【ゼロックス 鹿島vs浦和】キーマンを潰すためのマンツーマン【現地観戦評価点付き】

ゼロックス・スーパーカップ2017

前年度のJ1リーグ年間優勝チームと天皇杯王者で行われるゼロックス・スーパーカップの今年の組み合わせは、ともに鹿島アントラーズが制してしまったために年間準優勝チームである浦和レッズと対戦することとなった。
鹿島アントラーズは今大会に対してベストの布陣を敷いており、浦和レッズはCB槙野智章をターンオーバー、CMF柏木陽介を足の怪我で欠くという布陣。今シーズンは試合数の多さやACL王者を目指すことも含めてターンオーバーの布陣を敷くこととしたため、いわゆる「ベストメンバー」で臨む回数が希薄になることを踏まえた上での布陣となる。

スターティングメンバー

鹿島アントラーズは韓国から移籍してきたGKクォンスンテ、湘南からのLSB三竿雄斗、新潟からのDMFレオシルバ、STペドロジュニオールがスタメンに名を連ねた。
浦和レッズは湘南から移籍してきたLWB菊池大介が名を連ねると、CB槙野のポジションには宇賀神友弥、CMF柏木のポジションにはDMF青木拓矢が入り、怪我中のST高木俊幸の枠には李忠成、控えに回ったCF興梠慎三のポジションにはCFズラタンが入った。

対応力の早さを見せたLSB三竿雄斗

試合開始後浦和はRWB駒井善成からの攻めを見せる。CB森脇良太とリーグトップのオフェンスコネクターST武藤雄樹がいつも通り右にいることもあり、セオリー通りの右からの崩し。また、鹿島側もペドロ、レオシルバ、三竿雄と移籍組がこぞって左に揃っていることもあり、格好の標的でもあった。かつては京都と湘南の選手として退治したRWB駒井とLSB三竿雄。細かなステップで翻弄し、メガクラブでの立ち位置を見せつけたのはRWB駒井だった。LSB三竿雄はニアをカットするスタンスで右足に重心をかけるものの外に開いたRWB駒井がクロスをあげる。
続いてはカットイン、ワンツーなど攻め手を見せるものの、15分と経たない内にDMFレオシルバと立ち位置を変えたDMF小笠原満男がST武藤雄樹をマンツーマンで封じ始めると、LSB三竿雄はRWB駒井の細かな変化に対して対応し始める。ドリブラーであるためアーリークロスなどの対応はないことから、RWB駒井がLSB三竿雄を封じるためには、違いを見せつけて格付けを済ませることだった。問題が起こったのは前半18分。RWB駒井がカットインと見せかけてのクロス…を封じられる。そればかりか繋がれてしまう。逆にLSB三竿雄の守備力がRWB駒井を圧倒し始め、以降の二人の勝負はLSB三竿雄の全勝。RWB駒井をうまく使うためには、逆サイドのフリとコネクターST武藤の存在がとてつもなく大きいはずだったのだが…

封じ込めたマンツーマンディフェンス

浦和から見た右サイドでの進行事案を悟ったDMF小笠原満男はDMFレオシルバとポジションを変更し、自らST武藤雄樹のマンツーマンをかってでる。コネクターST武藤を封じるばかりか、突破力のあるLWB菊池大介を亡きものとするための殺人ガードをDMFレオシルバに託していた。
DMF小笠原はST武藤へのパスコースを全て遮断。直線・壁パス・フィード全てを遮断。すると浦和は左サイドも活用するようになる。その間にLSB三竿雄はRWB駒井への格付けを済ませてしまった。右サイドが封じられ、パスがこないためにST武藤はポジションを下げざるを得なかったことで、浦和の残す攻め手はCFズラタンのポストプレイとLWB菊池大の二点となった。
しかし、CFズラタンは前後の対応からボールを収めることが出来ず、果敢な突破を見せ続けチャンスこそは生み出していたLWB菊池大も、縦突破はRSB西大伍、DMFレオシルバに寄せられてしまい、CB森脇からのサイドチェンジからの攻撃が唯一残されるのみだった。
前後半通してCF興梠慎三、DMF長澤和輝、RWB関根貴大が交代出場してポジションチェンジが行われ、DMF永木亮太が交代出場したタイミングにおける守備陣のズレが起こった瞬間以外、L鹿島の守備陣は浦和にパスを回させた上で完全封殺していた。

