【選手名鑑】グリーリッシュの現在地|「アストン・ビラ一家」に生まれた男の宿命

 2010年に名将マーティン・オニール元監督の退任以降、低調な戦いが続く古豪アストン・ビラ。UEFAチャンピオンズリーグ優勝1回、プレミアリーグ優勝7回、FAカップ優勝7回を誇るイングランド屈指の名門は、現在2部でプレミアリーグ復帰を目指し奮闘中だ。かつてドワイト・ヨークやヨアン・カリューらが着用した背番号「10」は、先日イングランド代表候補にも名を連ねたジャック・グリーリシュへと引き継がれている。名門復活はアストン・ビラで97ゴールを記録したレジェンド『ビリー・ガラティー』の血を引く若き23歳に託された。

目次



グリーリッシュのプレースタイルと選手紹介

 パス、ドリブルの制度が非常に高く、「個」の力で局面を打開できる選手。特に細かいボールタッチから独特のリズムで繰り出すドリブルは、2部レベルだと相手DFはファウル以外では止められない。そのため1試合平均の被ファウル数は欧州の中でもずば抜けており、4.76回/90分を記録する。これはクリスタル・パレスFWウィルフレッド・ザハの3.2回/90分、カリアリDFダリヨ・スルナの3.4/90分、スタッド・レンヌFWイスマイラ・サールの3.31/90分といった各リーグで1位を記録している選手と比較すると、この数字がいかに異常値かということがわかる。(2018/11/15現在)

 ただ改善点も見受けられ、決定力不足と素行の悪さが挙げられる。今季は16節終了時点で1ゴール。チャンスクリエイトに徹しているという事が決定力不足に繋がっているのだが、1ゴールというのは物足りない。「ゴールへの意識」を高めれば、さらに相手にとって怖い選手となるだろう。素行の悪さに関しては、背番号「10」が与えられたことやジョン・テリーら経験豊富な選手とプレーしたことで大幅にメンタル面が改善され、現在は落ち着いた。また、験担ぎを理由に80年代に日本の女子高校生で流行した「ルーズソックス」のようにソックスを下げてプレーしている。

グリーリッシュのプロフィール

選手名 ジャック・グリーリシュ
ポジション OMF/SMF/CMF
出身 イングランド/バーミンガム
年齢/生年月日 23歳/1995年9月10日
身長・体重 175cm・68kg
現所属チーム/背番号/利き足 アストン・ビラ(イングランド)/10/右足
代表/デビュー年 元イングランドU-21代表/2016年5月19日
過去所属 アストン・ビラ(イングランド)、ノッツ・カウンティ(イングランド/レンタル移籍)
クラブ・代表タイトル トゥーロン国際大会(イングランドU-21代表)
個人タイトル U-17アイルランド年間最優秀選手(2012)、アストン・ビラ年間最優秀若手選手(2014-2015)U-21アイルランド年間最優秀選手(2015)

アストン・ビラ一家に生まれる

 ジャック・グリーリシュは、1995年9月10日にイギリスの大都市「バーミンガム」に生まれた。1897年から1908年にかけてアストン・ビラでプレーした「レジェンド」、ビリー・ガラティーを高祖父にもつアストン・ビラ一家に生まれた。グリーリッシュ自身も幼少期から熱心なアストン・ビラファンで、初めて買ったユニフォームもアストン・ビラであった。



下部組織入団からプロデビューまで

 6歳でアストン・ビラの下部組織に入団。11-12シーズン第31節チェルシー戦でプレミアリーグ初のベンチ入り。当時16歳であった。2013年夏、当時3部に所属していたノッツ・カウンティへレンタル移籍。当時18歳ながらリーグ戦37試合で5ゴール7アシストを記録する大活躍。5月3日に3部のシーズンが終了。すぐにアストン・ビラへと復帰を果たし、5月7日に行われたマンチェスター・シティ戦でプレミアリーグデビューを果たした。

FA杯準優勝から一転、2部降格へ

 翌14-15シーズンは継続的にトップチームへ帯同し、プレミアリーグ17試合に出場。FAカップでは全試合に出場を果たし、2アシストを記録。チームの決勝進出に大きく貢献した。しかし、15-16シーズンはアストン・ビラにとって厳しいシーズンとなった。デルフ、ベンテケ、フラール、クレバリー、ギブンらが主力選手が揃って退団。一方、新たに獲得した選手はプレミアリーグでの経験がない選手や、既に全盛期を過ぎた選手ばかりだった。グリーリッシュ自身はレスター戦でプレミアリーグ初ゴールを記録するも、チームは年間勝点「17」に終わり1992年のプレミアリーグ創設以降初めて2部へと降格した。

2部降格によりクラブは大幅改革

シーズン終了後、チームへの投資を拒むランディー・ラーナーから中国人資産家トニー・シャーへとオーナーが変更。さらには500人の従業員リストラやチェルシーをUEFAチャンピオンズリーグ優勝に導いたロベルト・ディマッティオ氏を招聘など大幅に改革を行った。新たなスタートをきったアストン・ビラだったが、開幕から11試合でわずか1勝と結果を残せずディマッティオは解任。後任にスティーブ・ブルース氏を招聘した。

 アストン・ビラの問題は成績不振だけで終わらなかった。9月にグリーリッシュがバーミンガムのホテルで騒ぎを起こしていたことが発覚。リザーブチームへの追放が発表され、3試合の欠場が決定した。復帰後は再びスタメンとして試合に出場。結果、シーズン13位でフィニッシュし、グリーリッシュは31試合5ゴール5アシストでシーズンを終えた。

