレ(ラツィオ)29ゴール
FW マウロ・イカルディ(インテル)29ゴール
▽アシスト王
FW ルイス・アルベルト(ラツィオ)14アシスト
▽最多クリーンシート
GK ホセ・マヌエル・レイナ(ナポリ)18試合
▽最多セーブ
GK ニコラス・アンドラーデ(エラス・ヴェローナ)
▽最多タックル
MF アラン(ナポリ)107回
MF ルーカス・シウバ(ラツィオ)107回
▽最多インターセプト
DF フランチェスコ・アチェルビ(サッスオーロ)92回
▽最多クリア
DF フェデリコ・チェッケリーニ(クロトーネ)262回
▽最多デュエル勝利
DF アダム・マジーナ(ボローニャ)239回
▽最多ドリブル成功
FW ドウグラス・コスタ(バイエルン)102回
▽最多パス成功
MF ジョルジーニョ(ナポリ)2859本
▽最多キーパス
FW ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)103本
▽最多クロス
DF クリスティアーノ・ビラーギ(フィオレンティーナ)
▽日本人選手成績
DF 長友佑都(インテル(現ガラタサライ))
▽順位
1.ユベントス(CL)
2.ナポリ(CL)
3.ローマ(CL)
4.インテル(CL)
5.ラツィオ(EL)
6.ACミラン(EL)
7.アタランタ(EL予選)
8.フィオレンティーナ
9.サンプドリア
10.トリノ
11.サッスオーロ
12.ジェノア
13.キエーボ
14.ウディネーゼ
15.カリアリ
16.ボローニャ
17.SPAL
18.クロトーネ(降格)
19.ヴェローナ(降格)
20.ベネヴェント(降格)
2ページ目では今季のベストイレブンをご紹介!
〈ベスト11〉
▽GK
GKにはアリソン(ローマ)を選出。意外かもしれないが、今季セリエAデビューを飾ったアリソンは、ユベントスへと移籍したヴォイチェフ・シュチェスニーの抜けた穴をしっかりと埋める、それ以上の成績を残したと言っても過言ではない。37試合に出場し109セーブ(8位)、クリーンシート17試合(2位)、セーブ率80%(1位)を記録。一気に世界屈指のGKへと駆け上がった。ブラジル代表でも、ライバルのエデルソン(マンチェスター・シティ)らを抑えゴールマウスを守っている。次点にはサルバトーレ・シリグ(トリノ)を選出。パリ・サンジェルマン、セビージャで不遇の時代を過ごし、昨季後半戦は2部へと降格したオサスナ(現スペイン2部)でプレー。誰もがシリグは”終わった”選手だと思っていたが、今季トリノへ加入し華麗な復活を遂げた。114セーブ(6位)、クリーンシート11試合(7位)、セーブ率72%(4位)を記録。昨季トリノのゴールマウスを守っていたジョー・ハートが104セーブ、クリーンシート5試合、セーブ率63%だったことを考えれば、その差は歴然だ。トリノの地で完全復活を遂げたシリグは、マンチーニ新監督が就任したイタリア代表におよそ2年ぶりに復帰。EURO2020に向けてドンナルンマ、ペリンらと守護神に挑む。
▽DF
CBにはカリドゥ・クリバリ(ナポリ)、ミラン・シュクリニアル(インテル)を選出。35試合に出場したクリバリは、195cmの高い打点のヘディングを武器に5ゴールを記録。さらに、パス成功数は2719本(2位)を数え成功率も91%と非常に高い数値を出し、空中戦だけでなく足下も柔軟というこを証明した。肝心の守備でもナポリをりーぐ3番目に少ない29失点に抑える安定したパフォーマンスをみせた。昨夏にサンプドリアから移籍加入したシュクリニアルは、全38試合にフル出場を果たす。タックル86回(8位)、クリア171回と安定したパフォーマンスをみせ、攻撃面でも存在感を発揮。なかでもキエーボ戦で決めたゴールは圧巻だ。