【冨安健洋】何かを成したわけではない、何かを成しにいくための移籍

 「まだ何かを成し得たわけでもありませんし、掴み取ったわけでもありません。これからたくさんの高い壁があると思いますが、アビスパのプライドを持って自分らしくひとつひとつ超えていきたいと思います」
 2018年1月8日、世の中が成人の日を祝う中、来年今年20歳となる東京世代の若武者が海を渡る決断を下した。DF冨安健洋、ベルギー・ジュピラーリーグ1部、シント=トロイデン移籍ー

 井原二世、新世代のアジアの壁、いくつかの二つ名はいつの頃からか呼ばれ始め、中学3年生にしてトップチームの練習にも参加した。引き当てたか、引き寄せたか、同様の二つ名をもった先輩がチームを率いることとなった。時を同じくしての二種登録。進み続けていた時はさらに加速しだした。高3時には主力としてJ1を経験するも、残留は果たせず、悔しさと強い気持ちをもち「1年でのJ1復帰」を掲げ、スタメンとして1年間躍動し続けた。
 フル出場ではない。それはクラブ以外にもう一つのチームに帯同していたからだ。中学年代から冨安は、この世代のディフェンスリーダーだった。U-17W杯にはチームとして届かなかったが、その他すべての大会を経験してきたほど、代表と海外を見てきた。
 3年前に成し得なかったW杯に対して、2016年はリオ五輪にトレーニングパートナーで帯同し、AFC U-19選手権を突破して参加したのが、2017年のU-20W杯だ。高校時代からの相棒CB中山雄太とともに守り続けたディフェンスラインはグループリーグを超えた。ただ、打ち破れなかったのが決勝トーナメント。世界の本当の高さを知った。
 1年間戦い続けた自チームも、最終盤戦でプレーオフへと巻き込まれ、1年での昇格は叶わなかった。

 シント=トロイデン側の動きもまた盤石だった。DMM.comが経営権を買収し、FC東京の立石GMも移籍。MF井手口陽介(リーズ→クルトゥラル・レオネッサ)獲得も考えたが、冨安に狙いは変わった。サウサンプトンのCB吉田麻也をザッケローニと日本サッカー協会自体で成長を推進させたように、あらたなポジションに冨安が座る。吉田は名古屋からオランダを経てプレミアへと渡った。冨安は、福岡発ベルギー経由…どこへ向かうのか、これからに注目したい。



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