一瞬の間隙をついた3人

攻撃面では間隙をついたRMF遠藤康、ST武藤雄樹、ST鈴木優磨を評価したいと思う。
CB遠藤航のファウルで得た鹿島の得点シーンともなったFKは、GK西川周作の位置に大きな問題を感じた。壁の位置設定自体には問題こそなかったが、GK西川はDMFレオシルバ・DMF小笠原満男・RMF遠藤康の誰であっても対応できるように中央に位置づけていた。ピッチとスタンドは違うだろうが、DMF小笠原もDMFレオシルバもRMF遠藤康に対してアドバイスや距離を測った上での助言を行っており、左カーブを得意とするRMF遠藤康にとって絶好の位置といってもよいほどだった。
2点目となるDMFレオシルバからLMF土居聖真を経由しCF金崎夢生がシュートを放つもののポストに弾かれ、RMF遠藤康が詰めて決めるシーンも、CBが全員中央によっており、守備時にWBがサイドバック化して対応することが出来ておらず、RMF遠藤康は完全フリーとなっていた。
浦和1点目のPKこそ、DMF小笠原が与えてしまったものだが、
2点目のRWB関根貴大がLSB三竿雄斗を剥がしてクロスを入れたシーンは、ST武藤雄樹がDMF小笠原満男からマークの変更がなされた一瞬のスキをついたものだった。右PAエリア脇でもつとすぐさまRWB関根貴大へと供給。溢れる可能性を信じそのままゴール前へと直進した結果がゴールを生んだ要因でもあった。
決勝ゴールとなったST鈴木優磨のワンタッチーシュートシーンは、この日対応に後手を踏み続けていたCB遠藤航とGK西川周作にもとへプレスした結果生まれたもの。午前中に行われたNEXT GENERATIONS CUPにおけるCF伊藤龍生(米子北高)やCF安藤瑞季(長崎総合科学大附高)のハイプレスからだったがその失点もCB橋岡大樹(浦和レッズユース)のバックパスから生まれたものだった。