自陣でシュクリニアル自身がボールを奪いカウンタースタート。そのままシュクリニアルは前線まで猛ダッシュで上がり、最後はカンドレーバのピンポイントクロスをダイビングヘッドで合わせた。このゴールを含めてシーズンを通じ4ゴールを決め、インテルの大逆転でのCL出場権獲得に大きく貢献した。次点にはフランチェスコ・アチェルビ(サッスオーロ)、ラウール・アルビオル(ナポリ)を選出。全38試合に出場したアチェルビは、インターセプト数92回(1位)、クリア244回(2位)、失点に直結するミス0とハイパフォーマンスをみせた。しかし、チームはシーズンを通じて29ゴール(最下位)と、得点王となったラツィオFWチーロ・インモービレ、インテルFWマウロ・イカルディの29ゴールとチームが個人記録に並ぶほどの深刻な得点不足に悩み、11位に終わった。31試合に出場したアルビオルは、3ゴール1アシストを記録。パス成功数2239本(3位)パス成功率90%と強力ナポリ攻撃陣の攻撃の組み立てにも大きく貢献した。守備面でも失点に直結するミス0と安定した守備をみせた。
RSBにはアレッサンドロ・フロレンツィ(ローマ)を選出。今季開幕直後に2度の大怪我から復帰したフロレンツィは、32試合に出場し1ゴール5アシストを記録。クロス数35本(4位)を記録し、サイドから多くのチャンスを生み出し完全復活を証明した。次点にはジョアン・カンセロ(インテル)を選出。昨夏にバレンシアより加入したカンセロは、開幕直後こそケガで出遅れるも、高い攻撃センスをみせ、26試合に出場し1ゴール3アシストを記録。ハイパフォーマンスをみせたが、ロシアW杯のポルトガル代表メンバーには惜しく落選した。
LSBにはアレクサンダル・コラロフ(ローマ)を選出。昨夏にフリーでローマに加入したコラロフは、35試合に出場し2ゴール8アシストを記録。セットプレーのキッカーも任され、多くの高精度のボールをゴール前に送った。さらには守備でも安定したパフォーマンスをみせ、失点に直結するミスは0とチームの3位フィニシュに大きく貢献した。次点にはアレックス・サンドロ(ユベントス)を選出。SBからWGまでこなすサンドロは、高い攻撃センスを見せつけ4ゴール4アシストを記録しチームの7連覇に大きく貢献した。しかし、マルセロ、フェリペ・ルイス擁するブラジル代表のメンバー入りとはいかず、ロシアW杯出場は叶わなかった。
▽MF
DMFにはルーカス・トレイラ(サンプドリア)を選出。22歳のトレイラは、今季最もセリエAでブレイクを果たした選手と言っても過言ではないだろう。168cmと小柄ながらタックル101回(3位)を記録し、体を張ったディフェンスを見せた。さらには、パス成功数も1910(9位)を記録し守備陣と攻撃陣のつなぎ役としても奮闘した。直接FKを得意とし、特にキエーボ戦で決めたゴールは真骨頂とも言えるものだった。次点にはジョルジーニョ(ナポリ)を選出。33試合に出場したジョルジーニョは2ゴール4アシストを記録。中盤で潰し役として躍動しただけでなく、5大リーグで最多となる2859本のパスを成功させた。
CMFにはミラレム・ピャニッチ(ユベントス)とセルゲイ・ミリンコビッチ=サビッチ(ラツィオ)を選出。ピャニッチは、リーグ最多の3つの直接FKを含む5ゴール8アシストを記録。中盤で攻撃の組み立てに積極的に参加し、ユベントスのリーグ7連覇に大きく貢献した。ミリンコビッチ=サビッチは、身長が192cmあるにも関わらず、華麗な足技の持ち主で、プレッシャーに来る選手を次々とドリブルで躱す。さらには高精度のパスを持ち合わせている上、今季は決定力が増し12ゴールを記録。まだ23歳ということもあり、今年の夏のビッククラブへの移籍は確実と言っていいだろう。