背番号「10」

 翌17-18シーズンからは、ジョーダン・アユー退団以降空き番号であった背番号「10」を着用。さらには、元イングランド代表DFジョン・テリーが加入するなど。その中でグリーリッシュは揉まれメンタル面が大きく成長。かつてのような問題行動を起こすことなく、背番号「10」を背負いピッチで躍動。怪我の影響で27試合の出場に留まるも、3ゴール5アシストを記録した。

 シーズンはプレーオフ圏内の4位でフィニッシュ。昇格プレーオフに進出した。そしてここからグリーリッシュの「覚醒」が始まった。プレーオフ準決勝1st legミドルスブラ戦ではCKから貴重な先制点をアシスト。さらにはデュエル勝利数は脅威の「20回」を記録。2nd legでもピッチ上を駆け回り、2戦合計1-0で決勝進出を決めた。

衝撃を与えた”2018年5月27日”

 2018年5月27日、昇格プレーオフ決勝フラム戦がキックオフ。前半23分、フラム主将のトム・ケアニーに先制点を許し、前半を1-0で終える。前半はシュート2本と本来のチームとは程遠かった。そして後半、グリーリッシュを中心にアストン・ビラがフラムゴールへ迫る。60分、センターサークル付近でパスを受けたグリーリッシュがドリブルを開始する。相手DF4人を抜きシュートを放つも、DFにブロックされ相手GKにセーブあう。70分、フラムDFデニス・オドイがグリーリッシュへのファウルで退場。数的優位となったアストン・ビラは、さらに猛攻を仕掛ける。しかし、最後までゴールを割ることは出来ず。2季ぶりのプレミアリーグ復帰はお預けとなった。試合終了後、主将のジョン・テリーがグリーリッシュを抱きしめる。グリーリッシュの目には大粒の涙が浮かんでいた。背番号「10」としてチームを引っ張ったが、愛するクラブを1部の舞台へ戻すことは叶わなかった。しかし、この試合のグリーリッシュは「異常」であったのは間違いない。デュエル勝利数は「21回」。ドリブル成功数は「8回」、被ファウル数は「9回」とファウルなしで止めることは不可能だったというのがわかる。「デュエル勝利数」に関してあまり詳しくない方のために少し説明をさせて頂く。1試合において「10回」デュエルを勝利すれば多い方である。実際、18-19プレミアリーグ(第7節終了現在)のデータを見てみよう。1位は第4節のFWスティーブ・ムニエ(ハダースフィールド)の「19回」、2位は第5節DFハリー・マグワイア(レスター)の「14回」。2人共190cm以上の身長があり、「空中戦」に強い選手だ。一方のグリーリッシュは175cmと空中戦に強い選手ではない。そのためデュエル勝利数「21回」のほとんどが地上戦での勝利数だった。被ファウル数「9回」というスタッツも、18-19プレミアリーグ(第6節終了現在)においてグリーリッシュを超える選手は存在しなかった。(最多が第6節ポグバ、第5節マネ、第5節ファン・ラ・パラの「5回」)

愛するクラブに残留

 プレーオフでの「覚醒」をみたトッテナム、マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、チェルシーなど名だたる強豪クラブがグリーリッシュの獲得に乗り出した。この時アストン・ビラは、財政的に苦しく放出もやむなしかと報じられていた。しかし、7月の中旬にエジプトの大富豪ナセフ・サウィリス氏らが投資。ナセフ・サウィリス氏ら(55%)、トニー・シャー(45%)という共同オーナーが誕生し、グリーリッシュらほとんどの主力選手が残留し、2023年夏までの契約延長にサインした。そして18-19チャンピオンシップが開幕。開幕2連勝を飾るも、第3節イプスウィッチと引き分けてからやや失速。第11節プレストン戦後にはスティーブ・ブルース監督が解任された。ただ、チャンピオンシップは年間46試合あるため、昇格の可能性は十分に残されている。アストン・ビラの背番号「10」は愛するクラブを1部へ導けるだろうか?

グリーリッシュの動画



年度別出場成績

18-19/アストン・ビラ(第16節終了時)

FLC(英2部)  16試合1ゴール2アシスト
EFLカップ    1試合0ゴール0アシスト

17-18/アストン・ビラ

FLC(英2部)  27試合3ゴール5アシスト
FLCプレーオフ  3試合0ゴール1アシスト
FAカップ    1試合0ゴール0アシスト

16-17/アストン・ビラ

FLC(英2部)  31試合5ゴール5アシスト
FAカップ    1試合0ゴール0アシスト
EFLカップ    1試合0ゴール0アシスト

15-16/アストン・ビラ

プレミアリーグ 16試合1ゴール0アシスト
FAカップ    2試合0ゴール0アシスト
EFLカップ    3試合0ゴール1アシスト    

14-15/アストン・ビラ

プレミアリーグ 17試合0ゴール1アシスト
FAカップ    6試合0ゴール2アシスト
EFLカップ    1試合0ゴール0アシスト

13-14/アストン・ビラ/ノッツ・カウンティ

プレミアリーグ 1試合0ゴール0アシスト

FL1(英3部)  37試合5ゴール7アシスト
FAカップ    1試合0ゴール0アシスト
EFLトロフィー  1試合0ゴール0アシスト





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