評価点と所感

所属 Pos 選手名 評価点 分数 コメント
鹿島 GK 6.0 90 2失点は彼のゴールキーピングのせいではない。GK曽ヶ端との争いが確実にできると示すことが出来た。
鹿島 RSB 6.0 90 レアル戦の冷静さは伊達ではない。対面するLWB菊池大介を冷静に処理し後方からのキッキングで支援していた。
鹿島 CB 6.0 90 後方からのフィードが活きておりImpect指数の高さは浦和CB森脇との勝負か。攻め込まれることは多かったが、薙ぎ払っていた印象でもあった。失点もされたが、DMF小笠原と連動してST武藤雄を潰しまくっていたのも大きい。
鹿島 CB 6.5 90 失点時の対応は後方のリーダーから細かなチェックを施しても良かったのではないかと感じたが、それ以外は終始完璧。特にCFズラタンには何もさせなかったといっていい。
鹿島 LSB 6.0 82 上述通り対面のRWB駒井善成に格付けできるほどの完勝をみせたものの、交代したRWB関根貴大には突破を許して失点の一因に。またLMF土居聖真との連携にはまだまだ成長要素を感じられ点も今後への期待値。
鹿島 LSB 5.5 8 無風のLSBに新星が登場。そんな中で求められるLSB山本脩の大きなチャンスは昨年同様のセットプレイにおける飛び出しやマークずらしまたはストレート系のボールがクロスの主軸となるLSB三竿雄とは異なる高めのカーブがかったクロス。LMF土居やLMFレアンドロとの関係性構築が鍵。
鹿島 DMF 6.5 69 ただただ圧倒。起点も記録したが、DMF青木拓矢からの縦パスブロック、ST李忠成の無効化など平面上の中盤全てにシールドを敷いたかの働きだった。イエローカードを貰った行動含めて「リーグ戦だったらどうなのか」と思われるファウルの多さが気になった。
鹿島 DMF 6.0 21 十分奪取力の高さはわかるが、スタート段階で何をすべきかを知っておく必要性もあったのでは?というのが減点材料。DMFレオシルバと身体能力で競ってもしょうがない。もしST武藤雄樹封じを即座に動けていたら、無失点勝利もあったかもしれない。落ち着いた後の動きは素晴らしかった。
鹿島 DMF 6.5 90 上述の通り、ST武藤雄樹をフリー状態で封殺していた点が素晴らしかった。結果として交代直後の動きから2失点食らってしまったとはいえ、ピッチ上をコントロールしていたのは間違いない。
鹿島 RMF 7.0 90 序盤こそLWB菊池大介とのマッチアップこそあったが、浦和の右サイドが潰れたために、CB宇賀神友弥がLWB菊池大とポジションを変えるなど、鹿島の右サイドには大きなスペースが生まれていた。有効に利用して得点できた点は特筆に値する。もちろん、MOM!
鹿島 LMF 6.0 90 LMF土居聖真の進化系は鹿島におけるリンクマン。RMF遠藤康に比類した行動を取る必要はない。RWB関根貴大の裏にできたスペースを使おうとしたLSB三竿雄斗やLSB山本脩斗のブレーキングになってはならない。その点を回避できたら、選手価値はさらに向上するはずだ。
鹿島 CF 6.0 65 FKを獲得できた理由はCF金崎夢生にあると思えた。DMFレオシルバ同様、ファウルの基準を自分達で設け、主審の基準とアレンジさせる力が凄い。ピッチ上とフィールドは異なるし、スタンド、画面越しでも違う。ただそれだけ主審をみているし、露わにしつつディスカッションするスタイルだった。その度合いが強く、プレーが途切れるのは玉に瑕。
鹿島 ST 7.0 25 上述の通り、背番号9に値するアクションが見られたことが最大のポイント。チェイシングや積極的行動はよかったがイエローカードはいただけなかった。しかし、これが「鹿島ってる」行動とみれば最上の出来。
鹿島 ST 6.0 90 ※名前が長いため省略
攻撃活性化のためのアクションは素晴らしかったが、2点取ったあとの余裕さは得失点差も関係するリーグ戦では控えたいところ。もしくは、神戸時代同様のアシスト的動きまで昇華できれば最高。
浦和 GK 4.5 90 フィードが良かった、安定して守れている時間があったではさすがに済まされない3失点。1点目はポジショニング、2点目は弾き方、3点目はコーチングと全ての失点責任に絡んでしまった。
浦和 CB 6.0 90 CB槙野智章不在ながらDF陣をまとめて積極果敢なトライアンドエラーをひたすら繰り返していた印象が強い。サイドチェンジ、飛び出し、クロスなんでもこなす姿はMOM級だったが、失点の多さは減点材料にせざるをえない。