さらにはW杯にもセルビア代表として出場するので、ぜひ注目して見て頂きたい。次点にはジョルダン・ヴェルトゥ(フィオレンティーナ)、ジャコモ・ボナベントゥーラ(ACミラン)を選出。昨夏にアストン・ビラより加入したヴェルトゥは、36試合に出場し8ゴール1アシストを記録。直接FKから2ゴールを決めるなど、初のセリエA挑戦は大成功に終わった。33試合に出場したボナベントゥーラは8ゴール3アシストを記録。昨夏に過去に例を見ない大型補強を敢行したミランだったが、シーズン終盤のボナベントゥーラの活躍がなければEL出場権を獲得できなかっただろう。
▽FW
STにはルイス・アルベルト(ラツィオ)を選出。今季の最優秀選手にも選出したアルベルトは、若い頃から期待されていた才能が遂に開花。昨季はラツィオで9試合のみの出場で1ゴールに終わったが、今季は開幕スタメンを勝ち取ると34試合に出場し11ゴール14アシストを記録しアシスト王にも輝いた。リーグ得点王となったインモービレとの相性は抜群で、来季2人ともチームに残留すればEL制覇も夢ではない。昨年末にはこの活躍を受け、スペイン代表に初招集されるも本大会のメンバーには惜しくも漏れた。次点にはアレハンドロ・ゴメス(アタランタ)を選出。アタランタの主将を務めるゴメスは、37試合16ゴール10アシストを記録した昨季のパフォーマンスには届かなかったが、33試合6ゴール10アシストと好成績を残した。ドリブル成功数102回(2位)、キーパス96本(2位)と個の力で多くのチャンスクリエイトに貢献した。しかし、メッシ、イグアイン、アグエロら擁するロシアW杯アルゼンチン代表には惜しくも漏れた。
CFにはチーロ・インモービレ(ラツィオ)、ロレンツォ・インシーニェ(ナポリ)を選出。33試合に出場したインモービレは、29ゴールを決め自身2度目のセリエA得点王に輝いた。さらには、ルイス・アルベルトと息の合ったプレーなどから9アシストを記録。しかし、チームは最終節のインテルとの直接対決に敗れ、惜しくもCL出場権を逃した。ナポリの不動のLWGとしてプレーしたインシーニェは、37試合に出場し8ゴール11アシストを記録。ハムシク、メルテンス、カジェホンら攻撃陣と息の合ったプレーを多く見せた。キーパスも103本(1位)を通し、今季のセリエA最多のチャンスクリエイト数を記録するも、チームは終盤にまさかの失速をみせ悲願のスクデット獲得には至らなかった。次点にはマウロ・イカルディ(インテル)、パウロ・ディバラ(ユベントス)を選出。最終節のラツィオ戦で貴重な同点ゴールとなるPKを決め、見事インテルを7季ぶりのCL出場に導いたイカルディは、34試合に出場し29ゴールを記録し自身2度目の得点王にも輝いた。シーズン途中に負傷し一時期メンバーから外れるも、すぐに復活。復帰後2試合目のサンプドリア戦での4ゴールは圧巻のパフォーマンスだった。しかし、ゴメスと同様に超強力攻撃を擁するアルゼンチン代表からはメンバー漏れした。33試合に出場したディバラは、22ゴール5アシストを記録。ドリブル成功数94回(3位)、キーパス56本と多くのチャンスクリエイトにも関わった。今季のディバラが突出しているのが、ビックチャンスをしっかり決める冷静さだ。ミスをしたのはわずかに3回。得点王となったインモービレは11回、イカルディは16回と比較すれば一目瞭然だろう。この活躍がアルゼンチン代表監督を務めるサンパオリも届いたのか、イカルディ、ゴメスらを抑えてW杯メンバー23名に選出。ロシアの地で念願の代表初ゴールを決めることは出来るのだろうか。
*あくまでも自社計測ですので、公式と異なるのはご了承下さい。
〈ベスト11 セカンドチーム〉