浦和 CB 4.5 90 1点目のファウル献上、2点目のブロック不足、3点目の足りないバックパスと収支落ち着きがなかった。スプリント回数は21回とCBのしかも真ん中の選手としては異常な数値にもなっていたし、前が詰まったからビルドアップとしてやらなければなかったことも多い。CB遠藤航が全て悪いわけではないが、カバーできない部要素が多いのも事実。
浦和 CB 5.0 90 LMB菊池大介とのポジションチェンジから飛び出していく姿や、後半ポジションをあげてからのプレーは終始アグレッシブさがあったものの、守備面では大きな貢献はなかった。むしろ、全線へ上がっていこうとする姿を見てDMF阿部勇樹とCB遠藤航で埋めようとしている部分にRMF遠藤康が現れて手をこまねいてしまう要因にも繋がった。
浦和 DMF 5.5 90 90分間を通して安定したパフォーマンスを見せたことは確かだが、意志を発するボールを供給していたとはいい難い。攻撃的な選手たちに依存した内容だったとも言える。
浦和 DMF 5.0 90 CMF柏木陽介が不在であったため、前線とのつなぎ役となる時間も多かったが、守備陣のズレを補填するために奔走するようになり、本来のパフォーマンスからはかけ離れてしまった印象も強かった。
浦和 DMF 6.0 26 両サイドを封じられ、ロングボールを多用せざるを得なくなったことで出場機会が発生。守備に忙殺されるDMF阿部勇樹とポジションを入れ替わり、中央での媒介役を任せられると、各箇所との調整を見事にこなして得点を生み出すきっかけをつくった。
浦和 RWB 5.5 64 前半早々こそ対面するLSB三竿雄斗を振り回したが、徐々に劣勢へ。右サイドで孤立するとたまに来るボールは緩めのサイドチェンジで独力打開までは厳しかった。
浦和 RWB 7.0 26 格付けが済んだ段階での難しい役回りだったがキレキレの動きでLMF土居聖真とLSB三竿雄斗を圧倒。中央に切れ込むかのように見せてさらに奥へ奥へと食い込み、タッチラインさえも活かしたクロスから得点を演出するなど、全選手の中でも絶えず違いを見せつけていた。
浦和 LWB 7.0 26 CB宇賀神友弥やDMF阿部勇樹と上手く連携するなど、移籍組とは思えないフィット感だったが入りのボールは収めてこねられるもののアウトプットの精度に欠いた印象。CFズラタンが収められなかったとはいえ、クロスやSTとのワンツーからの突破が多かったとは言えない。
浦和 ST 5.0 45 タッチ数、走行距離が全てではないにしろ、試合に入り込めていなかったことに変わりはなく、両WBの手助けも出来ていなかった。ST高木俊幸やWB梅崎司を怪我で欠いていることもあり、CF興梠慎三・ST武藤雄樹に匹敵する違いを見せたかった。
浦和 ST 6.5 45 DMF小笠原満男に手をこまねくST武藤雄樹をベンチから眺めてており、後半に入るとST武藤と絶えずポジションを行いながらDMF小笠原を引き剥がす動きを作り出していた。しかしそれでもDMF小笠原とDMFレオシルバはCBと上手く対応し続ける。退場を恐れたマネジメントによる鹿島の石井監督によってDMF永木亮太が入った瞬間を逃さず立て続けにチャンスメイクしPKを決めた点は大きな評価。点を入れることもそうだが、相手のリズムを崩すアクションを取り続けられた点が興梠慎三という選手を物語っていた。
浦和 ST 6.0 90 プレイヤー評価としてはとても高い。DMF小笠原満男の徹底マークにあいながら1ゴールを叩き出したのはストライカーの役割をしっかりと果たす結果となった。攻撃を停滞させたわけでもなく、ST武藤雄樹とRWB駒井善成のポジションを無きものとされても、ラインを下げて回しに参加するなど無効化されたとしてもできることに終止し、ほんの一瞬訪れたチャンスをものにしたことは明確な違いだった。
浦和 CF 5.0 90 前半はポストプレイでボールを抑えめることが出来ず、リズムキープできない一因となってもいたが、後半にメンバーが変わると成功率にも変化が現れた。しかし、一列後ろでST興梠慎三が行う動きと連動していたわけでも、WBのちからを引き出すような仕事ができたわけでもない。タワー系のストライカーではないが、ボールを収めることを主眼に据えた役割付与で全うできなかったのは減点材料となる。

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